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ゴールデン・ウィーク突入前夜。今年はあまり仕事が多くなさそうなので、『AOR Light Mellow Premum 03』の準備が一気に進められるな、と思っていたら、4月に入って執筆依頼が続々と…。結果、ここ数年のゴールデン・ウィーク進行で一番忙しい年になってしまった。もちろんメチャありがたいし、これが途絶えたらオマンマ食い上げになってしまうのだが、だからと言って集中しすぎると長いタームで取り掛かっている書籍の方は進められない。あぁ、何とも悩ましいところよ…。

そうした中、仕事がらみで頻繁に聴いていたのが、デイヴ・グルーシンとリー・リトナー共演のニュー・アルバム『BRASIL』。グラミーで最優秀編曲賞を受賞した85年のブラジリアン・フュージョン作『HARLEQUIN』の続編とも言える作品で、あのアルバムに流れていたインテリジェントな香りそのままの、ラテンのパッションをヴェールに包んで穏やかに聴かせる、ノーブルな一枚である。

『HARLEQUIN』はデイヴ・グルーシンとリー・リトナーに加え、イヴァン・リンスが2曲に楽曲提供/ヴォーカルで関わっていたけれど、今回もイヴァンがゲスト参加。ただ今作はブラジルでレコーディングが行われ、参加陣もブラジルのミュージシャン陣で固められている。ヴォーカル曲もすべてポルトガル語。よってライナーノーツはその筋の専門家である中原仁さんがご執筆。自分は宣伝用のコメント(…というには長いが)を寄稿したので、発売前には露出してくるだろう。

イヴァン・リンス以外のゲストは、ブラジルの職人ギタリスト兼プロデューサー:セルソ・フォンセカ、ボブ・ミンツァーやジョイス・モレーノと来日しているシンガー・ソングライター:シコ・ピニェイロ、新進女性ヴォーカリストのタチアナ・パーハ、トゥーツ・シールマンス亡き後を背負うハーモニカの逸材グレゴア・マレと、若干馴染みの薄い顔ぶれ。だがその代わり、収録曲にはミルトン・ナシメント(2曲)やお馴染みアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲<Stone Flower>のカヴァーに加え、クラシカルなグルーシン&リトナー共演作『TWO WORLDS』(00年)からの<Canto Invierno (Winter Song) >のセルフ・リメイクが。ミルトン楽曲<Catavento>も、グルーシンの77年作『ONE OF A KIND』で演っていたモノの再リメイク。リトナーの書き下ろしが2曲あるけど、もう1曲のミルトン・ナンバーも、イヴァンの曲も、セルソ・フォンセカのも、どれも既発曲だ。どうやら、ブラジル音楽を愛し続けてきたグルーシン&リトナーが、お気に入りの曲をオリジネイターと共に新アレンジで聴かせます、という趣旨の作品らしい。さすがのデイヴも今年90歳だから、これが無理のないアルバム作りなのだろう。

このところフュージョンについてアレコレ考えることが多く、その革新性やハイブリッドな面白さに気を取られがちだったけれど、それを鋭角的に斬り取って聴かせるばかりがフュージョンではない。こうして熟れきったイージー・リスニング・スタイルもまた、早くから模索されてきた伝統的な在り方だ。しかもそれを、画一化されたスムーズ・ジャズとは別のカタチで聴かせてくれる。強いアピールやグルーヴなんて必要としない、ベテランならではの手法がココにあるのだ。

発売は輸入盤がCandid Recordsから5月末に。日本盤はポニーキャニオンから6月19日。国内外ともアナログ盤が出る。グレゴア・マレのハーモニカとか、ホントに気持ち良いんだから…

《国内盤CD》
grusin_ritenour brasil amazon メガジャケつき
amazon 通常盤
Tower Records

《国内盤LP》
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amazon 通常盤
Tower Records

《輸入盤》
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amazon / LP
Tower Records / CD
Tower Records / LP

《amazon》
ハーレクイン (SHM-CD)
デイヴ・グルーシン
Universal Music
2023-06-21

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