rolling stones hackney

音楽メディアも音楽ファンも、世を上げて絶賛の嵐。ならば自分がココでわざわざ書くまでもない、と思いながら、仕事関連以外で何か聴こうとすると、どうしてもコレに手が伸びる数日を過ごしている。カッコイイ。天邪鬼な自分としては、諸手を上げて大絶賛はし難いのだけれど、今世紀に入ってからのストーンズでは一番のデキかな? …と書いたところで、00年以降、純粋なオリジナル・ニュー・アルバムは、05年の『A BIGGER BANG』しか出していないコトに気づいた。スタジオ新録に限っても、ルーツィーなブルースのカヴァー作『BLUE & LONESOME』以来7年ぶり。それでもお久しぶり感が薄いのは、彼らがコロナにもメゲず、ライヴ・ツアー中心に転がり続けているから。チャーリー・ワッツが逝ってしまった時は、どうなるか…と思ったけれど、まったく頭の下がるジジイたちである。

まぁ、至るところで記事やポストが上がっているので、細々した解説は今更不要だろう。でもやっぱりチャーリーが健在だった頃にレコーディングされていた<Mess It Up>と<Live by the Sword>は出色で…。勢いと風格が綯い交ぜになっていた70年代のストーンズを思い出さずにいられないし、ベースのビル・ワイマンが30年ぶりにゲスト的に舞い戻った後者の猥雑感は、まさにストーンズだ。アルバム全体の音圧の高さや、ギターの定位のハイファイ感は如何にも今時のロック・アルバムだけど、この曲は他のトラックに比べて音がダンゴ状態に仕上げられ、バンドの一体感を強調しているように感じられる。

それとポール・マッカートニーがベースを弾いている<Bite My Head Off>。このパンキッシュさは60年代のストーンズみたいで、メチャクチャ荒ぶれている。その中で一番大暴れしているのが、ミックやキースではなくポールなのだから、これにはビックリ。<Helter Skelter>はヴォーカルがイッちゃってたけど、これはベースでブッ飛んでる。それを受けるロニー・ウッドのギター・ソロもご機嫌。彼にしてもキースにしても、このアルバムのギター・プレイは、コンビを組んで以降、共に最高レヴェルの演奏じゃないかな?

レディ・ガガ、スティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョンといったゲスト陣も、それぞれに持ち味発揮。でもストーンズ自体の存在感がとんでもないから、メディアや薄口ファンに向けての賑やかし、といった感じか。コアなストーンズ・ファンには、刺身のつまみたいなモノだろう。

そしてラストには、ミック、キース、ロニーの3人だけによるマディ・ウォーターズ<Rolling Stone Blues>のカヴァー! 本当なら『BLUE & LONESOME』に入っていても良さそうだけど、もしかしてアイディアを温存してたのかな? ラスト・アルバムになってもイイように…、なんて悪い考えがよぎってしまったりもするけれど、オリジナル・メンバーはミックとキースだけになってしまった今、あとはアディショナル・タイムだ、という気分なのかも。そう考えると、コロナ中に急遽制作した<Living In A Ghost Town>を日本盤ボーナスにしているのは、ちょっと余計と言えるかも。収録自体は嬉しいけど、美しくはないんだな。