tangarine

ナイーヴな感性と甘くメランコリックなサウンドは、
        ヤング・ガン・シルヴァー・フォックス以上。
充分なキャリアを重ねてきたオランダのツインズによる
        70’sスタイルのウエストコースト・サウンド、
ハーモニーの儚い美しさは、
        聴き手をデイ・ドリームの桃源郷へと誘う


Tangerine ではなく Tangarine。呼び方はそのままタンジェリン。英語のマンダリンのスペルミスから命名したというオランダの双子デュオ。AOR系の美声ツインズといえば、真っ先にアレッシーを思い浮かべる方が多いと思うが、彼らの歌声のメロウネスは、それに充分匹敵する。

アーノウトとサンダーのブリンクス兄弟は、オランダではもう10年ほど前から結構な人気を得ていて、国内ツアーは軒並みソールド・アウトになるとか。コロナ前にはオランダ国内で開催される大規模音楽フェスティヴァルに片っ端から出演し、著名ファッション誌では “ベスト・ドレッサー・アーティスト” にも選出されたそうである。

そんな彼らが、コロナ下で家に籠って曲を書き溜め、約5年ぶりに作ったのが、初めて日本リリースとなる『BLANK CASSETTE』。過去作品では、サイモン&ガーファンクルを髣髴させるフォーク・スタイルが身上だった彼らが、このニュー・アルバムでは美しいヴォーカル・ハーモニーとアコースティック・スタイルはそのままに、いきなり米ウエストコースト・サウンド〜ヨット・ロック・スタイルへと斬り込んできた。

「アメリカ、ビー・ジーズ、アル・スチュワートといった僕たちが大好きな多くの米英のアーティストと、オランダでいつも聴いている音楽の組み合わせさ。でもそれに加えて、ツインズとして、ただ2人の人間が歌っているのではなく、2人の兄弟によるユニークなサウンドであることに気づいてほしいと思っているよ」

一番の聴きモノはやはり、途轍もなく耳馴染みが良いメロディと、それを引き立てるヴォーカル&ハーモニー。それが儚く美しい哀愁を運んでくる。その甘酸っぱく、狂おしいほどに切ない魅力は、現行AOR〜ヨット・ロック・シーンを先導するヤング・ガン・シルヴァー・フォックスを軽く凌駕してしまうほど。それでいて、そことコントラストを描くように、軽快なノリのアコースティック・グルーヴも用意され、音作りの幅が広がっていく。13曲も収録されて45分足らず、というコンパクトさ、スピード感も、何となく今っぽい。

手前味噌ながら、昨年秋頃から良盤ばかりを連続リリースしていると自負している【Light Mellow Searches】だけど、コイツはマジでオススメですわ

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ブランク・カセット [監修・解説:金澤寿和(Light Mellow)]
タンジェリン
Pヴァイン・レコード
2024-03-13

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