genesis bbc

ようやく確定申告が終了。エッ もうとっくに過ぎてるじゃん、と思われるだろうが、我々物書きの原稿料は、あらかじめ源泉徴収されて振り込まれるので、通常は確定申告=還付請求になる。これには5年間の有効期限があるだけで、確定申告期限の限りに非ず。ただこの時期に申請すると、4〜5月の各種納税に待ち合うタイミングで還付されるから、毎年 確定申告時期を大きく外さないように処理している。それにしてもCDリリースが減り、音専誌も少なくなり…で、原稿収入もだいぶ減ってきてますな…

…ってなワケで、月初めに届いてから、ボチボチ聴き進めていたジェネシスの最新ボックス・セット『BBC BROADCASTS』。ここ2〜3日、諸々事務処理しながら流していて、ようやくCD5枚を聴き終えた。1970〜1998年にジェネシスがBBCに残してオンエアされたライヴ音源から、トニー・バンクスの選曲で50曲超を収めている。当然ながら、未発表音源も少なからず。いやいや、正確に言えばBBCの電波に乗ったことあるはずなので、初の商品化と言うべきか。もっとも最近はハーフ・オフィシャルのまがい物ライヴ音源がマーケットを跋扈して、堂々と店頭で売られている時代なので、何らかの形で耳にされた音源が多いのかもしれないが…。

1970〜1998年というコトで、ピーター・ゲイブリエル時代に始まり、黄金のトライアングル期を経て、不評に終わったレイ・ウィルソン期まで網羅。唯一スティーヴ・ハケットを含めた4人時代、特にビル・ブルフォードがサポート・ドラマーとして参加していた頃の音源がないのは残念だけど…。

それにオリジナル作品数から言ったら、ゲイブリエル期がディスク1枚なのは少ないと思うし、レイ・ウィルソン期なんてわずか2曲。それだけフィル・コリンズ期の商業的成功が途轍もなかった、というコトだろう。ただその頃の音源の出典をよく見れば、過去のボックスに収録された音源の再利用、市販されている映像作品からの音の流用、オリジナル盤の拡大再発時にボーナス収録されたライヴ音源なども含まれていて…。BBCでのオンエア実績、という縛りがあるのは理解できるが、ちょっと無理くり盛っている感があるなぁ〜。

それでもdisc 1のゲイブリエル時代の中には、ハケットやフィル・コリンズ加入前のオリジナル・アルバム未収曲のスタジオ・ライヴがあったり、『BBC LIVE』などの番組で流れただけの音源も少なからず。アリーナ仕様のジェネシスしか知らない世代だと、この時代のフォーキーかつアコースティックな音には驚いてしまうかも。

disc2〜5は、レイ・ウィルソンが歌う2曲(98年)を除き、すべてコリンズ/バンクス/ラザフォードの3人に、ダリル・スチューマー(g,b)、チェスター・トンプソン(ds)の編成。ライヴ曲は、78年ネブワース・フェスティヴァル、80年ロンドン・ライシアム、87年ロンドン・ウェンブリー・アリーナ、92年ネブワース・フェスティヴァルの各音源からピックアップされている。このうち78年ネブワースは、『AND THERE WERE THREE』ツアー途中の出演。このツアーで伝説の初来日公演が行われているから、今はなき東京厚生年金会館(新宿)で初めて彼らを観た自分は、新曲だった<Burning Rope>とかに、思わずトキめいてしまう。

80年ライシアム公演は『DUKE』をフォローするツアーで、disc2後半からdisc3に跨って17曲が選ばれた。『DUKE』の再発拡大盤にもこの映像版が7曲入っているが、音だけとはいえこのヴォリュームは魅力的。disc3からdisc4にかけて収録されている87年ウェンブリーも10曲だが、こちらは独立した映像作がある。それよりdisc5の92年ネブワースは、『WE CAN DANCE』ツアーの一環。収録は6曲にとどまるものの、<Old Medley>で8曲繋げて披露しており、従来ファンへの気遣いが伺える。それでもコレがフィルが参加する最後のツアーになった(後年再結成あり)。

レイ・ウィルソン期はDisc4の最後に、あまりジェネシスっぽくない<Not About Us>と、中期ジェネシス風の<The Dividing Line>の2曲。特に後者は全盛期にも匹敵する重厚さで、ドラムのニア・ジドギャフの暴れっぷりがスゴイ。この編成はアルバム1枚、『...CALLING ALL STATIONS...』(97年)だけで終わったが、いわばプログレ指向に回帰した故に不人気を囲い込み、アリーナ・ロック的ジェネシスに疑問を抱いていたオールド・ファンには比較的好意を持って迎えられた。そうした意味では、再評価のキッカケになっても不思議ではないチカラの籠もったパフォーマンス。2曲ではさすがに物足りないし、往年の名曲を新編成でどうこなしていたかにも興味が湧く。少なくても、他の大物プログレ・バンドが古き良き時代を捨てきれず、右往左往していたのに対し、当時のジェネシスは それよりずっと潔く映っていたんだけどな。