tomoko soryo_momentary

シティポップの人気曲<City Lights By The Moonlight>や女性デュオ:TINNAの活動で知られるシンガー・ソングライター惣領智子の、4枚目にして最後のソロ・アルバム『momentary』(89年)が復刻。これで彼女のソロ名義は全作、TINNAは2枚の編集盤で全発表曲が、すべてリイシューされたことになる。もっとも最初期に当たるブラウンライスだけは、現在入手困難。さすがに、当時のご主人:惣領泰則が率いたジム・ロックスだけは、まだ未CD化作が残っているが…。

大きなお腹を抱えて佇んでいたジャケットの3枚目ソロ作『IT'S ABOUT TIME』から約8年。しばし活動を休んで家事と育児に勤しんでいただけに、その間に様々な成長や気づきがあったよう。だからこのアルバムには、より内省的で落ち着いたスピリチュアルな楽曲が集まっている。

収録された全10曲は、ほとんどがミディアムかスロウ・チューン。うち、彼女自身が詞曲を手掛けたものが7曲。泰則が英詞を手掛け、彼女のが作曲した夫婦共作が2曲。残る1曲が泰則の詞曲(これも英詞)。そうした内訳にも、彼女の心の成長、メンタリティーが窺える。

今回の復刻にあっては、喜納昌吉の<花>をボーナス収録。これもまた、現在のご主人(シンガー・ソングライター阿部敏郎)と共に沖縄でスピリチュアルな活動を行なっている彼女らしいチョイスで、ゆったり大らかな歌声を聴かせてくれる。

作品的には、もはやシティポップではないけれど、歌と言葉の深い融合がジンワリと浸みてくる、そんなアルバムだ。