アル・クーパーが音頭を取り、マイク・ブルームフィールドとスティーヴン・スティルスを招いて制作された『SUPER SESSION』。オリジナル盤は68年発表だが、その4年後に登場した4chクアドラフォニック盤が、最新リマスターによる4ch / 2chのSACDマルチ・ハイブリッド・エディションとして復刻された。装丁は既にお馴染みの7インチ紙ジャケット。03年リマスター盤に収録されていたボーナス・トラックのないストレート・リイシューだが、早い話、4chミックスが存在するのはオリジナル楽曲のみなのだろう。
一般的に“ロック史に残る歴史的名盤”とされる本作。しかし世代的なモノなのか、自分にはそういう感覚が薄い。おそらくひと世代未満、4〜5歳程度の差で、このアルバムには関心が向かなかった。中学2年だった74年からロックに深入りし始めた自分にとって、エリック・クラプトンは現役で、マイク・ブルームフィールドは過去の人。そしてスティルスはフォーク・ロック。故にこのアルバムをチャンと聴いたのは、70年代終盤になってからだったと思う。それこそアル・クーパーは制作ワークに傾倒していた時代。彼の再評価が始まるのは、レア・グルーヴが盛んになった90年代のコトだ。
今回このSACDマルチ・ハイブリッド・エディションが出て、超久々にアルバムを聴き通した。そこで改めて感心したのは、アルのプロデューサーとしての手腕や先見の明である。
元々ボブ・ディランを通じて交流があったアルとマイク。その後はブルース・プロジェクトとバターフィールド・ブルース・バンドでそれぞれにブルースを追求。更に自らが中心になってブラッド・スウェット&ティアーズとエレクトリック・フラッグを組み、共にブラス入りの新しいロックの形を模索した。しかし両人ともアルバム1作で自分で組んだバンドを脱退するという、よく似た歩みを踏んでいる。そこでアルは、マイクを大フィーチャーしたアルバムを作ろうと思い立ち、本作のレコーディングを準備した。マイクもその要求に応え、バリバリのブルース・ギターを弾き倒している。アルはオルガンでマイクに寄り添い、彼のギターを盛り立てつつ、自らも熱いオルガン・プレイを披露。そのコンビネーションの凄まじさは、セッションを覗きに来たバリー・ゴールドバーグ(kyd)が思わず飛び入りしてしまうほどだった。
ところが体調的・精神的に不安定だったマイクは、2日目のスタジオ入り前に遁走。そこで急遽スティルスが代役に抜擢される。でも彼は、ギター・プレイに没入していくマイクとはまったくタイプが違い、楽曲を立てる中で演奏を聴かせていく。しかも契約の関係で歌うこともままならなかった。そこでアルはアレンジ/プロデュース面の才を発揮し、ディランやドノヴァンのカヴァーを用意してスティルスをサポート。アルは後にサザン・ロックに傾倒し、レーナード・スキナードをデビューさせるが、もう本作段階でスティルスとの楽曲にその前兆が窺える。<You Don't Love Me>は、まさにオールマン・ブラザーズ・バンドが有名にする楽曲だが、彼らのデビューは本作の翌年のコト。マイク・サイドの<Stop>後半や<His Holy Modal Majesty>がジャズっぽく展開していくあたりも、オールマンと共通している。特に後者の進行は、<In Memory Of Elizabeth Reed>にクリソツ。マイクのギタリストとしてのピークは、間違いなくこのアルバムだったな。
クアドラ・ミックス盤としては、深めのリヴァーブとクッキリした定位の気持ち良さが特筆モノ。本来はプログレ系みたいにサウンド・エフェクトや楽器の多さがサラウンドの魅力に繋がるが、シンプルな編成での録音では、その楽器の鳴り自体や臨場感がポイントになる。それに気づかされたのは、自分の場合はエリック・クラプトン『SLOW HAND』のボックスだった。
今回このSACDマルチ・ハイブリッド・エディションが出て、超久々にアルバムを聴き通した。そこで改めて感心したのは、アルのプロデューサーとしての手腕や先見の明である。
元々ボブ・ディランを通じて交流があったアルとマイク。その後はブルース・プロジェクトとバターフィールド・ブルース・バンドでそれぞれにブルースを追求。更に自らが中心になってブラッド・スウェット&ティアーズとエレクトリック・フラッグを組み、共にブラス入りの新しいロックの形を模索した。しかし両人ともアルバム1作で自分で組んだバンドを脱退するという、よく似た歩みを踏んでいる。そこでアルは、マイクを大フィーチャーしたアルバムを作ろうと思い立ち、本作のレコーディングを準備した。マイクもその要求に応え、バリバリのブルース・ギターを弾き倒している。アルはオルガンでマイクに寄り添い、彼のギターを盛り立てつつ、自らも熱いオルガン・プレイを披露。そのコンビネーションの凄まじさは、セッションを覗きに来たバリー・ゴールドバーグ(kyd)が思わず飛び入りしてしまうほどだった。
ところが体調的・精神的に不安定だったマイクは、2日目のスタジオ入り前に遁走。そこで急遽スティルスが代役に抜擢される。でも彼は、ギター・プレイに没入していくマイクとはまったくタイプが違い、楽曲を立てる中で演奏を聴かせていく。しかも契約の関係で歌うこともままならなかった。そこでアルはアレンジ/プロデュース面の才を発揮し、ディランやドノヴァンのカヴァーを用意してスティルスをサポート。アルは後にサザン・ロックに傾倒し、レーナード・スキナードをデビューさせるが、もう本作段階でスティルスとの楽曲にその前兆が窺える。<You Don't Love Me>は、まさにオールマン・ブラザーズ・バンドが有名にする楽曲だが、彼らのデビューは本作の翌年のコト。マイク・サイドの<Stop>後半や<His Holy Modal Majesty>がジャズっぽく展開していくあたりも、オールマンと共通している。特に後者の進行は、<In Memory Of Elizabeth Reed>にクリソツ。マイクのギタリストとしてのピークは、間違いなくこのアルバムだったな。
クアドラ・ミックス盤としては、深めのリヴァーブとクッキリした定位の気持ち良さが特筆モノ。本来はプログレ系みたいにサウンド・エフェクトや楽器の多さがサラウンドの魅力に繋がるが、シンプルな編成での録音では、その楽器の鳴り自体や臨場感がポイントになる。それに気づかされたのは、自分の場合はエリック・クラプトン『SLOW HAND』のボックスだった。