chris smith

素晴らしいアルバムを届けてくれているモンキー・ハウスと親交が深い、
カナダ在住の英国人シンガー・ソングライターの秘宝的アルバムをココに。
現在までに4作品を発表しているが、
この95年デビュー盤がまさに珠玉。
ヨット・ロック以前の北米AORシーンにも、
人知れず名盤が産み落とされていた!


サブスクなんかまだなかったゼロ年代から、インディー発信や自主制作のAOR作品を探していた方なら、もしかしてこの人を知っているかも。現在までに『REAL THING』(04年)、『BACK TO YOU』(06年)、『LET THE BALL ROLL』(09年)の3作品をリリース。特に最初の『REAL THING』のデキが良く、マニアの間でちょっと注目されたコトがある。が、少し前にワールドワイドな業界人的AORネットワークで、実はその10年も前に1作目を出していて、それがサイコーだと教えられ…。そのアルバムが、ここに紹介する95年作『ROOM INSIDE MY HEART』だ。

クリス・スミスは89年にRCAカナダからデビューした、レガッタというロック・トリオの中心人物。最初に夢中になったのはビートルズで、70年代にはスティーリー・ダン、ジェイムズ・テイラー、シカゴ、ウェザー・リポート、スティーヴィー・ワンダー、アース・ウインド&ファイアー、サンタナ、マイケル・マクドナルド、ポリスなどに大きな影響を受けた。レガッタは時節柄、Mr.ミスターとスクリッティ・ポリッティを掛け合わせたような、ヒネリの入ったポップ・ロックを展開。プロデュースはカナダと英国を拠点に活動していたギタリスト、デヴィッド・ベンデス。80年代初頭、ベンデス・バンド名義で出したアルバムがあるので、フリークなら御存知かも。だがクリス自身はもっとジャズやR&B寄りのコトがやりたくて、レガッタは解散。その後すぐに作ったのが、このアルバムだった。

そうしたイメージで聴くと、ちょっとニュアンスが異なるけれど、ジックリと歌を聴かせるシンガー・ソングライター・アルバムになっていて…。90年代半ばにコレ、というのは些か地味に過ぎるけれど、時流を追わずに良いモノを作る、というスタンスには大いに好感。だからこそ、こうして25年以上が過ぎて、初のCD復刻が叶ったのだ。しかもソロになってからの彼はエレキ・ギターを持たず、アコースティックのみをプレイしている。そうしたコダワリが、彼のミュージシャン・スピリッツを伝えている。

トロント録音なので、基本的に著名ミュージシャンの参加はない。唯一、スムーズ・ジャズ系のサックス奏者でヴォーカルもイケるウォーレン・ヒルが、2曲でサックスをブロウしている。ウォーレンはデヴィッド・コーズやボニー・ジェームズ、ナジーなどと共に “ポスト・ケニー・G” 的に脚光を浴びたことがあったが、何でも本作プロデューサーのマシュー・ジェラードと音楽学校の同級だったとか。これを機に付き合いが生まれたクリスとウォーレンは、その後も交流を続け、ウォーレンが『REAL THING』にも参加。彼の97年作『SHELTER』では、本作での参加曲<If Your Man Doesn't Treat You Right>をカヴァーしている。

プロデューサーであるマシュー・ジェラードに触れておくと、実はこの人、レガッタでの元バンドメイト。バンド自体は解散しても、音楽作りでは協力関係を維持するという理想的間柄だ。マシューはその後成功を収め、元バックストリート・ボーイズのニック・カター、ヒラリー・ダフ、ジェシカ・シンプソン、ケリー・クラークソン、アヴリル・ラヴィーン、リンジー・ローハンといったポップ・アクトと仕事をしている。その中には松田聖子や倖田來未の名もあり、ディズニー関連など映画のサントラや劇伴系ワークスも多数。近年はサンタモニカにスタジオを構えているようだ。

クリスがモンキー・ハウスの首謀者ドン・ブライトハウプトとの親しくなるのはそのあとのコト。おそらく地元繋がりなのだろう。
「ドンは親友。長年に渡って多くの曲を一緒に書いています。これからもきっとそうしていくでしょうね。私の最後のアルバム『LET THE BALL ROLL』のほとんどは、私とドン、グレッグ・カヴァナーの3人で作曲しています」(クリス・スミス)

その優しい歌声、あったかなメロディに、エヴァーグリーンとはなんぞや、そんなコトを考えさせられる珠玉の一枚。寒風 吹き荒ぶこの時期にも似合います。

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