rah band box 2

昨今の80's回帰、シティポップ・ブームにもかなり影響を与えているハズのラー・バンド(RAH BAND)のCD5枚組ボックス第2弾が到着。ビートルズ、ポール・マッカートニーを筆頭に、60年代からロンドンで多くの大物アーティストのアレンジ・ワークをこなしてきた職人リチャード・アンソニー・ヒューソンのプロジェクト。彼の詳しいキャリアは、最初のボックス・セットが出た時のこちらのレビューをご参照戴くとして…。

スタート当初はセッション・ミュージシャンを使ってレコーディングしていたけれど、シンセサイザーやリズム・マシーンの進化に呼応して、逸早く打ち込みを導入。言わば、英国のひとりYMOみたいな存在。でもYMOのようにアヴァンギャルド方面へは進まず、キラッキラのメロディと踊れるビート感覚を失なうことはなかった。むしろ、そのチープなサウンドを逆手に取って、ユニークなスペイシー・エレポップ・スタイルを確立。ビッグ・ヒットこそないものの、宅録派からダンス・クラシック文脈、コズミック、アンビエントなど、各方面から一目置かれる知る人ぞ知る存在をキープしてきた。

80年代中盤は日本でもLPが出ていたけれど、それ以後はレーベルのゴタゴタで低迷。シングル・リリースで生き長らえていたものの、日本にはほとんどニュースが届かぬまま。90年代後半になって唐突にコンピが出て、ようやく再評価が動き出した感があった。

第1集『MESSAGES FROM THE STARS - The Rah Band Story Vol.1」に次ぐこの第2集『CLOUDS ACROSS THE MOON:The Rah Band Story Vol 2』は、彼らの85年から98年の音源を集成したもの。代表曲<Clouds Across The Moon>で始まる4枚目のオリジナル・アルバム『MYSTERY』(85年)、87年にリリースされるはずが所属していたRCA経営陣の入れ替えの煽りでお蔵入りした『SOMETHING ABOUT THE MUSIC』、そして未発表アルバム『WORLD KEEPS TURNING』の3ディスクに加え、2枚の『REMIX & RARERITIES』で、12インチ・ミックス、7インチ・ミックスなどを網羅している。

ポップ職人ヒューソンのワンマン・プロジェクトというコトで、実は現在も断続的にリリースを続けているラー・バンド。宅録で箱庭的音像を作って愉しんでいる昨今のポップ・クリエイターに注目されるのは、当然の流れと言えるだろう。当時はシャカタクやレヴェル42といったブリット・ジャズ・ファンクの隆盛に乗って登場したけれど、今ではスッカリ別次元のステージにいる。でもそれは、プログラムやシンセ使いが目的化せず、ポップ表現のためのツールとして使いこなしているから。だからこそ、80年代のチープなサウンドが今も古くならず、却ってフレッシュに響くんだな。