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2晩連続のBillboard Live Tokyo。出しモノは昨日とは一転、ネッド・ドヒニー。月初めにポストしたように、ネッドの来日は、盟友ヘイミッシュ・スチュアートとの共演ライヴから5年ぶり。あの時はヘイミッシュのバンドに乗っかるカタチで、セットリストも双方が交互に歌ってバランスを取っていたが、今回は完全なネッドの単独パフォーマンス。ネッド・ファンの間では、やっぱり一人の方が…、という声も少なからずあったと思われる。

ステージは、『HARD CANDY』からの<Sing To Me>でスタート。『HARD CANDY』や『PRONE』といった代表作の収録曲を中心に、ゆったりしたペースで進行していく。そのまったり具合が、如何にもL.A.流。バック・メンバーがそれなりの格好をしているのに、ひとりヨレヨレのTシャツのままステージに立っている。1〜2曲ごとにエレキとアコギを持ち替えるが、その都度 神経質そうにチューニングを修正し、平気でショウの流れを分断させる。だったら、持ち替え回数が少なくて済むセットリストを組めよォ、と心の中で叫んだりして。MCもチャンとした曲紹介などせず、ボソボソと独り言のように話すだけ。Thank Youとは言うものの、ホント、オーディエンスを置いてけぼりにするような、とことんマイペースな立ち居振る舞いなのだ。偶然一緒になった某ソウル系ライター氏が、「やっぱりL.A.の大金持ち、セレブ中のセレブだから、ああなるんですよ。ニューヨークのミュージシャンなら絶対考えられない」と。まあ、ネッド的にはいつものコトだけど、“なるほどネェ” と納得してみたり。

それでもライヴの内容そのものは、なかなかに充実していて。もう70歳代中盤だから、得意のハイトーンが些かキツくなっているのは致し方ないものの、それでも歌声そのものに大きな変化はなく、声も結構よく出ている印象。それこそ5年前より良かったんじゃないか。特に今回は、Sumudu Jayatilakaとアンディ・ケインという男女のコーラス隊がついていて、ネッドを上手くサポート。それにも増してリズム隊が、マイケル・ホワイト(ds)とメルヴィン・デイヴィス(b)と強力で。マイケルは元メイズで、スティーリー・ダンのツアーにも参加、自身のリーダー作も複数ある敏腕セッション・ドラマー。ネッドとは8年前にも来日している。多弦ベース使いのメルヴィンは、つい先月のリー・リトナー&デイヴ・グルーシン公演にも帯同。今回は5弦と7弦のサオを巧みに使い分け、重厚感のある低音を響かせた。この鉄壁のリズム・コンビのおかげで、ネッドらしい緩めのアコースティック・グルーヴに、ビシッと一本、筋が通る。この辺りも前回感じられなかった魅力。リハーサルもそこそこ重ねてきたらしく、ココ何回かのネッドの来日公演では、総じて一番デキが良かった気がする。

セットリスト的には、いくつか聴きたかった曲が外されてしまったものの、<Whatcha Gonna Do For Me?>、<Give It Up For Love>、<To Prove My Love>と続く最後の流れが圧巻。そこで一度引っ込み、<When Love Hangs In The Balance>はアンコールとしてプレイされた。

ただ、大物アーティストの来日が相次ぐ煽りか、お客さんの入りがちょっと寂しかったのが残念。個人的には、大枚叩いてアリーナ級のライヴに駆けつけ、豆粒ほどの姿か、もしくはスクリーン越しに観せられるくらいなら、至近距離でライヴ・パフォーマンスの醍醐味をダイレクトに感じたい。ネッドをよく知っている人ならば、今回のショウは観ておいて損はないと思うぞ。

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