神保彰(dr)と鳥山雄司(g)の2メン・ユニットとなった PYRAMID が、10月末に通算5作目のアルバム『PYRAMID 5』をデジタル・リリース。元々クラウドファンディングで制作されたアルバムゆえ、CDはクラファン参加者への限定リリースで、現在のところフィジカルでの一般リリース予定はない。でもそれが途轍もなく もったいない、と思えてしまうほどキャッチーで、従来以上にファンの裾野を広げるであろう作品に仕上がっているのだ。
PYRAMIDについて簡単に説明しておくと、今や世界的ドラマーの神保彰(dr)と、元T-SQUAREの和泉宏隆(pf)、プロデューサーとしても活躍する鳥山雄司(g)が、慶應高校時代のバンド仲間というヨシミから03年に "Okay Boys" として結成。その後 PYRAMIDと改名して、05年に1st『PYRAMID』でデビューした。それぞれが多忙だけに途中ブランクを挟むが、独自のスタンスでリアル・クロスオーヴァーを追求。21年に和泉が急逝するも、残った2人で継続を決め、翌年1月、ニュー・アルバム制作に向けてクラウドファンディングを実施した。その結果、完成したのがこのアルバムである。
経歴通り、バリバリのJ・フュージョン界を歩いてきた人たちなので、最初はテクニックで押しまくるガチのフュージョンを期待した人もいただろう。でもソロになってからの3人の活動を見れば、出来るだけそこから離れようとしているのが分かるはず。彼らがアマチュア時代に影響されたCTIとかA&Mあたりのクロスオーヴァー期の名曲を程よくレパートリーに取り込み、聴きやすさの中にリアルなミュージシャン・シップを追求したのが、初期のPYRAMIDだ。
音楽的なギア・チェンジは、18年の4作目『PYRAMID 4』からだろうか。基本的なディレクションはそのままに、ブラザーズ・ジョンソン/クインシー・ジョーンズで知られる<I’ll Be Good to You>をHanah Spring、アース・ウインド&ファイアー<Runnin'>を有坂美香&mabanuaのスキャットでカヴァーするなど、若いシンガーをゲストに迎え、同世代にもクラブ世代にもアピールするようなネオ・クロスオーヴァー・サウンドを提示。この時のブルーノート公演を観たが、ライヴも3人+マニピュレイター(+ゲスト・シンガー)だけで、実にフレキシブルなステージ・パフォーマンスを展開していた(その時のライヴ・レポート)
和泉急逝後のこの初アルバムも、基本的にはその延長と言えそう。アートワークからして、80年代初頭のジャズ・ファンクかブラック・コンテンポラリーだが、音の狙いもまさにソコ。福原みほをフィーチャーした<ODORO ! >、竹内まりや< Plastic Love>をカヴァーしていたタイのシンガー:ミリー・スノウの歌にNenashiのラップを乗せた<Back to You>、ハービー・ハンコックのAORチューンをサノ・ケンジが歌った<Paradise>(グレイドン/フォスタ/チャンプリン共作のアレ)なんて、マジ、どストライクな仕上がり。特に<Back to You>は、リック・アストリーあたりの歌声が空耳しそうだ。フュージョン好きにはフィリップ・セスがピアノを弾いた<Blue Bop>と<Friendship>が刺さるだろうし、<Reflection Green>は和泉のストックからのセレクト。<Mau Loa>はクインシー『THE DUDE(愛のコリーダ)』に収録されたトゥーツ・シールマンスのハーモニカ曲を意識したそうで、西脇辰弥が参加している。
CDはクラファン参加者へのリターン限定で、世間的にはデジタル・リリースというのは、彼らならではの新しいトライアルだろう。その結果、クラファン目標額500万円に対して約1400万円を集めるという驚異的集金能力を発揮した。でも実際の賛同者は1000人にも達していない。でもそれがコアなフュージョン・ファンの実数と言えるか。ストリーミングを中心に考えているのは、フュージョン系アクトでは先進的と言えるが、これだけポップ・ポテンシャルの高い作品が、流通ツールを限ってしまっているのは、自ら足かせを作っているようなモノだろう。クラファン参加者へのエクスキューズは必要としても、せめてアナログ・リリースの可能性は探ってほしい、と切に願うばかり。もっとも現在のアナログ事情は、世界レヴェルでプレスに半年〜8ヶ月待足されるそうだが…。
