437857030_934243442039669_1975201777574863227_n

以前から熱心にお誘いいただいてた和久井光司さんのライヴに、ようやく足を運ぶことができた。ほぼ毎月のように出しモノを変えながらステージに立っている和久井さん、今回のライヴは、パール兄弟のギタリストで多くのセッション活動でも知られる窪田晴男さんとの双頭ユニット:東京暮色(くれいろ)。やはり初めて訪れた池袋MONOは、小さいながらもなかなか昭和な風情のあるハコだった。

和久井さんは80年代初頭にスクリーンでデビューしているから、ミュージシャン稼業は40年以上。それでいて、年3〜4冊のペースで音楽書籍を刊行し、レコードコレクターズ誌などでレギュラー執筆を続けている。まずそのヴァイタリティに完敗。パンクの影響が強い方なので、自分とは音楽的な指向性が異なるものの、実は共通する部分も少なからず、と感じていて。例えば氏監修『英国ロックの深い森』は、まさに自分にとってブリティッシュ物の格好の手引書になっているし、『カンタベリー・ロック完全版』やビートルズ関連本、最近出たウィングス本などは、大いに楽しませてもらっている。英国モノや70'sクラシック・ロックに対する知識の深さも然ることながら、物書きとしての目線やスタンスにシンパシーを感じるところが少なくないのだ。ただ自分には、彼のような煽動力や自らが標的になる勇気など、微塵もないのだけれど…

さて、時間になって、まずは和久井・窪田ご両人の前説から。ここで少し前にXで炎上した“ビートルズを語る権利”問題に言及。でも「ゴールド・パーロフォンを持っていないヤツに、ビートルズを語る資格なんかない」という発言、それを真に受ける連中があんなに多いなんて… ウン十万円もする ゴールド・パーロフォンなんて、単なるメタファーでしょ。オレだってそんなモン、持ってネェよ そもそもその発言の真意は、SNSで語り合うなら、もっと中身のある発言したらどう?、ということ。みんなソレを読んで、「この人は何が言いたいの?」って疑わないのかな?  SNSを鵜呑みにしてたら、みんな騙されて財産失くすよ。自分もブログで時々「上から目線だ」って叩かれるけれど、そういう視座はライター稼業にはある程度必要な部分なの。ただし人様と直接 面と向かう時には、謙虚に一般リスナーさんと同じ地平に立つべきであって。だけど某・人気音楽ブロガーでさえ、和久井さんのセリフの行間を全然読めてなかったのは、ちょっと残念すぎたな。最近の音楽メディアの凋落を象徴しているようで…。

こうして「ビートルズの新刊本を売るための炎上商法」なんてひとしきり笑いを取ったところで、両氏が絶賛するシンガー・ソングライター:松浦湊の弾き語りコーナーへ。これがマジ圧巻で… 基本的にはフォーク・ブルースのスタイルだけど、ジョニ・ミッチェルとかローラ・ニーロとかリッキー・リー・ジョーンズ、ニナ・ハーゲン、金延幸子、矢野顕子、吉田美奈子、研ナオコ、清水ミチコ…などが一緒くたになって降臨したみたい。声を震わせて絶唱する様は、ヨーコ・オノが憑依したようだったし、歌詞のブッ飛び具合もサイコーで。彼女、機会があったらまた観たいわ。

そして初めてヴァイオリンを入れたという、新生・東京暮色。自分は初めてだから比較なんてできないけれど、和久井さんらしい批評精神満載のライヴ・パフォーマンスで、いきなりビートルズ<Nowhere Man>の日本語替え歌<野村さん>でスタート。オリジナル曲は知る由もないが、スロウであれアップであれ、思わず身を乗り出しちゃうようなナンバーのオン・パレード。ただ楽しい・面白いだけでなく、ハッとさせられるコトバがアチコチに散りばめられている。ザ・バンド<The Weight>もカヴァーも味があったな。ヴァイオリンが入ったせいか、時折ロキシー・ミュージックっぽいノリを感じたり、バンドでビートルズ<I Will>をチョイスしたり。ヴァイオリンをフィーチャーした分、窪田さんの超絶ギターがバックに廻り気味だったけれど、音楽的には和久井・窪田両氏が牽引しつつ、シッカリとバンド・サウンドになっているところに好感が持てた。Kyd小泉さんも名脇役の職人芸。

終盤は松浦湊が参入し、 彼女のオリジナル<サバの味噌煮 >と<最低ブルース>で、またまた美味しいトコロを持っていく。窪田さんの書き下ろし新曲<Shakin’ a Baby >もご機嫌。そしてラストに彼らのテーマ曲であろう<Tokyo Twilight>、アンコールで3たび登場のビートルズ日本語カヴァー<戦時下のウォルラス(I Am The Walrus)>。もうこのセレクトからして唸らされ…。

帰りしな、和久井さんに初めてご挨拶。やはり、もっと早く観ておくべきだったなぁ。また来ます!

438875753_3219265078208577_3733507075405639293_n
※オフィシャルからチョッと拝借