idris muhammad_house of

オランダのアナログ再発レーベルでリイシューされたそうなので、久々にチェック。ニューオリンズ出身で、ジャズ、ソウル、ファンク周辺を股に掛けて活躍したドラマー:アイドリス・ムハマッド(=レオ・モリス)の76年盤。CTI / KUDUからの2作目で、プレスティッジ時代からは数えて通算4作目。CTI / KUDUでは78年までに4作リリースがあるが、ムハマッドのリーダー作としては、やはりこの頃が一番面白い。このあとFantasyへ移籍して3作ぐらい出すけど、CTI / KUDU期後半から打ち出し始めたディスコ色がトゥ・マッチで、ちょっとバランスは良くない。

対してCTI / KUDU 1作目『POWER OF SOUL』はボブ・ジェイムスのアレンジで、 サウンドは如何にもそれっぽい上品な仕上がり。ボブ以下、グローヴァー・ワシントンJr.(sax)やジョー・ベック(g)、ラルフ・マクドマルド(perc)、ランディ・ブレッカー(tr)らが参加して、タイトル曲のジミ・ヘンドリックス・カヴァー以外はメンバーの持ち寄りだ。評判も悪くなく、グローヴァー提供<Loran's Dance>はヒップホップ・ジャズ界隈で人気が出た。

ただ、本名時代にソウル・ジャズ・シーンを代表するセッション・ドラマーとして活躍してきた身分では、やや優美に過ぎたかも。CTI総帥クリード・テイラーも、もっとR&B色を出したいと考え、この2作目ではデヴィッド・マシューズをアレンジャーに起用。アニマルズやボブ・ディランで有名なトラディショナル・ソング<House Of The Rising Sun(朝日のあたる家)>をアルバム・タイトルに掲げ、それとミーターズのカヴァー<Hey Pocky A-Way>をフランク・フロイドに歌わせた。<Theme For New York City>は、ショパンのプレリュードをメロウ・グルーヴなクロスオーヴァーにアダプトしたもので、デヴィッド・サンボーンのアルト・サックスと、ちょっぴりリチャード・ティーっぽいローランド・ハナのエレピ、エリック・ゲイル節全開のギター・ワークに耳が行く。<Hard To Face The Music>はアシュフォード&シンプソン作。

クリード・テイラーお気に入りのブラジリアン・クラシック<Bahia>は、コルトレーンやスタン・ゲッツで有名。また<Sudan>は、スタン・ケントンやウッディ・ハーマン、ホレス・シルヴァー、フィル・ウッズらと共演してきたトランペット奏者トム・ハレルが、アイドリスと共作した10分超の大曲。

他にもドン・グロルニック/レオン・ペンダーヴィス(kyd)、ウィル・リー/ウィルバー・バスコム(b)、ジョー・ベック/ヒュー・マクラッケン(g)、マイケル・ブレッカー/ロニー・キューバー(sax)、フレッド・ウェズリー(tb)、パティ・オースティン(back vo)が参加。エリック・ゲイルが一部ベースも兼任しているトラックがあるのも珍しく、ニューヨークで培われたアフリカン・アメリカン・サウンドを提示している。ムハマッドの作品としても、KUDU作品としても、なかなか上位に位置するアルバムなので、CDなら廉価で買えるうちに。