kurena ishikawa

気がつけば7月。この1ヶ月ほど、ほぼ毎日1枚のペースでライナーを書かねばならず、それが今月中旬まで続く。何でいきなりこれほど集中するネン 、このご時世、とてもありがたいことだが、新譜や再発モノをチェックする時間がなかなか取れず、未聴の山が高くなるばかり。そんな中、3月末のリリース以来、思い出したように繰り返し聴いているのが、歌える新人ジャズ・ベーシストの石川紅奈の『KURENA』だ。

自分が彼女を初めて知ったのは、およそ2年前、マイケル・ジャクソン<Off The Wall>のウッド・ベース弾き語り動画。オォ、コイツはなかなか と思ったら、速攻で話題になったらしく、ジャズ系では異例の150万回超の再生を達成したとか。聞けば、世界的ピアニスト:小曽根真が高校生の頃からバックアップしていて、国立音楽大学ジャズ科卒。先の動画も、次世代を担う若手音楽家を招集した小曽根主宰のプロジェクト "From OZONE till Dawn" のメンバーとして、コットン・クラブに出演した時のモノだったという。

歌える女性のウッド・ベース使いというと、真っ先にエスペランサ・スポルディング、それにニッキ・パロットあたりを思い出すところ。おそらく彼女もエスペランサには相当大きな影響を受けた、もしかしたらベースを弾き始めるキッカケにさえ、なっているのではないか?、と思う。でも彼女のプロフィールには、エスペランンサのエの字も出てこない。

歌はまだ若干自信なさげに聞こえるけれど、一方で作曲の才も窺わせて、スキャットを交えたオープニング・チューン<Sea Wasp>、ピアノ・トリオによる<Olea>、日本語で歌われる<No None Knows>というオリジナル3曲を書き下ろし。

カヴァーでは、<Off The Wall>以外に彼女のルーツでもあるスティーヴィー・ワンダー<Bird of Beauty>、チック・コリア<500 Miles High>をチョイス。たっぷりした低音が気持ち良い。アレンジは彼女自身。アルバムのプロデュースは小曽根真。ちなみにこの娘、ウッド・ベースを看板に登場したけれど、実はエレキ・ベースもシッカリ弾くのよね。

キャンディ・ダルファーの成功が、今の日本のフュージョン・シーンに女性サックス奏者の大量デビューを呼び起こしたのは間違いない。有能な新人のデビューは大歓迎だけど、ベースの方は過当競争にならきゃイイな。