tetsuji hayashi_saudade

50周年記念ライヴ@東京国際フォーラムを明日に控え、その予習として、このキャリア初のトリビュート・アルバム『SAUDADE(サウダージ)』をひと足お先に。ヒットメイカー:林哲司の作曲キャリアを華麗に彩った代表曲12曲を選りすぐり、ベテランからニュー・フェイスまで幅広い顔ぶれでカヴァーしている。うち8曲が新録で、垂涎のセルフ・カヴァーもアリ。シティポップ再評価で今また注目が集まる林さんだけれど、作曲家としてはそういう狭いフィールドに留まっていないことを証明するような内容だ。

最大の話題は、やっぱりオープニングの中森明菜の新録<北ウイング>だろう。ピアノ+弦楽三重奏というクラシカルな編成で、シットリ聴かせる。完全復帰にはもう少しだけ時間が必要、と思わせるが、この曲の再録音は明菜当人の希望だったそうで、まずはこうした企画へ前向きに参加してくれたコトを喜びたい。

個人的に聴き入ってしまったのは、久々に聴いた原田知世<天国にいちばん近い島 (2017 Version) >と、歌唱力で勝負の中西圭三<悲しい色やね>。 共に楽曲の魅力を何倍にも増幅する表現力が凄まじい。さかいゆうの<真夜中のドア〜Stay with me〜>は、昨年のカヴァー作から。世界的ブームのため、もうその時点で手垢が付けられてしまった感の超人気曲だが、それを覆す斬新なアレンジが光った好ヴァージョン。直接・間接的に林サンと縁があった中川翔子&ヒャダインのユニットによる<ガラスのPALM TREE>、敢えてオリジナル・トラックを使ってヴォーカルのみ新録した杉山清貴<悲しみがいっぱい>には、彼に対するそれぞれのリスペクトの深さが現れている。そして林サンのプロデュースでメジャー・デビューしたGOOD BYE APRILは、その杉山(&オメガトライブ)の<SUMMER SUSPICION>をセレクトして、林メロディと倉品翔の歌声との相性の良さを無理なくアピールした。

なお初回盤はボーナスDVD付きで、未作品化のレア映像『TOKYO FM NISSIN POWER STATION 林哲司 SPECIAL LIVE』(86年@TOKYO FMホール)を一部収録。更に今年4月『林哲司 SONG FILE SPECIAL with 杉山清貴・菊池桃子』から杉山との<I Write A Song For You>などを収めている。

おそらくライヴ会場では先行発売されるのだろうが、一般発売は8日。和モノ好きは要チェックで。

 【収録曲】
1. 北ウイング-CLASSIC- / 中森明菜
2. 悲しみがとまらない / 稲垣潤一&小柳ゆき 
   ※ 2008年発売「男と女 -TWO HEARTS TWO VOICES-」より
3. SUMMER SUSPICION / GOOD BYE APRIL
4. September / Pii
5. Dang Dang 気になる / 上坂すみれ
6. 天国にいちばん近い島 (2017 Version) / 原田知世
   ※ 2017年発売「音楽と私」より
7. 信じかたを教えて(2022 New Vocal Version) / 松本伊代
   ※ 2022年リリース配信シングルより
8. 卒業-GRADUATION- / 松城ゆきの
9. 悲しい色やね / 中西圭三
10. ガラスのPALM TREE / 中川翔子&ヒャダイントライブ
11. 真夜中のドア〜Stay with me〜 /さかいゆう feat. Shingo Suzuki
   ※ 2022年発売「CITY POP LOVERS」より
12. 悲しみがいっぱい / 杉山清貴