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先月からレギュラー執筆を再開しているALFA MUSICのサイト内にあるALFA note のコラム、ALFA考現学(https://note.com/alfamusic1969/m/ma27804a4e38e)。 ALFAは時節柄シティポップ系アーティストが盛んにネタにされているけれど、ミュージシャン系は割とスルーされがち。なので『ALFA+アルファ〜リアル・クロスオーヴァー進化論』というタイトルを掲げ、カシオペアから執筆をリ・スタートした。ポイントは、クロスオーヴァーであってフュージョンではない、ということ。YMOだってデビュー当時はテクノなんて呼び名はなく、クロスオーヴァーの亜種として扱われていたのだからね。

その第2回目は、YUTAKAこと横倉裕。ALFA考現学では当然ALFAからのソロ・デビュー作を取り上げているので、ここでは当時 “日本人初の専属契約”として注目されたGRP移籍第1弾『YUTAKA』(88年)を。アートワークは左がオリジナルUS盤で、右は国内盤。琴を持っているのが如何にも日本人っぽいけど、それを回避した日本盤ジャケは、やはり一種のコンプレックスを刺激しない方策だったのかな?

でもYUTAKAが渡米してやっていたコトは、完全にUS仕様。セルジオ・メンデスに憧れ、彼に師事すべく海を渡ったのだから、当然ブラジリアン・テイストが強い。そこにコトが奏でる和のサウンドをナチュラルに混ぜ込み、ソフィスティケイトさせたのが、日本人である彼のスタイルだった。ALFA発の『LOVE LIGHT』(78年)では、喜多嶋修やヒロシマのジューン・クラモトらが琴や琵琶を弾いていたけれど、時間をかけて自分で琴をマスターしたようで。その分、西洋音階を和楽器でプレイする術も熟れている。尺八はずーっと松居カズ。

ジョン・ロビンソン/ヴィニー・カリウタ/カルロス・ヴェガ (ds)、エイブ・ラボリエル /ネイザン・イースト (b)、ポール・ジャクソンJr./カルロス・リオス (g)、ドン・グルーシン (kyd)、シーウインド・ホーンズ…といったGRPらしい面々が揃っている一方で、オスカー・カストロ・ネヴィスやグラシーニャ・レポラーセといったセルメン人脈の参加がYUTAKAらしいところ。特にシーウインドのポーリン・ウィルソンが<Warm And Sunny Sunday Morning>と<Living Inside Of Your Love>で透明感溢れるAORヴォーカルを披露していて、これが素晴らしい。このヴォーカル・チューンの存在感が大きいから、このアルバムを単なるフュージョン扱いしたくないのだな。

ポーリンとYUTAKAの関係は、後続の『BRAZASIA』(90年)、『ANOTHER SUN』(93年)でも続いていて。最近はちょっと入手が難しいようだけど、どれも今もって瑞々しさを失っていない好盤群なのは疑いない。