rydholm safsund
メロディック・ハード系のマニアには相当に人気が高いグランド・イリュージョンのアンダース・リドホルム (b,g,kyd) と、ワーク・オブ・アートやライオンヴィルで歌っていたラーズ・サフサンド (vo) のニュー・プロジェクト、そのデビュー・アルバム『KALEIDOSCOPE』 がかなりイイ出来だ。実は彼ら、既にアート・オヴ・イリュージョン名義によるアルバムを21年にリリースしているが、そちらは王道のメロディック・ハード路線とか(聴いてない…)。でも敢えて名義を変えたのは、それなりの理由がある。早い話がこのプロジェクトはメロハー路線ではなく、ちょっとハードなAOR / ウエストコースト・サウンドを標榜。ジョセフ・ウィリアムスや故ファーギー・フレデリクセン期のTOTOとか、ジェイソン・シェフ期のシカゴとかのファンなら、絶対聴くべし、な音なのだ。

でも日本盤が出る予定は、今のところはないみたい。少なくても、自分が監修する【Light Mellow Searches】では可能性がない。出したいと思って動いてもらっていたが、話がまとまらなかった。交渉ごとだからそういうコトはたまにあるけど、今回は、率直に言って裏切られたような気持ちである。

実は半年以上も前、まだ最初の先行配信シングルが出るかどうかの頃、彼らに近い筋から「新しいプロジェクトのアルバムを日本で出せないか?」と打診があった。が、最初は軽く断った。「自分のシリーズではメロディック・ロックはやらないよ」と。そうしたら、「イヤ、だからこそ頼みたいんだ。このプロジェクトは彼らのキャリアで最もウエストコースト寄りの作品なんだ」と。そしてアルバム全曲のラフ・ミックスが送られてきた。

それを聴いて、コレはとビックリ。サウンドの方向性はもちろん、キャリア組なだけにクオリティが安定していて、印象に残る楽曲が多い。そこで、完成したらすぐレーベル側を動かして交渉させる旨を返答し、スッカリその気になって年を越した。やがてアルバム完成の報が届いたが、そこから先、どうも雲行きがよろしくない。結局アルバムは彼らが自主レーベルでリリース、流通はドイツの新しいレーベルに任されたようだ。こちとら、日本国内だけ流通ライセンスがもらえれば事足りたのだが、どうやらそれも不可らしい。ヲイヲイ、話が違うゼよ

日本でも海外アーティストに関われば、いろいろトラブルはある。契約交渉に関しては直接自分が動くワケじゃないものの、間に立ったり、窓口になったり…。ただ、金額や条件面で折り合えなかったり、コンペで負けるとかなら諦めもつくが、今回は相手側から頼んで来といてコレかよ、と… 作品の内容が良いうえに、従来の国内メロディック・ロック系レーベルとは違うカタチでプッシュできると思っていただけに、かなり残念。2人の過去プロジェクトはシッカリ日本発売があったのに、アッサリ斬り捨てられてしまうほどのセールスしか上げてなかったのか?

全12曲中9曲がアンダース・リドホルムの書き下ろしで、3曲が彼とラーズ・サフサンドの共作。そのうち<What's Not To Love>は、何とジェイ・グレイドンも曲作りに名を連ねている。ただし演奏はナシ。参加メンバーにはステイト・カウズやワーク・オブ・アートのメンバーに加え、ティム・ピアース (g), マット・ビソネット (b) なんて有名どころもチラホラ。更に Light Mellow Searches でご紹介している英ホーン・セクション:ホーン・ハウスのトム・ウォルシュ&ニコル・トムソンと、チャック・フィンドレー&ゲイリー・ハービックらL.A.ホーン隊が参加して、バリバリのブラスを聴かせている。16ビート系のハネるグルーヴの曲もあって、この辺りがメロディック・ロックにはないところだ。

実は「日本盤は出ないんですか?」という問い合わせもいくつか頂戴していたけど、そういうワケで残念ながら…。コレは日本のAORフリークに向けて、ちゃんと紹介したかったな。

rydholm safsund《Tower Records で購入》
《Disk Unionで購入》