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ハーレクインの浪漫、再び。リー・リトナーとデイヴ・グルーシンによる85年発表の名盤『HARLEQUINN』が、約40年の歳月を経て、舞い戻ってきた。楽曲提供・ヴォーカルで貢献した第3の男イヴァン・リンスも、1曲ながらお付き合い。ブラジリアン・フレイヴァー溢れるエレガントでノーブルなコンテンポラリー・ジャズ・サウンドが、ジックリと堪能できる。

このアルバムに関しては、宣材用資料にコメントを寄せた関係で2ヶ月前に一度ポストしているけれど、いよいよ発売が来週19日に迫ってきたので、今一度。しかも筆者の仕事的にも、宣材用コメントから一歩進んで、タワーレコード限定特典用として、新たなライナーノーツを書き下ろした。CD本体にはブラジル音楽専門である中原仁さんのライナーが付いているので、いわばダブル解説。自分のモノは、最近タワー・レコードが始めたデカ・ジャケ特典の裏側に掲載されるそう。デカ・ジャケといえばamazonの専売特許の特典だったが、やはり人気が高いのか、付加価値を高めてタワーでも、というコトらしい。最近amazonのCD通販はいろいろな意味でボロボロになってきてて、相対的にタワーのEコマースへのニーズが高まってきてるらしい。そういう背景があって、攻めの姿勢になっているのだろう。そこに自分がご指名いただいたのは、なんとも光栄なコトだ。

4月のポストとダブってしまうが、もう一度 内容について書いておくと…。

『HARLEQUINN』はL.A.録音だったが、今作はタイトル通りのブラジル録音。リズム・セクションは全員ブラジルのミュージシャンで、カエターノ・ベリーゾやマリーザ・モンチ、渡辺貞夫、坂本龍一などとの共演で鳴らしてきた実力派ばかり。そこにイヴァン・リンスをはじめとするゲスト陣、職人ギタリスト兼プロデューサー:セルソ・フォンセカ、ボブ・ミンツァーやジョイス・モレーノと来日している新鋭のシンガー・ソングライター:シコ・ピニェイロ、サンパウロ出身の新進女性ヴォーカリスト:タチアナ・パーハらが乗っかっている。スイス出身のハーモニカ奏者グレゴア・マレは、ポスト・トゥーツ・シールマンス的存在。

USフュージョンのファンには若干馴染みの薄い顔ぶれながら、収録曲にはアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲<Stone Flower>、グルーシンの77年作『ONE OF A KIND』で演っていたミルトン・ナシメント<Catavento>の再リメイク、オープニング<Cravo E Canela>も、やはりミルトンの70年代初頭の楽曲だ。タチアナとイヴァンが歌う楽曲も、イヴァンの86年作『IVAN LINS』の人気曲<Vitoriosa>のセルフ・カヴァー。クラシカルなエピローグ<Canto Invierno (Winter Song) >にしたって、グルーシン&リトナー共演作『TWO WORLDS』(00年) からのリメイクだ。

つまり、リトナーの書き下ろし2曲を除くと、どれも既発曲ばかりなの。これはどうやら、ブラジル音楽を愛し続けてきたリトナー&グルーシンが再度の共演アルバム制作を決めた際に、「お気に入りのブラジルの楽曲を、オリジネイターと共に新アレンジで聴かせるのはどうだろう?」と、アイディアが浮かんだためらしい。さすがのデイヴ・グルーシンも御年90歳だから、これが無理のないアルバム作りなのだと思う。たとえ強いアピールやグルーヴのないイージー・リスニング・スタイルであっても、百戦錬磨のベテランにしか出せない味がある。



grusin_ritenour brasilTower Records デカジャケ/特典ライナー付きCD

Tower Records デカジャケ/特典ライナー付きLP