creation_super rock

5月、8月と、東芝EMI時代の全アルバムが揃って紙ジャケ復刻されてきたクリエイション/竹田和夫。そのシリーズ最終回として、日本のロック黎明期の大名盤と言っていいクリエイションの75年のデビュー作『CREATION』、フェリック・パパラルディとの共演でワールドワイドに紹介された76年作『FELIX PAPPALARDI & CREATION』、77年のこれも人気作『PURE ELECTRIC SOUL』、そして当時注目されていたダイレクト・カッティングでレコーディングした『SUPER ROCK in the Highest Voltage!』の4枚がリイシューされた。その中から、今回が初CD化となる『SUPER ROCK...』をピックアップ。

今となっては、ダイレクト・カッティングって何?って感じだろうが、当時のアナログ・レコーディングは磁気テープに演奏を録音し、更にチャンネルを変えてダビングし、それをミックスしてラッカー盤に刻み込む(=カッティング)のが通常パターン。でもダイレクト・カッティングはこのテープ・プロセスを省略し、演奏した音の信号を直接ラッカー盤に落とし込む手法だ。それによってヒス・ノイズの類いが軽減され、良い音が得られる。ただし演奏側はダビングなしの一発勝負で、LP片面分を一気に録らなければならない。それに初めてトライした日本のロック・バンドが、彼らクリエイションだった。まぁ、言うなれば録音技術屋の実験で、結局のところあまり浸透はしなかったが…。

でも後になって考えると、コレがクリエイションの転機になったとも考えられる。竹田はこの年、先に初のソロ・アルバム『MISTY MORNING FLIGHT』を出していて、それまでのブルース・ロック指向から大きくクロスオーヴァーに舵を切っていた。このアルバムは名義こそクリエイションだが、流れはむしろ竹田ソロに近く、ヴォーカル曲は<Blues From Tokyo>のみ。プロレスのテーマとして有名な<Spinning Toe Hold>の新装版<Spinning Toe Hold No.2>が象徴するように、他はすべてインスト曲で占められている。ダイレクト・ディスクだったことも含め、いろいろなチャレンジが詰まった一枚なのだ。さすがに当時は賛否が割れたものの、この後<ロンリー・ハート>のヒットが出たこともあり、いま改めて聴き直すと、“なるほどねェ” と思えたりする。

メンバー的にも入れ替わりが激しかった時期で、オリジナル・メンバーは既に竹田と故・樋口昌之(ds)のみ。フリーやフェイセズなど海外で活躍してきた2代目ベース:山内テツも、ツアーのみでバンドを離れ、代わりにキーボード、サックスを加えた5人編成。そこにパーカッションの横山達治がゲストで参加している。そうした点で、言うまでもなく過渡期の産物だけど、こういう試行錯誤の時期がなかったらその次の展開もなかった。そこを俯瞰して聴くと、なかなか面白い作品なのよ。

ちなみに同発の1stは、スッポンポンの子供たちのアートワークがSNSのAIに引っ掛かるらしく、過去に数日ポストを止められた経験アリ。アップの際は取扱注意で。