gareth donkin

先行デジタル・リリースで大きな注目を浴びているUKの新人シンガー・ソングライター、ガレス・ドンキンのフィジカル・リリースがようやく。“マイケル・ジャクソンmeets AOR” なんて言われているけど、ズバリこれは マイケルよりエル・デバージだね。ナイーヴで中性的な歌い方がモロにそうだし、声そのものがよく似ている。でも悲しいかな、今じゃエル・デバージといっても知らない人が多いから、マイケルの方を引き合いに出しているのだろう。でもココんチのお客様なら、ほとんど皆んなが知ってるよね? エル・デバージ。彼を知る人に黙ってコレを聴かせたら、十中八九、「エル・デバージの新譜?」と訊いてくるに違いない。もちろん曲調によっては、マイケルっぽさも充分。そもそもエルだって、ポスト・マイケルと言われて人気が出たヒトなのだから…。

ただし若干23歳のガレス君は、プリンスやスティーヴィー・ワンダーに影響を受けたマルチ・プレイヤーでもあって。曲作りは半分くらいが共作だけれど、リード&バック・ヴォーカルはもちろん、プロデュース、アレンジ、プログラミングは、ほぼ自分で賄っている。曲によってギターやベース、ホーン・プレイヤーを加えているが、ベーシックはほぼ本人のマルチ・プレイだと思ってイイようだ。微妙にズレたドラム・プログラムを使うのは、昨今のヒップホップを経由したジャズの影響。

…とはいえ、エル・デバージみたいなラテン系ダンス・ポップ要素は薄くて、アルバムはメロウ・ミディアム中心の構成。でもエルより更に繊細感が強いから、それがちょうど良いみたい。オケのダイナミズムの乏しさは、如何にも今ドキのベッドルーム・ミュージックっぽい作りだが、今はその方が若い世代に受け入れられやすいのだろう。 それでもバックボーンの広さが音に表れていて、充分に世代を超えてアピールしていける魅力がある。

国内リリースは輸入盤国内仕様のためか、現時点では安定供給してない様子。でもこのニュー・カマーはかなり面白そうです。