little feat_sailin' shoeslittle feat_cixie chicken

3連休の最終日。でも我が家は何処にも出掛けず、食料品の買い出しでスーパーへ行ったのと、ちょっとだけ外食。あとは歩いて数分の天然温泉へ2度ほど。でもこれは必要に駆られて。実はエコキュートがイカれてしまい、給湯システム丸ごとの入れ替え必至に。まったく予期してなかったこの時期の高額出費はあまりにイタく、これはもう家で大人しく仕事をしていようと ま、酷暑につき、ちょうイイ感もあるのだけれど…

それで少しだけ時間的余裕が出たので、リトル・フィートのデラックス・エディション2枚を。発売50周年ということで、72年の2nd『SAILIN' SHOES』、73年の3rd『DIXIE CHICKEN』が、揃ってCD2枚組拡張盤でリリースされたのだ。基本的な構成はどちらも同じで、Disc 1がオリジナル・アルバムの2023年リマスター。旧盤と聴き比べたワケじゃないけど、ビートの土台がクッキリ浮かび上がって来るような、良い音に仕上がっている。そしてDisc 2は【Hotcakes,Outtakes & Rarities】と題された前半と、それぞれのアルバム前後の発掘ライヴ音源。最近は悪戯にヴォリューム感マシマシのハコものが増えてしまっているので、感覚的には物足りなさがあるのだが、実際に聴くとなれば、これぐらいのサイズ感がちょうど良い。取り扱いが面倒なボックス・セットなんて、持ってるだけで終わっちゃうパターンが多いんだから…。【Hotcakes,Outtakes & Rarities】には以前出たボックスでの既発テイクも含まれるが、今回は寄せ集めではなく、録られた時期やセッションを踏まえた必然性のある再収録だから、ココに並ぶことに意味がある。

でもこの『SAILIN' SHOES』と『DIXIE CHICKEN』。カタログ上は連続だけど、4人編成から6人編成へとメンバー交代+増強を挟んでいるので、実際はかなりの変化がある。『SAILIN' SHOES』は結成ラインナップであるローウェル・ジョージ(g,vo)ビル・ペイン(kyd)ロイ・エストラーダ(b)リッチー・ヘイワード(ds)での録音。そこからエストラーダが抜け、ケニー・グラッドニー(b)、ポール・バレア(g)、サム・クレイトン(perc / シンガー:メリー・クレイトンの弟)が加入して作られたのが、一般的に代表作とされる『DIXIE CHICKEN』だ。

事実、緩くウネっているようなルーズなグルーヴに強靭なバネが加わり、シンコペーションが発生して躍動感が現れている。演奏にスピード感が出て、ビル・ペインの鍵盤も よりスリリングに。ローウェルのスライドや、若干もっさり気味のヴォーカルは、それ自体はあまり変わらない気がするが、後ろが大きくタイトに変化した分、返ってユニークさが浮き彫りに。でもそれよりも、バンドのフォーマットが変わったことが曲作りに刺激を与えたと思われ…。<Dixie Chiken>に顕著なニューオリンズのセカンド・ライン導入も、新しいリズム・セクションの存在あればこそと思われる。ブギーなら『SAILIN' SHOES』にもあったけど、リズムのキレやハネ感が大きく違うのだな。

そうした進化のプロセスは、早くも『SAILIN' SHOES』のDisc 2に明らか。初っ端に来るタイトル曲は、ローウェルとヴァン・ダイク・パークスによるギターとピアノの弾き語りデモ。<Easy To Slip>と<Texas Rose Cafe>はドゥービー・ブラザーズのために書いた時のデモ。リンダ・ロンシュタットやジーン・パーソンズがカヴァーした初期名曲<Willin'>は、フィートのデビュー盤で取り上げていたが、ローウェルは納得してなかったのだろう、『SAILIN' SHOES』で再演してロック・スタンダード化した。ドンカマで始まる<Cold, Cold, Cold>は、そこに切り込んでくる爆裂ドラムがないオルタナティヴ・ヴァージョン。<Boogie>と題された<Tripe Face Boogie>初期ヴァージョンもある。

Disc 2後半は71年8月の、L.A.パラディム公演から10曲。時期的には『SAILIN' SHOES』リリースの半年前。つまり1st『LITTLE FEAT』との中間期で、1st / 2ndの楽曲が混在。1stからの<Hamburger Midnight>や<Willin'>にはバンドの成長が如実に表れている。だから<Willin'>をリレコして再収録したのだろう。<Hot Rod(Eldorado Slim)>はメンバー4人共作のライヴ用インスト。前半のスタジオ・セッションにも元マザーズのエリオット・イングバー作<Roto / Tone>を演っているが、そうした演奏力の高さと自由なスタイルはフランク・ザッパ譲りといっていい。この公演の記録は、オリジナル・フィートによるマルチ・トラックのライヴ録音としては唯一となる貴重なモノとか。『SAILIN' SHOES』発売後のプロモーション・ツアーでは、バンドは既に6人編成に拡張していたそうである。

で、『DIXIE CHICKEN』。これのDisc 2は、ド頭の2曲<Two Trains>と<Fat Man In The Bathtub>のデモに興味津々。ドンカマのリズムに乗ってローウェルがギターを弾いて歌っているだけのシロモノだけど、後者はギターが2〜3本重ねてあって、まるでローリング・ストーンズみたい。ってか、70年代の最もスワンプに近づいた頃のストーンズを、完全に意識している。アウトテイクになったインスト<Eldorado Slim>のスタジオ・ヴァージョン、完成版は『TIME LOVES A HERO』にまで持ち越される<High Roller>の初期ヴァージョンもかなり面白い。『SAILIN' SHOES』のデラックス版同様に既出音源もあるが、まぁ、そんなコトは関係ないな。

そしてライヴは、74年4月のボストン公演から7曲。うち4曲が『DIXIE CHICKEN』収録曲ながら、ココは著しい急成長を遂げてきたフィートのこと。<Willin'><A Apolitical Blues><Got No Shadow>といった旧曲の進化に耳を傾けたい。

これは自分の持論のひとつだけど、70年代のアメリカン・ロック・バンドで、ベースが黒人、もしくは白人から黒人にスイッチしたバンドには、そのサウンドや洗練のプロセスに独特の香りがあるのよ。

(P.S.) 大手リテイラー各社の特典付きCD用に、外袋の上から貼ってるバーコードのシール、メーカー・サイドで作ってると思うけど、全然剥がれなくて最悪。こちらはサブスクで済ませず、フィジカルを購入してるんだから、ユーザーに失礼。そんなところで安モノ使ってコスト削ってるんじゃないよ