yuji toriyama_paradise

執筆がらみで鳥山雄司ワークス三昧。今月中旬に発売になるレコードコレクターズ誌の特集【フュージョン・ベスト100 邦楽編】にも登場しそうな鳥山さんだけど、今回はそれとは別。イヤまぁ、自分の中では連動している部分もあるんだけど…。もともとソロ・デビュー時から聴いていたフュージョン・ギタリストで、年齢も1歳しか違わない。ラーセン・フェイトン・バンドと共演した2作目『SILVER SHOES』(82年)なんて、当時はかなり聴き倒したなぁ〜。

それが3作目『YUJI TORIYAMA』で急に打ち込み系に走ってしまい、すごく戸惑った覚えが…。同時期に出た高中正義『CAN I SING?』も打ち込み導入で賛否が割れたが、そこでもサイド・ギターでサポートに付いてて、ツアーにも帯同するようになった。それで「この人、一体何がやりたいんだ?」と。実はそこで鳥山さんがギターのみならず、シンセやドラム・マシーンの打ち込みまで手掛けて、高中のドラスティックな変身の片棒を担いでいたことは、少し後になってから気づくことになる。

それでも鳥山サンの新譜が出るたびに、チェックだけは続けていて。その後ギタリストというよりは、アレンジャー/プロデューサー色を強めて、アイドルから劇伴から手広く手掛け、『世界遺産のテーマ』まで担当する大物にまで出世した。

そのうち、バレアリック方面からのフュージョン再評価が始まって、80〜90年代頃のエクスペリメンタルなフュージョンが注目されることに。そうした中で『YUJI TORIYAMA』(83年)やこの4作目『A TASTE OF PARADAISE』(85年)の人気が高まり、アナログとかが復刻される。そこで改めて聴き直すと、リアルタイムでは全然ピンとこなかったモノが、結構面白く感じられるように。特に『A TASTE OF PARADAISE』は、青山純、伊藤広規、佐藤博、山木秀夫、ペッカー、冨樫春生、シンディ、EVEなど、気心知れた敏腕ミュージシャンを数多く招集しつつ、シンセやプログラムも駆使。ギンギンにハード・エッジなアドリブ・ソロもあれば、ギター・シンセでパット・メセニー風に迫ってみたり、一人パラシュートみたいなアンサンブルを披露したり、一人多重のアンビエントっぽいトラックまで、バラエティに飛んだ音で楽しめた。あの頃も3枚目より4枚目をよく聴いた覚えがあるが、やっぱり昔はそれより『SILVER SHOES』に手が伸びた。でも今は、気分次第でコチラを選ぶコトも多そう。ラーセン・フェイトンに思い入れのない後追い世代だと、確かにコレの方が惹かれるんだろうな。海外編集でバレアリック系の鳥山ベスト盤、みたいなもの出ているし。

いやいや、人間の感覚なんて、変わってないようでいつの間にか変わっているモノ。そして時代の流れを意識して創られた作品でも、シッカリ作り込んであるものは、決して時の流れに押しやられないのだと改めて。

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A Taste of Paradise
鳥山雄司
インディペンデントレーベル
1995-07-20



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YUJI TORIYAMA [Analog]
鳥山雄司
ポニーキャニオン
2020-11-03

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