日本国内ではごく一部のマニア支持に止まるが、海外ではより広く注目されているらしい和ジャズ。分かりやすく言ってしまえば、フュージョンの源流ではあるのだけれど、プレ・フュージョン的なクロスオーヴァーの更にその前、60年代末から70年代中盤頃の、ジャズ・ミュージシャンによる脱4ビート、ジャズ・ロックに傾倒していく動きを指す。渡辺貞夫や日野皓正、菊地雅章らを筆頭に、のちにフュージョン・シーンで名を挙げる今田勝、コルゲンこと鈴木宏昌、佐藤允彦、本田竹廣(ネイティヴ・サン)、川崎燎、増尾好秋、杉本喜代志なども、ここいら辺の出自。そして早くから様々なトライ&エラーを行ない、主導的立場でシーンを斬り開いていたのが、ドラムの石川晶と猪俣猛、サックスの稲垣次郎だ。
60〜70年代を通じてスタジオ・ミュージシャンとして大活躍し、そのご褒美的に自由にレコードが作れた彼ら。特に稲垣はソウル・メディアを率いつつ、ヴォーカル・アルバムのプロデュースにも積極的で、女性シンガーのサミー、のちにベース奏者として有名になる岡沢章、ハプニング・フォーのトメ北川などを手掛けている。そんな状況だから関連アルバムが非常に多くて…。ハナからオリジナルLPを集めようなどとは思っていないが、CDもプレスが少なくて入手困難だったり、そもそも未CD化だったりで、なかなか揃いにくかった。最近はチョッとしたブームで復刻が相次いでいるものの、アナログ中心の再発なので、片手間で集めている自分にはふところ的に厳しい。きっと和ジャズに興味をお持ちの方にも、おいそれとは手が出しにくいと思っている方が多いのではないか?
そこで稲垣次郎入門、延いては和ジャズ初級者にも打ってつけなのが、このアナログ2枚組だ。フランスのレーベルとHMV record shopによる和ジャズ・コラボ企画で、稲垣とソウル・メディアの黄金期、68年〜80年の代表曲を集成した究極のコンピレーション。全曲、稲垣が在籍した日本コロムビアからのライセンスで、マスタリングとカッティングは評判の良いフィンランド、アートワークはフランス産というインターナショナルなお仕事。選曲はこの筋の第一人者:尾川雄介氏である。
中でも押さえておきたいのは、70年のジャズ・ロック宣言作『HEAD ROCK』からの<Head Rock><Twenty One>(川崎燎・今田勝参加)、74年の名盤『FUNKY STUFF』収録の<Breeze>(鈴木宏昌・岡沢章参加)、大編成による70年のライヴ盤『JAZZ & ROCK OUT』からエディ・ハリスをカヴァーした<Freedom Jazz Dance>(大野俊三・川崎燎・今田勝・佐藤允彦)、やはり名盤『IN THE GROOVE』 (73年)所収のクルセイダーズ・カヴァー<That's How I Feel>(松木恒秀・岡沢章参加)と<Painted Paradise>(鈴木宏昌・安川ひろし・岡沢章ら)、拙監修ディスクガイド『Light Mellow 和モノ』にも掲載した80年作『MEMORY LANE』のタイトル曲(数原晋・前田憲男・岡沢章・渡嘉敷祐一・大野えり・シンガーズスリー参加)、そして初アナログ化となる『FUNKY BEST』(75年) からの<Express>(羽田健太郎・安川ひろし・江藤勲・ラリー須永・鈴木宏昌)あたり。(ビッグ)ソウル・メディアがバックを務めた佐藤允彦のリーダー作『SNIPER'S SNOOZE』(71年)、同じく鈴木宏昌『THE RED STREAM』(73年)、68年録音による前田憲男との双頭アルバム『THIS IS JAZZ-ROCK』からのチョイスも嬉しい。
ジャズが4ビートからハミ出して、行き先を模索していたこの時代。これがなければ後のジャズ・フュージョンはなかった。和ジャズという今様のジャンルで括ってしまうのではなく、楽器演奏の表現の面白さを後世に伝えるモノと捉えれば、その文化的価値は高い。それに対して熱意を示しているのが、本国:日本の音楽ファンより海外のマニアというのが何とも悲しい。何事も外国から言われなきゃ気づけない・動けない、そんな国に成り下がってしまったのかな、今の日本は…。
HMV Record Shop のサイトへ
HMVで稲垣次郎を検索
そこで稲垣次郎入門、延いては和ジャズ初級者にも打ってつけなのが、このアナログ2枚組だ。フランスのレーベルとHMV record shopによる和ジャズ・コラボ企画で、稲垣とソウル・メディアの黄金期、68年〜80年の代表曲を集成した究極のコンピレーション。全曲、稲垣が在籍した日本コロムビアからのライセンスで、マスタリングとカッティングは評判の良いフィンランド、アートワークはフランス産というインターナショナルなお仕事。選曲はこの筋の第一人者:尾川雄介氏である。
中でも押さえておきたいのは、70年のジャズ・ロック宣言作『HEAD ROCK』からの<Head Rock><Twenty One>(川崎燎・今田勝参加)、74年の名盤『FUNKY STUFF』収録の<Breeze>(鈴木宏昌・岡沢章参加)、大編成による70年のライヴ盤『JAZZ & ROCK OUT』からエディ・ハリスをカヴァーした<Freedom Jazz Dance>(大野俊三・川崎燎・今田勝・佐藤允彦)、やはり名盤『IN THE GROOVE』 (73年)所収のクルセイダーズ・カヴァー<That's How I Feel>(松木恒秀・岡沢章参加)と<Painted Paradise>(鈴木宏昌・安川ひろし・岡沢章ら)、拙監修ディスクガイド『Light Mellow 和モノ』にも掲載した80年作『MEMORY LANE』のタイトル曲(数原晋・前田憲男・岡沢章・渡嘉敷祐一・大野えり・シンガーズスリー参加)、そして初アナログ化となる『FUNKY BEST』(75年) からの<Express>(羽田健太郎・安川ひろし・江藤勲・ラリー須永・鈴木宏昌)あたり。(ビッグ)ソウル・メディアがバックを務めた佐藤允彦のリーダー作『SNIPER'S SNOOZE』(71年)、同じく鈴木宏昌『THE RED STREAM』(73年)、68年録音による前田憲男との双頭アルバム『THIS IS JAZZ-ROCK』からのチョイスも嬉しい。
ジャズが4ビートからハミ出して、行き先を模索していたこの時代。これがなければ後のジャズ・フュージョンはなかった。和ジャズという今様のジャンルで括ってしまうのではなく、楽器演奏の表現の面白さを後世に伝えるモノと捉えれば、その文化的価値は高い。それに対して熱意を示しているのが、本国:日本の音楽ファンより海外のマニアというのが何とも悲しい。何事も外国から言われなきゃ気づけない・動けない、そんな国に成り下がってしまったのかな、今の日本は…。
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稲垣氏は作品がかなりあるのでこういうベストはありがたいです。