ian gillan band hiroshima

ア〜、コレは喰らっちまった。体裁は完全に正規盤だけど、中の音はまさしくブートレグ・レヴェル。解説を読むと、レコード会社サイドの話として、「ラジオでオンエアされた音源をCD化したものかも…」とある。言われてみると、確かに大昔、同じような内容の発掘モノの輸入盤を見かけたような記憶が…。でも今回の日本発売元は、今までシッカリ信用できる仕事をしていたから、「あぁ、オフィシャルの録音テープが発掘されたんだな これはメデタイ」と、スッカリ勘違いしてしまった。アートワークも昔のとは違うし、来日時のツアー・パンフレットがミニチュアで再現されて封入と、かなりのチカラの入れようなのだ。

で、どんな内容なのかというと、第2期ディープ・パープルを抜けたイアン・ギランが、スタジオ経営から第一線に戻って再び歌い始めて間もない時期、イアン・ギラン・バンドという自前グループを率いて行なった初来日公演のライヴ盤なのだ。この時は自分も日本武道館へ観に行ってて、その模様は『LIVE IN JAPAN VOL.1』『LIVE IN JAPAN VOL.2』と、2枚に分けてオフィシャル・リリースされている。少し遅れて発売された英国盤は、抱き合わせのダブル・アルバムとして世に出た。

対してコレは、同じツアーの広島郵便貯金ホールでのライヴ盤。いわば『LIVE IN JAPAN VOL.3』とも言えるシロモノだ。しかもVol.1 / Vol.2 には未収の曲が複数入っていて、この時期のイアン・ギラン・バンドの大ファンとしては、見逃せないアイテムなの。

ちなみにこの時期のイアン・ギランは、イアン・ギランであってイアン・ギランでない。復帰直後だからか、自分で何をやるべきかが見えてなかったか、音作りはほとんどバンド任せで。そのメンバーというのが、スペンサー・デイヴィス・グループ〜ファンシー(先頃亡くなったモー・フォスターやジューダス・プリーストに加入するレス・ビンクス在籍)のレイ・フェンウィック(g)、クォーターマス〜ハード・スタッフ〜ロキシー・ミュージックのジョン・グスタフソン(b)、元エルフで後にシン・リジー〜ゲイリー・ムーアのG.フォースというマーク・ナウシーフ(ds)に、新人コリン・タウンズ(kyd)という強力布陣。この顔ぶれで、第2期ジェフ・ベック・グループに通じるような、ファンキーかつジャズ要素のあるプログレッシヴ・ハード・フュージョンを志向していた。これがメチャクチャ格好良くて、イアン・ギラン・バンドとしての2nd『CLEAR AIR TURBUEANCE』(77年)は、パープル関連作の中では未だによく聴く1枚になっている。もっともイアンだけは、相変わらず、ギャオォ〜〜と雄叫びを上げているが… そんなワケで、あまりよく調べもせず、装丁やキャッチコピーを信じてしまった。よく見ると、レイ・フェンウィック自身もマスタリングに関わっているから、ちょっと困ったチャンなのかな?

そもそも自分は、最近世に氾濫しているハーフ・オフィシャルのライヴ盤は、ほぼすべて敬遠している。今ではまるでオフィシャル・リリースのようにミュージック・ショップに並ぶけど、実際は楽曲の著作権のみJASRACを通しただけ。ライヴ音源そのものの権利はかなり怪しい。そりゃあグレイトフル・デッドみたいにブート公認のアーティストもいるけど、あれは少数派でしょう? だから自分的には、音専誌からのレビュー依頼も基本断っている。他のライターさんが書いているのに難癖つける気はないし、強いファン心理で手を出してしまう気持ちも理解できる。自分が観た時のライヴ盤とか、やっぱり聴きたいと思うし。ただ自分で公式に何か書くのは躊躇われる…、というか、道義的な疑問が湧いてしまうんだな。

つまりは、これまでは発売元とかシリーズ名で公式・非公式を見極められたけど、それでは分かりにくいパターンが発生してきた、ということか。ハーフ・オフィシャルだと認識した上でゲットするのは個人の自由。だけど確信犯的なダマシはナシにして欲しいモノ。リスナーさんも、もっと賢くならないとダメなようだな。