howard jones_singleshoward jones_dialogue

今日はちょうど来日中のハワード・ジョーンズ。門外漢の自分は観に行ったりはしないけど、テクノ・ポップ黎明、クラフトワークだのYMOだのゲイリー・ニューマンなどが出てきた当初は、ちょっと面白がって聴いていた。でもそれが大きな潮流になるにつれ、違和感が強くなって。打ち込み自体を否定しちゃあいないけど、マシンを使うなら必然性を見せてよ、というのが当時の自分の気持ちだった。でもそれがドンドン幅を効かせて、創作ツールというより、打ち込みを使うことが目的化してしまったアーティストが増えてきて…。ハワード・ジョーンズがどうだったかはよく知らんけど、初期の彼が自分にはピ〜ンと来なかったのは確か。アイドルっぽさも強かった。それをチャンと聴いてみよう!と思ったキッカケは、コイツはスゲェ!と思っていたスクリッティ・ポリッティをプロデュースしていたアリフ・マーディンが、ハワードの86年作『ONE ON ONE』を手掛けているのを知ってからである。

そんな自分だから、こういうシングル・コレクションはうってつけかも。 あまり馴染みがないはずの初期楽曲でも、聴けばシッカリ覚えている。アルバムを聴き込んだ覚えはないので、それだけ巷に流れていた、というコトだろう。『ONE TO ONE』の収録曲は、もちろん身体が覚えている感じ。それにしてもハワードがドナルド・フェイゲン<I.G.Y.>をカヴァーしてたのは、完全に記憶から抹消されていたわ… でもハワードは、スティーヴィー・ワンダーやクインシー・ジョーンズにも敬愛を示す守備範囲の広いヒトで、シンセ・ポップやニューウェイヴだけじゃない。そうした滋養があるから、不遇の90年代を生き延びて、今また活躍しているのだろう。disc 2のクリップ集には、DVDのみの収録曲が3曲。84年の日本公演も映像も2曲ボーナス収録されている。

同時発売のニュー・アルバム『DIALOGUE』は、19年作『TRANSFORM』から3年半ぶりの新作。本人曰く、『ENGAGE』 (15年) から連なる“エレクトリック4部作”の第3弾にあたり、シンセ系ダンス・ポップへの回帰を印象づける。それは例えば、A-HAへの再注目やケイト・ブッシュ<Running Up That Hill (神秘の丘)>のリヴァイヴァル(全英首位/全米3位)と連動するモノでもあるだろう。リアルタイム世代は新しいとは感じなくても、時代がひと回りした感覚は、シティポップの世界的ブームと同じだ。

日本盤には、なんと84年の日本公演(LIVE at the NHK Hall)』全15曲をボーナス・ディスクとして収録。これは元々84年にVHSで市販されていたもので、18年に『HUMAN'S LIB(かくれんぼ)』がボックス・セットでリイシューされた時に復刻され、22年に英国でDVD / CDで再発されていたもの。デビュー直後のアイドル然としたパフォーマンス、そしてビートルズ<Hey Jude>のカヴァーも演っている貴重な記録である。