hidehiro akamatsu

95年にリリースされた赤松英弘の1st『愛を形にするなら』が、何とも嬉しいサブスクのオフィシャル解禁! この時代にあっては信じがたいほどのシティポップ〜和製AORテイスト全開の1枚で、筆者監修ディスクガイド『Light Mellow 和モノ』では、2013年の増補改訂版はおろか、2004年刊行の初版本からリコメンドしている。04年リリースのコンピ盤『Light Mellow HOURS』にも、<Merry You>というアーバン・ミディアムをセレクトしていたし…。

この赤松英弘は神戸出身のシンガー・ソングライター。大阪でCMやジングルを手掛けていた実力派だ。アニタ・ベイカーに曲を書き、ブラックAORしたソロ作を出していたギャリー・グレンに強い影響を受けたそうだから、それだけで反応するヒトもいるだろう。

参加メンバーも梶原順/土方隆行/北島健司 (g)、高水健司/松原秀樹/渡辺直樹 (b)、沼澤尚 (ds)、佐藤準/倉田信雄 (kyd)、数原晋 (tr)、ジェイク・H・コンセプション (sax) と、その筋の強者ばかり。アレンジをベテラン佐藤準と、現在はYacht Biancoというスムーズ・ジャズ・ユニットを組んでいる遠山無門クン (kyd) が分け合っているが、彼がこんなイイ仕事をしていたとは、会った時には気づかなかった。赤松サンの歌声が、ちょっとジャドーズの藤沢秀樹(=ダンスマン)に似ていて、そこも思わずニヤリ

最近はシティポップの一大ブームもピークを過ぎ、「90年代のシティポップ」なんて括りをよく見かける。でもシティポップ〜リソート・ポップとして生き残ってきたその手の音も、もうその頃には渋谷系やら バンド・ブームやら ガールズ・ポップやらを含むJ-POPのカテゴリーに取り込まれてしまっていて、もう霧散状態だったはず。それを今になって懸命に拾い集め、「90年代のシティポップ」と再構築してみても、ブームを収束させまいと悪あがきしているように見えてしまう。

もちろん、この赤松英弘のように、シティポップの系譜を受け継ぐアーティストは存在したし、その手の楽曲も当たり前のようにあった。でもひとつの流れを形成するには程遠かった、というのが現実。だったら孤軍奮闘していた人たちをそれぞれピックアップした上で、“シティポップは元来ブームとして扱うモノではなく、流行り廃りとは別次元のところで ず〜〜っと存在している”、と主張すべきじゃないかなぁ。

真摯なアーティストの多くは、狙ってシティポップを創っていたワケじゃない。自分が納得する音楽を創ったら、それがシティポップと呼ばれただけだ。赤松英弘の遅かりし登場は、それを証明していた。

ちなみにこのアルバム、以前オンデマンドのCD-Rでは出ていたものの、正規CDやアナログでの復刻は未だ叶わず。次に目指すべきはソコですかネ