robert palmer_some people

せっかく仕事をしていたのに、SNSのAORグループで面白いネタが振られて、思わず反応。それが “ロバート・パーマーの3作目って、ジェフ・ポーカロがキレてるよネ” って話で。確かにこのアルバム、ジェフがクレジットされていて、キレのあるドラムの曲がある。でも実はメンバー・クレジットが曖昧で、どの曲がジェフなのかハッキリしていない。なので、まずはサブスクでサクッと聴き直してみたら、逆にハマッてしまって、CDを出してきて、本気で聴き入ってしまった。

演奏陣の中心は、リトル・フィートからビル・ペイン、ポール・バレアー、リッチー・ヘイワード、サム・クレイトンの4人に、ベースでチャック・レイニー。そこにキャロル・ケイ&スパイダー・ウェブ夫妻、ウィリアム・スミッティ・スミスなど。初期のパーマーはローウェルを中心としたリトル・フィート勢との蜜月で知られるが、このアルバムの頃のローウェルは、もうヤク中で体調を崩しており、イニシアチブはビル・ペインとポール・バレアーに移っていた。それがこの作品にも現れていて。彼らにしてみれば、ココが腕の見せ所と奮起したモノでもあっただろう。モロに<Dixie Chicken>した<Man Smart, Woman Smarter>は、パーマー初の全米ヒット(63位)になった。この曲でスティール・ドラムを使ったことが、翌年<Every Kinda People>の大ヒットに繋がっている。ボトムを叩き出したのは、当然リッチー・ヘイワードだろう。

このアルバムでドラムを叩いているのは、ジェフとリッチー・ヘイワード、そしてスパイダー・ウェブの3人。ウェブだけあまり馴染みがないと思うが、彼はジャズ・ファンク系の黒人セッション・ドラマーで、モータウン・セッションで知られる女性ベーシスト/ギタリスト:キャロル・ケイの旦那である。でもそれほど多くのアルバムに参加していたワケではないので、正直、この人のプレイの特徴はよく把握できていない。それにジェフもまだ22歳。ボズ・スキャッグス『SILK DEGREES』と同じ76年とはいえ、完全にはスタイルが固まっておらず、まだまだ発展途上だったと思われる。しかもフィートのニューオリンズっぽいノリを生かした楽曲が多いから、どの曲がジェフなのか、判別が難しい。個人的には、これならエアプレイの方が遥かに分かりやすいワ、と思っていたアルバムだった。

ジェフのプレイというのは、大体はタメの効いたグルーヴ、フィル・インのパターン、スネアのチューニング、キックの踏み込み、16ビートのハイハット・ワークなどで判断できるけれど、曲調や年代、録音状態等で判別しにくいケースもある。コレもそういうパターン。データ本『ジェフ・ポーカロの(ほぼ)全仕事』では、1曲目<One Last Look>が唯一ジェフ、とされていた。

でも自分の意見は少し違っていて。<One Last Look>に加えて、<What Can You Bring Me>もジェフだと。この曲はアル・マッケイや、片手16ビートを考案したとされる名ドラマー:ジェイムス・ギャドソンが在籍したチャールズ・ライト&ザ・ワッツ・103rd・バンドのカヴァー。作曲者も実はギャドソンだから、ジェフも張り切ってドラムに向かったのではないか。07年にパーマーの9CDボックス『ISLAND YEARS』が出た時も、自分でライナーにそんなことを書いていた。それに、いま改めて聴くと、フィートのカヴァー<Spanish Moon>も、多分ジェフではないかな、と。裏ノリの曲で、メチャクチャにタメの効いているのよ。

この辺り、途中からチャットに加わった某プロ・ミュージシャンたちとも、ほぼほぼ意見の一致を見た。一方で「タイトル曲もジェフでは…?」という声あり…。でもこちらの片手16ビートは、スピード感は抜群なんだけど、ジェフにしてはグルーヴの起伏がなくて平たく聴こえるから、ちょっと微妙かなぁ〜? そういえば、リッチー・ヘイワードの片手16ビートもエラく正確なんだ、という話をどこかで小耳に挟んだ覚えが…。フィートじゃあんまり聴けないけど。

…ってなワケで、SNSのAORグループが数人で結構熱く盛り上がって。SNS上のAORグループっていくつかあるけど、初心者を惑わすような的外れな投稿とか、ケアレス・ミスが目立ったりするグループもある。でも今回のやり取りはみんな楽しかったと思うし、理想的なコミュニケーションのように思えたな。まぁ、自分のようなポジションの人間が割り込むと、煙たがるヒトもいるので、いつもは静観しているんだけど…

なお、この野球拳ジャケは、『SILK DEGREES』やネッド・ドヒニー『HARD CANDY』と同じ写真家モシャ・ブラカの撮影です。



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