
今の音楽シーンで何が起きているのか。それを知っておく程度にしか、米国のヒット・チャートに興味を失くしてしまった昨今。2022年のグラミー賞発表と言っても、以前みたいにWOWOWの生中継にしがみつくことはなく、夜のダイジェスト放送もツマミ見る程度で。一番オ〜ッと思ったのは、この1年で亡くなったアーティストや業界人たちの追悼コーナーで、Yukihiro Takahashiが登場したことかな…

下馬評の高かったビヨンセが主要部門をひとつも取れなかったコトで、「黒人蔑視が続いている」とした論評も見掛けたけれど、それはトンだお門違い。ビヨンセ同様、対抗馬と見られたアデルも部門賞しか取れなかったのだから、もやは贔屓の引き倒しという気がする。それでも、最優秀ダンス/エレクトロニック・アルバム賞など4部門を獲得し、グラミー歴代最多受賞記録を更新したのだから、ちゃんとカタチになったのでは?
主要4部門の結果、年間最優秀レコードにリゾ<About Damn Time>、年間最優秀アルバムにハリー・スタイルズ『Harry’s House』、最優秀新人にサラマ・ジョイ、そして意外だったのは最優秀楽曲のボニー・レイット<Just Like That>。受賞スピーチの模様を見れば分かるように、一番驚いたのはボニー本人だったのかも。ノミネートをみても、リゾ、テイラー・スウィフト、ハリー・スタイルズ、ビヨンセ、アデル、ケンドリック・ラマーなど錚々たる8組が居ならび、まるでボニーだけが場違いのような感じだったから。
でもそれが逆に功を奏し、選考委員の保守派票を一手に集めた面があったかもしれない。一方で忘れたくないのは、ノミネートされた8曲のうち、<Just Like That>だけが、アーティスト自身が単独で書き下ろしたナンバーだった、ということ。
ボニーはスピーチで「さまざまなストーリーにインスパイアされて作曲することができました。大事な大事な臓器がほかの人を助ける、それこそが大事なんだということを訴えました。私はあまりたくさんの曲を書きませんが、評価してくれてありがとうございます」と挨拶。
このように<Just Like That>は、脳死状態に陥った息子の臓器移植を申し出て、別の男性の命を救った母親について歌われている。悲しみに暮れていた母親は、生き延びた男性に面会し、「私の胸に触れて、息子さんの鼓動を感じてください」と言われ、ようやく立ち直るキッカケを掴んだそうだ。そういう、最優秀楽曲賞を受けるに相応しい楽曲だったのだ。
いろいろな問題を激しく糾弾されている昨今のグラミーだが…。もちろん人種や性的差別を無くすのは当然だけれど、個人的には、セールス偏重や人気投票的賞レースは他に譲ってしまって、もっと音楽的・文化的・社会的な貢献度や影響力を行使したアーティスト及び作品を重視していくべきではないか、と思う。それはきっと、グラミーにしかできないこと。歴代ウィナーを振り返っても、そうした受賞者が少なくないし、何より70年代の常連スティーヴィー・ワンダーなんて、そのシンボルだったはずなのだから。
でもそんなボニー・レイット受賞曲の収録アルバムが日本で未だリリースされていないのは、もはや日本の音楽シーンのレヴェル低下を象徴しているようだな…。
主要4部門の結果、年間最優秀レコードにリゾ<About Damn Time>、年間最優秀アルバムにハリー・スタイルズ『Harry’s House』、最優秀新人にサラマ・ジョイ、そして意外だったのは最優秀楽曲のボニー・レイット<Just Like That>。受賞スピーチの模様を見れば分かるように、一番驚いたのはボニー本人だったのかも。ノミネートをみても、リゾ、テイラー・スウィフト、ハリー・スタイルズ、ビヨンセ、アデル、ケンドリック・ラマーなど錚々たる8組が居ならび、まるでボニーだけが場違いのような感じだったから。
でもそれが逆に功を奏し、選考委員の保守派票を一手に集めた面があったかもしれない。一方で忘れたくないのは、ノミネートされた8曲のうち、<Just Like That>だけが、アーティスト自身が単独で書き下ろしたナンバーだった、ということ。
ボニーはスピーチで「さまざまなストーリーにインスパイアされて作曲することができました。大事な大事な臓器がほかの人を助ける、それこそが大事なんだということを訴えました。私はあまりたくさんの曲を書きませんが、評価してくれてありがとうございます」と挨拶。
このように<Just Like That>は、脳死状態に陥った息子の臓器移植を申し出て、別の男性の命を救った母親について歌われている。悲しみに暮れていた母親は、生き延びた男性に面会し、「私の胸に触れて、息子さんの鼓動を感じてください」と言われ、ようやく立ち直るキッカケを掴んだそうだ。そういう、最優秀楽曲賞を受けるに相応しい楽曲だったのだ。
いろいろな問題を激しく糾弾されている昨今のグラミーだが…。もちろん人種や性的差別を無くすのは当然だけれど、個人的には、セールス偏重や人気投票的賞レースは他に譲ってしまって、もっと音楽的・文化的・社会的な貢献度や影響力を行使したアーティスト及び作品を重視していくべきではないか、と思う。それはきっと、グラミーにしかできないこと。歴代ウィナーを振り返っても、そうした受賞者が少なくないし、何より70年代の常連スティーヴィー・ワンダーなんて、そのシンボルだったはずなのだから。
でもそんなボニー・レイット受賞曲の収録アルバムが日本で未だリリースされていないのは、もはや日本の音楽シーンのレヴェル低下を象徴しているようだな…。