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5年ぶりとなるボズ・スキャッグス来日公演の初日@東京ドーム・シティ・ホール。前回は自分のスケジュールの都合で足を運べなかったので、個人的には9年ぶり。 でも80年代初頭から両手近くの回数を観ているからか、それほどお久しぶり感はないのだが。タイミングよく編集盤が出て露出を稼いでいるし、SNSでは「初ボズ」なんて方を意外に多く見かけたりして。今回は某音専誌のライヴ・レポートで来ているので、当ブログならではの視点・スタンスで書かせていただく。
(以下ネタバレあり)

90年代以降のボズは、自分のルーツであるブルース(時にジャズも)と、代表作となった76年作『SILK DEGREES』以降のAOR路線の間に軸足を置きながら、バランスを取ってやってきた。が、どちらにも原理主義的ファンがいるもので、いつも必ず幾ばくかの批判に晒される。でもそういう方って、どちらも違うというか、ボズに何を期待しているの?って思うんだな。ブルース3連作のラスト『OUT OF THE BLUE』から数年経過し、70~80年代を総括するような編集盤が出た後の今回のステージは、余計にそれを強く感じた。

つまり、ボズはボズ。ブルースを演っても、AORバラードを歌っても、どちらも彼自身。決してそれはブレているんじゃない。だからサウンドやスタイルに捉われるんじゃなく、ボズの歌そのものを聴け、というコトなのだ。そりゃあ、スラリと姿勢よくカクシャクとした立ち居振る舞いでも、今年80歳になるお爺ちゃんである。地声の平ウタ部分では滑らかに歌えていても、正直ファルセットは厳しくて…。声量がカクンと落ちて、そこだけはヴォーカルが聴き取りづらくなる。以前はそんなコトは感じなかったけどなぁ…。でもゆったり歌うサマは大ベテランらしい風格で、表現は豊かだし、声もおおむね艶やか。だからちょっとぐらいカスれても、パフォーマンス全体には何ら影響はない。むしろそうした、良い意味で “枯れた” ところが、ブルースもAORもシームレスで魅力的に演れてしまうポイントだろう。熱いブルース・フィーリングだったり、カッチリ緻密なAORサウンドを求めるのは、もはやお門違い。自然体で大らかに構えるボズ自身を、観て聴いて下さいよ、ということなのだ。

バック・メンバーは、現在は軽井沢在住のウィリー・ウィークス(b)、かつてジノ・ヴァネリ『NIGHTWALKER』で注目されたマイク・ミラー(g)に、テディ・キャンベル(ds/vo)マイケル・ローガン(kyd/vos)エリック・クリスタル(sax/kyd/g)ブランリィ・メヒアス(per/vo)。いずれも近年のレギュラー・メンバーで、5年前の来日も、去年の全米ツアーも、ほぼこの顔ぶれだった。セットリストも、基本は昨年の全米公演と大きく変わらないものの、日本向けにブルース・ナンバーをバラードに代えている。<Slow Dancer>や『DIG』からの<Thanks to You>はまさにそう。アンコールでギターを置いてジックリ歌ってくれた<We're All Alone>にしたって、日本ではボズ代表曲になっているけれど、去年の全米ツアーでは歌っていない。単なる日本用のサーヴィス曲だという事実は、音楽マニアなら知っておいてイイんじゃないかな。

逆にチョイと残念だったのは、スタッフや関係者に事前に配られたセットリストに入っていたの某曲が、外されてしまったこと。アレ、聴きたかったんだけどな。それでも、なかなかバランスの取れた並びだったと思う。でもライヴでのハイライトはやっぱり、ボズもシッカリとギター・ソロを弾いてくれる<Loan Me a Dime>だわ。

堅実にバッキングに徹していたマイク・ミラーは、案の定<Breakdown Dead Ahead>で前面に。ソロの入りこそスティーヴ・ルカサーのフレーズを使っていたが、そのあとの展開はマイクらしく、フュージョン色の強いトリッキーなフレーズを交えながら。地味ながらエリック・クリスタルのマルチ・プレイも貢献度が高かった。

あと驚いたのはホールの音の良さ。音数が多くないとはいえ、ボズとマイクのギターの弾き分けがチャンとステレオで聴けて、エレピの揺れ感もそのまま表現されている。パーカッションの鳴り物が右から左へ流れて行ったり、奥行き感も見事に定位。何度も来ている東京ドーム・シティ・ホール、“音が良くない”なんて評判も結構耳にしてきたが、何のコトはない、要はPAエンジニアの腕の違いだったようだ。

ボズの最後の来日、なんて噂もあるけれど、間を空けずに新作を作ったりすれば、もう一回ぐらいは期待できる気がするな。

【初日セットリスト】
1. Sierra
2. Miss Riddle
3. Last Tango on 16th Street
4. Jojo
5. The Feeling Is Gone
6. Slow Dancer
7. Rock and Stick
8. Thanks to You
9. It's Over
10. Harbor Lights
11. Look What You've Done to Me
12. Radiator 110
13. Loan Me a Dime
14. Lido Shuffle
-Encore-
15. What Can I Say
16. Lowdown
17. We're All Alone
-Encore 2-
18. Breakdown Dead Ahead

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