rickie lee jones_023

リッキー・リー・ジョーンズ、前作『KICKS』から4年ぶりとなるニュー・アルバム『PIECES OF TREASURE』は、US産のスタンダード・ナンバーばかりをカヴァーしたグレイト・アメリカン・ソングブック。しかもプロデュースを手掛けたのが、リッキー・リーのデビュー作にして名盤『RICKIE LEE JONES(浪漫)』と2nd『PIRATES』以来のコラボとなる名匠ラス・タイトルマン。話の発端は、まさに前作が出た2019年のクリスマス前、マンハッタンで久しぶりに2人でランチを取った時のこと。ラスはこの20年間、リッキー・リーと顔を合わせる度に「ジャズ・アルバムを作るべきだよ」と勧めていたそう。それがこの時はいつにも増して押しが強く、彼女もその気になって、ようやく具体化したのだという。

リッキー・リーがスタンダード・カヴァーを演るのは初めてではなく、ライヴ盤『GIRL AT HER VOLCANO(マイ・ファニー・ヴァレンタイン)』(83年)や『POP POP』(91年)でもこの手の楽曲を取り上げている。ジャズ寄りのスタンスは、もはや彼女の十八番でも。ただ全曲フルでジャズ・アルバムというのは、彼女にとって初めてのコトになる。

ディーン・マーティンで知られる<Just in Time>を皮切りに、チェット・ベイカーでお馴染み <There Will Never Be Another You>、ナット・キング・コールが歌った<Nature Boy>、ガーシュウィン作フレッド・アステアで有名な<They Can't Take That Away From Me(誰にも奪えぬこの想い)>、トミー・エドワーズ<It's All in the Game(恋のゲーム)>、ハロルド・アーレン&ジョニー・マーサーが書いた<One for My Baby>やクルト・ワイルの<September Song>、それに<All The Way>や<Here's That Rainy Day(ある雨の日が)>あたりは、フランク・シナトラで知られるところ。そしてルイ・アームストロング<On the Sunny Side of the Street>は、少し前の朝の連ドラ『カムカムエヴリバディ』でお茶の間に浸透した。

こうして見ると、比較的ストレートな、言わばスタンダードの中でも定番曲が多め。でも無垢で少女のようなリッキー・リーのヴォーカルに掛かると、何かスペシャルな響きを帯びてくる。そりゃー若い頃に比べれれば、多少なりとも落ち着き感を増しちゃいるが、それでもネコのように変幻自在で年齢不詳。一時期はフォーキーで土臭いサウンドに向かった時期もあったけど、そこはラス・タイトルマン制作。トミー・リピューマ亡き今、この手の音をシッカリ作り込めるのはこの人だけだろう。それを知ってか、表ジャケットにもシッカリ彼の名前が載っている。

参加ミュージシャンは、ロブ・マウンジー(pf) ラッセル・マローン/ジョン・ハリントン(g) 等など。オープニングから冴え渡るマイク・マイニエリのヴァイヴも絶品だ。ストリングス・アレンジはギル・ゴールドステイン。

発売は4月だったけれど、今月に入ってボーナス・トラック入りの国内盤も出ていて。その割に全然盛り上がっていないのは、あまり知られていない新興レーベルからの発売だからか? 内容はイイんだから、シッカリとプロモートしてくれよォ〜

「このアルバムは、年を取るということについて、というよりも、私たちが死ぬまでにどのように愛し、どのように人生を振り返ることができるのか、について歌った作品です。私たちはみんな、人生を通してかつての自分を探したり、無邪気だったころにしがみついていたいろんな出来事から学んだ何かを見つけようとするものなのですから」(リッキー・リー・ジョーンズ)

<Just in Time>のMVも、この言葉を具現化している感じ。彼女にはインタビューを現場まで行ってドタキャンされた経験があるけど、この歌声を聴いていると、なんだか許せちゃいますわ。