essra mohawk_essra

今日も今日とて、筆者監修【Private Stock Original Master Collection 〜Light Mellow編】10作品から、エスラ・モホーク。オンタイムではまったくAORファンの感性にカスリもしなかった女性シンガーだが、90年代のレア・グルーヴ・ムーヴメントで発掘。でも実は、シンディ・ローパーが86年に全米3位に仕立てた<Change Of Heart>が、彼女のペン。それを機にティナ・ターナーやリサ・フィッシャー、ジョー・リン・ターナー、ケヴ・モーらに楽曲提供していた才女なのだ。

元々はフランク・ザッパ率いるマザーズ・オブ・インヴェンションのメンバーで、68年にザッパのレーベル:ビザールから、サンディ・ハーヴィッツ名義でデビュー。その後。バッファロー・スプリングフィールドやバーズ、ポール・バターフィールド・ブルース・バンドらのブレーンで、エレクトラのA&Rを務めるフレイザー・モホーク(本名バリー・フリードマン)と結婚し、カリフォルニアへ。かのウッドストックにも出演予定があったそうで、70年に2作目、74年にトム・セラーズ制作(元ガリヴァー)の3作目を出している。3作目『ESSRA MOHAWK』の方もDJ人気があるようだ。

その後、76年に発表した通算4作目が、この『ESSRA』。アレンジはkyd奏者のソニー・バークで、バックにはエリック・ゲイル(g)、バーナード・パーディー/アンディ・ニューマーク(ds)、リチャード・デイヴィス(b)、ジェレミー・スタイグ(flute) など、ジャズ系の東海岸セッションメンが呼ばれた。かのジェリー・ラガヴォイも関与し、デヴィッド・ラズリー、アーノルド・マッカラーにハーレッツのウラ・ヘドウィグと、コーラス陣も実力派揃い。特に激しいホイッスル・ヴォイスを炸裂させるエスラと共に、ソウルフルなヴォーカル・ワークは本作のひとつの魅力になっている。R&Bシャッフルの
<People Will Talk>では、ラズリーのファルセットも全開。続いての<I Wanna Feel Ya>の疾走感も、相当に強力だ。

ただ、エネルギッシュでかなりの力作なのだが、プライヴェート・ストックの閉鎖もあって、結局不発。その後ジェリー・ガルシアのアルバムに参加したり、ジェファーソン・スターシップからグレース・スリックの後任として声が掛かったり、80年代に入っては地元フィラデルフィアへ戻って、インディ・レーベルでアルバム制作。シンディ・ローパーのヒットが出たのは、そのあとのこと。ゼロ年代以降はナッシュヴィルを拠点にソロ活動を展開していたが、まさにこのリイシューが延期を繰り返していた最中の昨年末に逝去している。解説に加筆するのが間に合わなかったのが、ちょっと残念。
Rest in Peace...

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