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これは嬉しい初CD化。日野皓正に見い出され、83年に “ジャズ・トランペットの貴公子” というキャッチコピーでデビューした三宅純の 1st / 2nd が、紙ジャケCDで初復刻。5月にはアナログ盤も出るそうで、ちょっとビックリ。…というのも、実はこのネタ、自分が7〜8年前に関係筋に再発を打診したコトがあって。その時は諸事情あって実現しなかったが、それが1年ほど前、全くの別ルートから、「今、三宅純の再発を手掛けているんですが、もし知ってたら教えて欲しいコトがありまして…」と問い合わせがあり…。それで、お手伝いとも言えぬほどのお手伝いをし、それからまた時間が経って、ようやく…、のリイシューである。

今の三宅純は、パリを拠点に活動するボーダーレス・ミュージックのクリエイター。wikiに拠れば、ジャズやクラシック、シャンソン、キャバレー・ミュージック、エレクトロニカからワールド・ミュージックまで、国境・ジャンル・時代を超えて異種交配を多用した音楽、と説明される。そのオリジナリティ溢れる個性的サウンドは、日本国内よりもむしろ海外で、高い評価と称賛を獲得。CM・映画・アニメは元より、コンテンポラリー・ダンスや舞台音楽でも活躍を重ねてきた。アカデミー賞にノミネートされたヴィム・ヴェンダース監督の映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(11年)でも、主要曲を提供。また、時の安倍首相がスーパーマリオに扮装して話題になった2016年リオ・オリンピック閉会式のセレモニーでは、導入曲<君が代>の編曲を担当。ブルガリアン・ヴォイスを取り入れた斬新なアレンジで、日本中を震撼させた。

その三宅が、バークリー音楽学校と米東海岸での武者修行を終えて、81年に帰国。ジャズ・ミュージシャンとして作編曲や演奏活動を行なう中で83年に発表したのが、デビュー作『JUNE NIGHT LOVE』である。アンディ・ウォーホール出演で話題のTV-CMに使用された<Could It Be Real?><I Knew I Was>のフュージョン・チューン2曲をフィーチャーしつつ、日野に捧げた<You Would Smile So>やニューヨーク時代にマサチューセッツ州の音楽コンクールで作曲賞を受けた<Scorpio>など、アコースティック・ジャズ・ナンバーも意欲的に。参加ミュージシャンは、 村上ポンタ秀一/日野元彦(ds)、高水健司(b)、 清水靖晃(Sax)、秋山一将/ 是方博邦/北島健二(g)、野力奏一(kyd)、EVE(cho)など。

翌84年の第2作『ESPECIALLY SEXY』は、堂々のニューヨーク録音。デヴィッド・サンボーン、マイケル・ブレッカーと言う2大巨頭を筆頭に、 ボビー・ブルーム/マイク・スターン(g) 、ヴィクター・ベイリー/ダリル・ジョーンズ(b)、バリー・イーストモンド(kyd)、プージー・ベル(ds)、ラニ・グローヴス/ユランダ・マッカロウ(cho)らを従えた、ニューヨーク・スタイルのアーバン・フュージョンを聴かせる。<Wish>では、ジョージ・ベンソン・スタイルでGRPが売り出していたボビー・ブルームの甘い歌声も。そんな中、エピローグの<Becoming To You>では、ローランド・ハナ(pf)、ロン・カーター(ac.b)、アル・フォスター(ds)のジャズ・トリオに乗っかって、アコースティックなバラードを披露する。

しかし、話題こそさらったものの、2枚のアルバムが商業的成功には至らず、今に至っているワケだ。昨今の三宅サウンドとはまるで異なるけれど、その原点は確かにココにあった。