mariya_beginning

そぼ降る雪も、グラミー授賞式も関係なく、地味ぃ〜にお仕事。一応 式典は掻い摘んで観ていたけれど、賞レースにはとっくに興味を失っているので、気になるのはゲスト・パフォーマンスと恒例(…と言っていいのかどうか)のトリビュート・コーナー。ブラック・ミュージックの影の立役者クラレンス・エイヴァント追悼でサウンズ・オブ・ブラックネスやジャム&ルイスが出演していたり、ティナ・ターナー追悼でフェンテイジアが熱演したり。パフォーマンスでは、やはりジョニ・ミッチェルとビリー・ジョエルに感心。…と言っても、両人ともこのステージで歌うに至るストーリーにこそ感動のタネがあるワケで、実際のところ、自分自身は結構クールに観ていたのでした。でも思い入れの強い人なら、無条件に感動しちゃうだろうなぁ〜。

さて、原稿書きのために久々に引っ張り出したのは、竹内まりやの78年デビュー作『BEGINNING』。どんな記事かは伏せるが、まぁ、歌声が初々しいこと。当時のまりやは、まだ大学に通う女子大生アイドルといった感じで、カジュアルな親しみやすさが魅力だった。自分は確か、高校の友人がレコードを買ったので、最初はカセットに録音して聴いていた記憶がある。初めてライヴを観たのは、<September>がヒットした頃だったかな。

作曲陣は後の夫:山下達郎、大学時代に参加していたバンドの先輩:杉真理を始め、林哲司、加藤和彦=安井かずみ、細野晴臣=高橋幸宏らが名を連ねる。大貫妙子<突然の贈り物>はカヴァーではなく、ほとんど同時。いわゆるRCA3人娘と呼ばれるレーベルメイトの楽曲だ。レコーディングも3元体制。メイン4曲はL.A.録音で、トム・スコット (sax) リー・リトナー (g) ジム・ケルトナー (ds) マイク・ポーカロ (b) ジョン・ホッブス/ジョン・バーンズ (kyd) らが参加している。それと対をなすのが、箱根でセンチメンタル・シティ・ロマンスと合宿レコーディングした5曲。このうち2曲はセンチ・セッションのアレンジを手掛ける告井延隆の提供で、しかも合宿中に書いたとか。オマケに<すてきなヒットソング>はまりや自身の初オリジナルだ。

これに加えて、加藤提供の2曲は、それぞれ瀬尾一三、鈴木茂のアレンジで、松木恒秀、高水健司、高橋ゲタ夫、高橋幸宏、佐藤準、今井裕、ロバート・ブリル…といった売れっ子セッションメンが参加。かなり豪華なデビュー作となっている。カジュアルで親しみやすい雰囲気を醸し出しているが、実はそれを用意周到に演出した作品。自然体を地で行ってるのは、センチとの箱根セッションぐらいだったのだ。

ただし、まりや嬢自身は、これがデビュー盤だから、言われるまま難しいコトなど考えずに歌っていたという。『LOFT SESSIONS』で2曲歌った経験がある、とはいっても、その時は完全にバイト感覚だったそう。この1作目は、作曲陣の顔ぶれ通りバラエティに飛んでいるから、それが逆に彼女のヴォーカルのキャパシティの広さ、懐の深さを物語るコトになった。

シティポップ全盛期を通り抜けてきた世代からすれば、シティポップが最もシティポップらしかった時期の作品。やっぱり彼女はこの頃から輝いていたな。

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BEGINNING
竹内まりや
アリオラジャパン
2018-11-21

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