
鈴木英人のイラストでお馴染み、82年の唯一のアルバム『MAROONED(ロンリー・フリーウェイ)』で知られるラリー・リーのデモ音源集が登場した。この編集盤が唐突に出たのは、ラリーとジム・フォトグロが組んでいたビートルズのオマージュ・バンド:ヴァイナル・キングスが、昨年、日本のレコード会社によって発掘されてアルバムが出たのがキッカケとか。それでラリーの消息を知ったAORフリークが多かったようだけれど、実はヴァイナル・キングスがアルバムを出していたのはゼロ年代前半で、当ブログでは17年前の2005年に2ndアルバム『TIME MACHINE』を紹介している(当時のポスト)。その後の彼らにリリースはなく、時々思い出したようにライヴをやっていたらしいが、ジム・フォトグロのソロ作にはいつもラリーが制作面で関わっていた。
最初に断っておくと、自分はそもそも、この手のデモ集はあまり好みではない。どうしたって玉石混交に陥りがちで、アヴェレイジが低めになるからだ。例外的に、かつての大手音楽出版社が、お抱え作曲家やその楽曲を売り込むために制作したレコード、これは音源自体はラフであっても楽曲自体のクオリティが高いレヴェルで揃っていて、実際に誰かに取り上げられれば聴き比べを楽しめるし、資料性も高くなる。古くはアラン・オデイやデヴィッド・ラズリー、ブガッティ&マスカーなどが、この手のデモ集を出していた。またオフィシャル・リリースに向けてシッカリとポスト・プロダクションを行ない、デモといえども聴きやすさを追求したアイテムなら、それなりの評価ができる。スペインのインディペンデント:Contante & Sonanteが2010年代にリリースしたトム・スノウやバート・バカラックのデモ集は、その好例と言えるだろう。
でも、ソングライターの手元に溜まっていたテープからの発掘はどうだろう。機材が進化した現在ならともかく、80年代のデモだとローファイなのが当たり前だし、良い楽曲に遭遇できる確率も下がり気味だ。作品力が低い分、看板、すなわちソングライターの知名度に頼ることになりやすい。
そこでこのラリー・リーのデモ集。収録されたデモ10曲中8曲は80年代の音源で、2曲が90年代終盤の録音。ラリーはドラマーなのに打ち込みが多いのは残念だが、ジョン・ゴーイン(g)、マイク・ブリグナーデロ(b, ジャイアント)、シェイン・ケイスター/ヴィンス・メラムド(kyd)、そして近年はピーター・セテラらケニー・ロギンスをサポートしているクリス・ロドリゲス(g)らの参加は、デモらしからぬ嬉しいポイント。楽曲もなかなか安定していて、フランジャーを効かせたベースやコーラスが印象的でデモ段階から完成されている<In The Blink Of An Eye>、完全ワンマン録音の<A Harder Climb>、82年の録音で続『MAROONED』的雰囲気を持つ<Don't Go Cryin'>、甘酸っぱいメロディの<Like It Or Not>など、耳に残るトラックが少なくない。それにも増して、ラリー自身の歌声がヴェルヴェットのように優しげで、やっぱり普遍的魅力を放つ。今更ながらに、「どうしてカントリーのプロデュースに回ってしまったの?」と嘆きたくなるほどに。
各デモ・トラックがどういう理由で作られたものなのか、その曲ごとにそれぞれ事情があるのかもしれないが、このレヴェルの楽曲が数を揃えて書けるなら、何とかマトモなレコーディングにして仕上げて欲しかった。そうすれば、きっとそれなりのAOR好盤ができただろうに、と悔やまれる。
シャリシャリの音質など、CD化に際してもっと手を掛けられたと思しき面はあるものの、間違いなく、聴くべき価値のある貴重なデモ集だ。
でも、ソングライターの手元に溜まっていたテープからの発掘はどうだろう。機材が進化した現在ならともかく、80年代のデモだとローファイなのが当たり前だし、良い楽曲に遭遇できる確率も下がり気味だ。作品力が低い分、看板、すなわちソングライターの知名度に頼ることになりやすい。
そこでこのラリー・リーのデモ集。収録されたデモ10曲中8曲は80年代の音源で、2曲が90年代終盤の録音。ラリーはドラマーなのに打ち込みが多いのは残念だが、ジョン・ゴーイン(g)、マイク・ブリグナーデロ(b, ジャイアント)、シェイン・ケイスター/ヴィンス・メラムド(kyd)、そして近年はピーター・セテラらケニー・ロギンスをサポートしているクリス・ロドリゲス(g)らの参加は、デモらしからぬ嬉しいポイント。楽曲もなかなか安定していて、フランジャーを効かせたベースやコーラスが印象的でデモ段階から完成されている<In The Blink Of An Eye>、完全ワンマン録音の<A Harder Climb>、82年の録音で続『MAROONED』的雰囲気を持つ<Don't Go Cryin'>、甘酸っぱいメロディの<Like It Or Not>など、耳に残るトラックが少なくない。それにも増して、ラリー自身の歌声がヴェルヴェットのように優しげで、やっぱり普遍的魅力を放つ。今更ながらに、「どうしてカントリーのプロデュースに回ってしまったの?」と嘆きたくなるほどに。
各デモ・トラックがどういう理由で作られたものなのか、その曲ごとにそれぞれ事情があるのかもしれないが、このレヴェルの楽曲が数を揃えて書けるなら、何とかマトモなレコーディングにして仕上げて欲しかった。そうすれば、きっとそれなりのAOR好盤ができただろうに、と悔やまれる。
シャリシャリの音質など、CD化に際してもっと手を掛けられたと思しき面はあるものの、間違いなく、聴くべき価値のある貴重なデモ集だ。
音的にはAOR真ん中ですが、キャッチーで耳を惹くメロディが少なく、リズム的にもインパクトが感じられません。年代もかなりばらついていて統一感もなく...
これを気に入ってくれたら他にも昔の曲があるのでアルバムを出したいとのことのようですが、今更のことだし、このレベルだと無理だと感じてしまいました。