kiyoshi sugimoto_ourtime

最近アチコチで話題になることが増えている和ジャズ。文字通りの4ビート系、いわゆるモダン・ジャズやバップ系にはトンと興味が湧かない自分だけれど、そこにロックやソウル、ファンクなどの要素が入ってくると、俄然耳をそばだててしまう。フュージョンというようなカタチの整った音ではなく、実験的要素が強くてまだ混沌としているような、黎明期のクロスオーヴァー・サウンド。それが面白い。1960年からプロ活動を始め、白木秀雄、石川晶、日野皓正らのグループに参加して脚光を浴びた杉本喜代志も、そうしたフィールドで活躍してきたギタリストである。

フュージョン世代のリスナーには、渡辺香津美『TO CHI CA』の後を追うようにマーカス・ミラーやウォーレン・バーンハート (kyd)、オマー・ハキム (ds) と共演した『ONE MORE』(81年)が有名かも。スタジオ・セッションにも引っ張りだこだったが、日野グループ脱退後の73年に渡米して武者修行。1年弱の後に帰国してレコーディングしたのが、この通算6作目のリーダー・アルバム『OUR TIME』だった。

杉本以下の参加メンバーは、村上秀一/石川晶/日野元彦 (ds)、岡沢章/江藤勲/寺川正興 (b)、松木恒秀 (g)、市川英男 (pf)、鈴木宏昌 (pf.kyd)、植松孝夫 (sax)、ラリー須永 (perc)など。このラインナップを見ただけでも、火花が飛ぶようなジャズとロックとファンクの激しい融合が期待できるが、実際オープニングのタイトル曲を聴いて思う浮かべるのは、英国ジャズ・ロックのブランドX。シャリシャリザクザクと空間を切り刻むようなカッティングが特徴的だ。でもコチラは75年の発表。ブランドXのデビューが76年だから、如何に和ジャズが進んでいたかが分かる。13分越えの2曲目<Jones Street>は、ポンタと日野元彦のツイン・ドラム。ファンキーな<Take My Blues>では、ビヨビヨと怪しく唸るシンセサイザーが前時代的だが、今の世代はこういうシンセの使われ方を知らないから、返って斬新に聞こえるのかな? <Quiet Pulse>はコルゲンこと鈴木宏昌作の内省的なスロウ・ナンバー。一転<Marmalade Sky>では、ラテン色強めのグルーヴで。

…とまぁ、ココ20〜30年もの間、ロクに見向きもされなかったこの手の音楽が、今また新鮮に受け入れられているのは嬉しいコト。10年近く前に出たCDはすでに入手困難だし、先月復刻されたアナログ盤でさえ、もう売り切れ間近らしい。気になる方はサブスクでも聴けるゼよ。



kiyoshi sugimoto_ourtimeanalog / Tower Records