max beesley

ジャズとクラシックの素養を持ち、
ヴィブラフォンを中心にドラムやパーカッション、
ピアノもプレイする英国のマルチ・ミュージシャン、
マックス・ビーズリー。
ポール・ウェラーのバンドに在籍したのをキッカケに、
インコグニートやブラン・ニュー・ヘヴィーズ、ジャミロクワイ、
リサ・スタンスフィールドとも共演している。
この初フル・アルバムでは、
ジョージ・ベンソンとの共演で知り合ったスティーヴ・ガッドを筆頭に、
ディーン・パークスや超話題のユニット:ホーン・ハウスとの
セッションで、超絶イカした刺激的ファンク・フュージョンを提示。
これぞ今の時代のリアル・クロスオーヴァー!
というワケで、筆者監修のP-Vine【Light Mellow Searches】シリーズ、3ヶ月ぶりとなるリリースは、英国の俳優兼ミュージシャン、マックス・ビーズリーの登場となる。音楽学校でピアノ、打楽器、作曲を学びながら、交響楽団や室内オーケストラ、ビッグ・バンドやカルテットなど、様々なジャンル、スタイルで演奏。18歳で王立音楽大学や王立音楽アカデミーなど、主要音大の5つの奨学金を獲得した天才肌だ。一番得意なのはヴィブラフォンで、ドラムやパーカッション、ピアノをプレイ。ヴァイブ奏者で影響を受けたのは、ロイ・エアーズ、ボビー・ハッチャーソン、マイク・マイニエリとゲイリー・バートン。

ところが卒業後は、ポール・ウェラーのバンドに参加。約2年に渡ってツアーやレコーディングを共にし、その後もブラン・ニュー・ヘヴィーズやインコグニート、学友であるオマー、ジャミロクワイなど、アシッド・ジャズやUKソウル系セッションに数多く参加。ミーシャ・パリス、ワークシャイ、アンナ・カラン、ウェット・ウェット・ウェット、ロビー・ウィリアムズ、テイク・ザットなどと仕事をし、ジョージ・ベンソンやアース・ウィンド・アンド・ファイアー、スティービー・ワンダーとも共演機会を持った。しかし90年代半ば過ぎには、何と俳優業に転身。BBCのドラマでの演技が評判になったり、99年にはスコットランドのコメディ映画に主演している。
「僕にとっては演技が本業で、音楽は初恋なんだ」

マックスにとっての作品リリースは、アシッド・ジャズ・ムーブメント絶頂期の93〜94年に、ブギー・バック・レコードから12インチを2枚出して以来。日本ではその4曲がCDマキシ・シングルにまとめられ、エピック・ソニーから発売された。そしてこの『ZEUS』は、彼にとって初のフル・アルバム。コロナ・パンデミックのロックダウンで、すべての撮影がストップして家にいる時間が多くなったことが、彼の音楽へ向かわせたという。演りたかったのは、若い頃に影響を受けたクロスオーヴァー・スタイルの音楽。
「初期のハービー・ハンコックやロイ・エアーズのレコードとかね。ブレッカー・ブラザーズもたくさん聴いたし、彼らのホーン・アレンジが大好きだった。ジェリー・ヘイと彼のホーン・アレンジメントも常にお気に入りだ。僕にはあのサウンドを完全に体現している友人たちがいるんだ。ホーン・ハウスのニコル・トムソンとトム・ウォルシュ。彼らは本当に凄まじいミュージシャンで、僕が狙ったアレンジにピッタリだった」

オォ、これはナイス。ホーン・ハウスの1st『HUMAN SYNTHS』は、今年3月に『Light Mellow Seaches』シリーズで日本発売したばかり。インコグニートやヤング・ガン・シルヴァー・フォックスでしばしば共演を重ねてきた2人によるトランペット&トロンボーンのユニットで、パワー全開のホーン・セクションが、80'sスタイルのキレッキレ・ブリット・ファンクに乗って迫ってくる。他にもスティーヴ・ガッド (ds), ディーン・パークス (g), ウォルト・フォウラー (tr), ルイス・コンテ (perc) といった米国の唯たる敏腕たちが参加。ブルーイに声を掛けられてジョージ・ベンソン『THAT'S RIGHT』(96年)に参加したのがキッカケで、スティーヴ・ガッドと仲良くなったのが始まりだそうだ。

「ずっと日本が大好きなんだ。文化、人々、良い音楽に対する飽くなき欲求。僕の最良の思い出のいくつかは、ブラン・ニュー・ヘヴィーズやインコグニートとのジャパン・ツアーの時のものだから、来年あたり、このアルバムを持って日本へ行けたらとてもエキサイティングだと思っている」

実は早くも、ソロ名義の新作アルバム『GROOVE SPECTRUM』が準備されているとか。そこではポール・ウェラー、ロビー・ウィリアムズ、リサ・スタンスフィールドらをゲスト・シンガーに招いているらしい。これからチョッと目が離せなくなりそうなマルチ奏者マックス・ビーズリー、先物買いの音楽フリークは要チェック、である。