dionne warwick_friends

某音専誌の追悼特集準備で、バート・バカラック関連の楽曲を聴き漁り。でも自分にバカラック名曲選のセレクトを依頼してくるということは、どういうコト? もちろん他にも選者がいるが、まさか自分にハル・デヴィッドとの名コンビの時代、すなわちセプター時代のディオンヌ・ワーウィックとかB.J.トーマス、カーペンターズあたりのピックアップなんて期待していないだろう。…というコトは、やっぱりキャロル・ベイヤー・セイガーとの蜜月時代とか、ハル・デヴィッドと書いた名曲群の80年代以降のカヴァーとかがメインだよなぁ。

…というワケで、いろいろピックアップしたが、久々に聴き惚れてしまったのが、このディオンヌ85年盤。AORディオンヌの名盤といえばジェイ・グレイドン制作の『FRIENDS IN LOVE』、ポップなディオンヌならビー・ジーズとの『HEARTBREAKER』、少しソウル寄りのディオンヌならルーサー・ヴァンドロスと組んだ『HOW MANY TIMES CAN WE SAY GOODBYE』と、80年代前半のアリスタ期に充実盤が多い。でもそのあとは、イイ作品を続けていたのに、アピール・ポイントの拡散してしまったようで…。

要するに1人のプロデューサーがアルバム1枚を丸ごと仕切るのではなく、それぞれの得意分野を生かした複数分業制が多くなった。コレ、確かにヒット効率は上がるが、アルバム・トータルでは明らかにまとまりが悪くなり…。全体を俯瞰して見ている人がよほどシッカリしてないと、バランスが悪くなってしまう。

でもこのアルバムは、バート・バカラック&キャロル・ベイヤー・セイガー、デヴィッド・フォスター、スティーヴィー・ワンダー、バリー・マニロウ、アルビー・ガルテンと5組のプロダクツが動いているのに、相応の統一感がある。ベテランが多いのもその理由だろうが、その本当の秘訣は、5組が2〜3曲ずつ曲を分け合ったのではなく、バカラック&セイガーが5曲まとめてプロデュース&アレンジを引き受けたからだろう。つまりはそこにブレない軸ができた。

しかもそのうちの1曲が、全米トップの大ヒット<That's What Friends Are For(愛のハーモニー)>。ディオンヌとスティーヴィー、グラディス・ナイト、エルトン・ジョンの4人がエイズ・チャリティーで歌った名バラードである。更にキャロルのアルバムで先にヒットしていた<Stronger Than Before>も。バカラック&セイガーのバラードというのは、ある特定のカタチがあって、わりに似たタイプの楽曲が多いけれど、ハル・デヴィッドとのコンビ解消後のバカラックはしばしスランプに陥ってて、あがいていた時期。それを救ったのが、出会って間もない頃のキャロルの一言、「もっとシンプルな曲を書くべきよ」というセリフだったそうだ。

ちなみに<That's What Friends Are For>は、もともとバカラックとキャロルが音楽を担当した映画『NIGHTSHIFT』で、ロッド・スチュワートに歌わせていたもの。アレサとマイケル・マクドナルドの<Everchanging Times>も、サイーダ・ギャレットのシングルが先だし。デヴィッド・フォスター制作の<Love At First Sight>は、フォスターのソロ・アルバムが初出。でも使い回しであっても、その曲の本当の魅力を引き出しすことに成功しているのだから、やっぱりディオンヌは侮れじ、だよ。