でも<ODORO ! >や<Back to You>などがワールド・ワイドにクラブDJの手に渡れば、また別の可能性が広がってくるはず。仮にクラファン限定の決まりを反故にしたところで、それを喜んで受け入れてくれるのが真のファンの在り方だと思う(何がしかのエクスキューズは必要だろうが…)。だとしたら、デジタルで広めてマーケットを温めておいて、ニーズを高めたところにアナログをドロップ、というシナリオが理想的なのかも。
経歴通り、バリバリのJ・フュージョン界を歩いてきた人たちなので、最初はテクニックで押しまくるガチのフュージョンを期待した人もいただろう。でもソロになってからの3人の活動を見れば、出来るだけそこから離れようとしているのが分かるはず。彼らがアマチュア時代に影響されたCTIとかA&Mあたりのクロスオーヴァー期の名曲を程よくレパートリーに取り込み、聴きやすさの中にリアルなミュージシャン・シップを追求したのが、初期のPYRAMIDだ。
音楽的なギア・チェンジは、18年の4作目『PYRAMID 4』からだろうか。基本的なディレクションはそのままに、ブラザーズ・ジョンソン/クインシー・ジョーンズで知られる<I’ll Be Good to You>をHanah Spring、アース・ウインド&ファイアー<Runnin'>を有坂美香&mabanuaのスキャットでカヴァーするなど、若いシンガーをゲストに迎え、同世代にもクラブ世代にもアピールするようなネオ・クロスオーヴァー・サウンドを提示。この時のブルーノート公演を観たが、ライヴも3人+マニピュレイター(+ゲスト・シンガー)だけで、実にフレキシブルなステージ・パフォーマンスを展開していた(その時のライヴ・レポート)
和泉急逝後のこの初アルバムも、基本的にはその延長と言えそう。アートワークからして、80年代初頭のジャズ・ファンクかブラック・コンテンポラリーだが、音の狙いもまさにソコ。福原みほをフィーチャーした<ODORO ! >、竹内まりや< Plastic Love>をカヴァーしていたタイのシンガー:ミリー・スノウの歌にNenashiのラップを乗せた<Back to You>、ハービー・ハンコックのAORチューンをサノ・ケンジが歌った<Paradise>(グレイドン/フォスタ/チャンプリン共作のアレ)なんて、マジ、どストライクな仕上がり。特に<Back to You>は、リック・アストリーあたりの歌声が空耳しそうだ。フュージョン好きにはフィリップ・セスがピアノを弾いた<Blue Bop>と<Friendship>が刺さるだろうし、<Reflection Green>は和泉のストックからのセレクト。<Mau Loa>はクインシー『THE DUDE(愛のコリーダ)』に収録されたトゥーツ・シールマンスのハーモニカ曲を意識したそうで、西脇辰弥が参加している。
CDはクラファン参加者へのリターン限定で、世間的にはデジタル・リリースというのは、彼らならではの新しいトライアルだろう。その結果、クラファン目標額500万円に対して約1400万円を集めるという驚異的集金能力を発揮した。でも実際の賛同者は1000人にも達していない。でもそれがコアなフュージョン・ファンの実数と言えるか。ストリーミングを中心に考えているのは、フュージョン系アクトでは先進的と言えるが、これだけポップ・ポテンシャルの高い作品が、流通ツールを限ってしまっているのは、自ら足かせを作っているようなモノだろう。クラファン参加者へのエクスキューズは必要としても、せめてアナログ・リリースの可能性は探ってほしい、と切に願うばかり。もっとも現在のアナログ事情は、世界レヴェルでプレスに半年〜8ヶ月待足されるそうだが…。
でも<ODORO ! >や<Back to You>などがワールド・ワイドにクラブDJの手に渡れば、また別の可能性が広がってくるはず。仮にクラファン限定の決まりを反故にしたところで、それを喜んで受け入れてくれるのが真のファンの在り方だと思う(何がしかのエクスキューズは必要だろうが…)。だとしたら、デジタルで広めてマーケットを温めておいて、ニーズを高めたところにアナログをドロップ、というシナリオが理想的なのかも。