某誌にレビューを書いたので、コチラでは角度を変えて。ネタにしたのは、ピンク・フロイドの創設メンバー:リチャード・ライト(kyd)が78年に発表した初ソロ・アルバム『WET DREAM』の2023年リミックス盤。リック本人は08年に亡くなっているが、生誕80年というアニヴァーサリー・リリースでもあるようだ。初CD化されたのは93年。しかし今までずーっとリマスターされておらず、放っておかれた感が強い。今回リミックス盤でアートワークまで一新したのは、イメージ刷新の意図があったのかな? リミックスを手掛けたのは、お馴染みスティーヴン・ウィルソンで、CD、カラー・ヴァイナル、ドルビー・アトモスと5.1chミックス収録のBlu-rayという3種類のフィジカルが発売されている。旧デザインは中に入っているブックレットに。
この時期、『ANIMALS』のツアーを終えたフロイドは、ロジャー・ウォーターズが『THE WALL』のコンセプトを構築している一方で、デヴィッド・ギルモアとリチャード・ライトはそれぞれソロ・アルバムの制作に入っていた。しかもこの両者のソロ作、ジャケットが同じヒプノシスなら、レコーディング・スタジオやエンジニアも同じ。つまり、どちらも好き勝手に作ったソロ作ではなく、グループ活動の一環として計画・管理されていたと思っていい。本作に参加しているギターのスノーウィ・ホワイトは、後年シン・リジーに加入して名を上げるが、この頃はフロイドのツアー・サポートとして活躍。自ずとギルモアの影武者的ポジションを期待され、その役割を充分に、いや期待値以上の貢献を果たしている。サックスは言わずと知れたメル・コリンズ。そしてリズム隊は、ゴンザレスやその周辺のUKセッションメン人脈から。
そのサウンドも、『WISH YOUWERE HERE(炎)』や『ANIMALS』あたりのサウンドを、より叙情的に仕上げた感じ。鍵盤、ソロなどほとんど弾かず、フワーッとしたムード作りに徹するスタイルは、ここでもほとんどそのままだ。淡々と、そしてゆったりと時の流れに身を任せながら、その透明度の中へ溶け込んでしまうような感覚。『THE WALL』、ましてや『THE FINAL CUT』に比べたら、はるかにフロイドらしい音である。当然ロジャーの批評的かつ攻撃的な歌詞の対極にあるが、やっぱり多くのフロイド・ファンにとって一番必要なのは、ギルモアやリックの音作りだと改めて。ちょうどこのタイミングで、ロジャーによる『狂気』の再解釈版『THE DARK SIDE OF THE MOON REDUX』がリリースされたが、サウンドの装飾部分を一切がっさい削ぎ落として、骨と筋しか残っていないような『狂気』もどきは、正直 聴くに絶えないシロモノだった。ロジャーが理想とする『狂気』がコレだったら、あの素晴らしい『US AND THEM』ツアーは何だったのか?と頭を悩ませてしまう。
今回はCDではなく、5.1chミックス入りのBlu-rayをゲットしたが、プログレ系にありがちな飛び道具的サラウンド感はあまり得られず…。でも、たゆたうようなシンセやらキーボードの音の洪水に身を浸す感が強くて、コレはコレで面白いなと。ちなみに<Cat Cruse>は30秒ちょっと、<Waves>は50秒ほどオリジナルより長尺で、それぞれソロ・パートが長いロング・ヴァージョンで収録されている。こういうのが出てくるところが、リマスターではなくリミックスならではのお楽しみだな。
そのサウンドも、『WISH YOUWERE HERE(炎)』や『ANIMALS』あたりのサウンドを、より叙情的に仕上げた感じ。鍵盤、ソロなどほとんど弾かず、フワーッとしたムード作りに徹するスタイルは、ここでもほとんどそのままだ。淡々と、そしてゆったりと時の流れに身を任せながら、その透明度の中へ溶け込んでしまうような感覚。『THE WALL』、ましてや『THE FINAL CUT』に比べたら、はるかにフロイドらしい音である。当然ロジャーの批評的かつ攻撃的な歌詞の対極にあるが、やっぱり多くのフロイド・ファンにとって一番必要なのは、ギルモアやリックの音作りだと改めて。ちょうどこのタイミングで、ロジャーによる『狂気』の再解釈版『THE DARK SIDE OF THE MOON REDUX』がリリースされたが、サウンドの装飾部分を一切がっさい削ぎ落として、骨と筋しか残っていないような『狂気』もどきは、正直 聴くに絶えないシロモノだった。ロジャーが理想とする『狂気』がコレだったら、あの素晴らしい『US AND THEM』ツアーは何だったのか?と頭を悩ませてしまう。
今回はCDではなく、5.1chミックス入りのBlu-rayをゲットしたが、プログレ系にありがちな飛び道具的サラウンド感はあまり得られず…。でも、たゆたうようなシンセやらキーボードの音の洪水に身を浸す感が強くて、コレはコレで面白いなと。ちなみに<Cat Cruse>は30秒ちょっと、<Waves>は50秒ほどオリジナルより長尺で、それぞれソロ・パートが長いロング・ヴァージョンで収録されている。こういうのが出てくるところが、リマスターではなくリミックスならではのお楽しみだな。