richard dimple fields

チョイと間が空いてしまったが、Ultra-Vybe / Octave-Lab がスタートさせた【Boardwalk Records Original Master Collection】シリーズの復刻第2弾5作品から、2枚目のご紹介になるリチャード・ディンプル・フィールズ『DIMPLES』(81年)。 "DIMPLES"はエクボのことで、要するに、笑顔を売りに母性本能をくすぐるタイプの、愛されキャラの黒人シンガーということ。ボードウォークは当初、当時のCBSソニーが日本発売していて、彼のコトを “ブラック・コンテンポラリー期待の新星” 的に威勢良く売り出していた。ちなみに当時の邦題は『シンプル・スマイル』。

そんなだから、自分のディンプルズとの付き合いはボードウォーク初期から。この人の特徴は、スモーキー・ロビンソンによく似たちりめんヴィヴラートの使い手であること。そもそも声の甘さや繊細さが似ているのに、スモーキー天下の宝刀であるヴィヴラートまでソックリなのだから、さぞスモーキーを敬愛しているのだろう。でもエクボを売りにしているくらいだから、女性への取り入り方には独自の手法があるのだろうな。<Lovely Lady>という甘々バラードには、歌の途中でキッスの音まで入っている。

シングル・カットの<Earth Angel>はペンギンズのドゥワップ・カヴァーで、全米81位を記録。ドゥワップ・カヴァーはもう1曲あって、フレッド・パリス率いるファイヴ・サテンズ<In The Still Of The Night (I'll Remember)>を演っている。こうした81年産とは思えぬオールド・スクール感、ノルタルジックな持ち味が効いていて、それも何処かでスモーキーに繋がる感アリ。ご本家も当時<Being With You>なんて大ヒットを出していたから、完璧に狙っていたんだろう。そのせいかこのアルバムは、大したシングル・ヒットもなしに、ポップ・チャート33位をマーク(R&B5位)。最初は白人マーケットでも人気が高かったようだ。

ゆったりビートのミディアム・スロウ<Let Me Take You In My Arms Tonight>で熱いデュエットを効かせるのは、かのベティ・ライト。しかも彼女は、離婚ソングの<She's Got Papers On Me>でも相手役として歌っているほか、本作1曲目<I Like Your Loving>をベティ自身の81年作『BETTY WRIGHT』で取り上げている。更に彼の駆け出し時代の楽曲<One Bad Habit>をカヴァーした上、ディンプルのプロデュースで<Goodbye You Hello Him>をレコーディング。が、サスガにこれはアルバムには採用されず、シングルB面に。でもこれだけの密着ぶりだから、もしかしてベティさん、ディンプルのエクボの魅力にヤラレちゃったのかもね

<Let The Lady Dance>と第2弾シングル<I've Got To Learn To Say No!>(R&B42位)がモダン・ダンサーである以外は、ほぼ全曲はふんわりムードが漂うミディアム〜スロウ。故にAOR的な感性とも相性がイイ。R&B好きが騒ぎ始めたのは、次作『MR. LOOK SO GOOD』から<If It Ain't One Thing...It's Another>がR&Bチャート首位になってからだが、ボードウォークでの後続2作、彼の軸が大きくブレるコトはなかった。それどころか、ニューカマー的売り出しだったのに、実はソングライターとしては60年代から活動。70年代には、ローカル・レーベルから4枚ものアルバムを出していたコトが、後から判明。解説には何故か77年作が洩れちゃってるけど、実は自分はソレで、ディンプルズが意外にキャリアの長い人であることを知りました。