昨日に続き、7/3発売のビクター《マスターピース・コレクション》フィーメル・シティポップ名作選5作品から、筆者解説の作品をご紹介。今回は知る人ぞ知る、そして最近のブームで再評価が進行している80'sシンガー、高村亜留の『ARU FIRST』をピックアップ。当時は大して売れなくて、アルバム2枚でシーンから消えてしまったものの、中身はシッカリ充実していて。今だからこそ再評価したい、実力派シンガーだったのだ。
デビューは85年。彫刻家:高村光雲の曽孫、詩人の光太郎は祖父の兄弟という名家の生まれで、高校ではロック・バンドを結成。美大に通う頃にはソウル/R&Bに夢中になり、シックやルーファス、ジョージ・デューク、シェリル・リンなどを歌って、都内ライヴ・スポットに熱狂的ファンを集めていたらしい。そこをビーイングのスタッフに認められ、笹路正徳のサウンド・プロデュースでデビューした。B'z、ZARD、WANDS、大黒摩季などが当たってビーイング黄金期が訪れる前のハナシである。
アートワークを見るとアイドルみたいだが、実は当時23歳。しかもその歌声はかなり低めのアルト・ヴォイスで、年齢よりもずっとオトナの雰囲気を漂わせていた。かくいう自分もオンタイムで耳にしたものの、当時はそのルックスとのギャップに戸惑ったのを覚えている。ビーイングからは亜蘭知子や秋本奈緒美が斬新なサウンドでデビューしていたが、亜留は人気上昇中だったマリーンの路線を狙ったのだろう。ソウル/R&Bとジャズ・フュージョン、AOR/ポップスをミックスしたようなコンテンポラリー・スタイル。そしてその何れもが、笹路や清水靖晃、つまりはマライアがサウンドメイクしていたワケだ。
でも亜留の指向性に合わせたのか、参加メンバーは必ずしもマライアではなく。笹路と土方隆行 (g) 以外は、曲によって伊藤広規=青山純、松原秀樹=長谷部徹、岡沢章=渡嘉敷祐一、富倉安生=青山純とのリズム・セクションを柔軟に使い分けていて。更にコーラスには、マライアに近い村田有美のほか、楠瀬誠志郎の名も見える。そうしたメンツで、オリジナルとして用意された楽曲やカヴァー曲を収めているのだ。
そしてこのカヴァー曲がまたツボで。アルバム・スターターは、山下達郎や吉田美奈子で知られる<LAST STEP>。ご存知の通り、タイトルに違わぬ小洒落たリズムが印象的な好曲である。でも亜留ヴァージョンはテンポを落としたゆったり仕上げ。彼女の歌声の特徴を際立たせる狙いか、まさに名刺がわりの一曲になっている。また<恋のやりとり>は、サザンオールスターズのサポートでもお馴染み、斎藤誠の83年デビュー作『LA LA LU』から。そして意外なところで、土方隆行の初ソロ作『SMASH THE GLASS』(80年) に入っていた<Let's Your Love Grow(ほどけたハート)>を、亜留自身による新たな歌詞で。書き下ろしの注目は、村田和人が提供した<パーティーが終わった後で><ブレーキを踏んで怒って>。そして再評価のキッカケを作った<恋は最高 (I'M IN LOVE)>は、彼女が好きなシェリル・リンの大ヒット<Got To Be Real>と同じスウェイ・ビートを使ったダンス・ナンバーで、伊藤広規・青山純のグルーヴが効いている。
時節柄、大ヒットしていた『FLASHDANCE』『FOOTLOOSE』路線を狙った曲や、チェッカーズを意識したの?、なんてビ―イングらしい狙いすました楽曲もあるけれど、総じて出来は良く、彼女の持ち味であるソウル・フィーリングが生かされている。ちょっとクセのあるアルト・ヴォイスも、慣れてしまれば病みつきで、いつまでも耳に残る。
86年の2作目『TA TA YA MY LOVE ~ARU 2nd.』発表後は、鳴瀬喜博の5作目『SIMULATION』で歌ったりもしていたけれど、いつしか寿引退。14年に若くして子宮頸癌で逝去している。この復刻を含む最近動きには、きっと彼女も空の上で驚いているんだろうな。
アートワークを見るとアイドルみたいだが、実は当時23歳。しかもその歌声はかなり低めのアルト・ヴォイスで、年齢よりもずっとオトナの雰囲気を漂わせていた。かくいう自分もオンタイムで耳にしたものの、当時はそのルックスとのギャップに戸惑ったのを覚えている。ビーイングからは亜蘭知子や秋本奈緒美が斬新なサウンドでデビューしていたが、亜留は人気上昇中だったマリーンの路線を狙ったのだろう。ソウル/R&Bとジャズ・フュージョン、AOR/ポップスをミックスしたようなコンテンポラリー・スタイル。そしてその何れもが、笹路や清水靖晃、つまりはマライアがサウンドメイクしていたワケだ。
でも亜留の指向性に合わせたのか、参加メンバーは必ずしもマライアではなく。笹路と土方隆行 (g) 以外は、曲によって伊藤広規=青山純、松原秀樹=長谷部徹、岡沢章=渡嘉敷祐一、富倉安生=青山純とのリズム・セクションを柔軟に使い分けていて。更にコーラスには、マライアに近い村田有美のほか、楠瀬誠志郎の名も見える。そうしたメンツで、オリジナルとして用意された楽曲やカヴァー曲を収めているのだ。
そしてこのカヴァー曲がまたツボで。アルバム・スターターは、山下達郎や吉田美奈子で知られる<LAST STEP>。ご存知の通り、タイトルに違わぬ小洒落たリズムが印象的な好曲である。でも亜留ヴァージョンはテンポを落としたゆったり仕上げ。彼女の歌声の特徴を際立たせる狙いか、まさに名刺がわりの一曲になっている。また<恋のやりとり>は、サザンオールスターズのサポートでもお馴染み、斎藤誠の83年デビュー作『LA LA LU』から。そして意外なところで、土方隆行の初ソロ作『SMASH THE GLASS』(80年) に入っていた<Let's Your Love Grow(ほどけたハート)>を、亜留自身による新たな歌詞で。書き下ろしの注目は、村田和人が提供した<パーティーが終わった後で><ブレーキを踏んで怒って>。そして再評価のキッカケを作った<恋は最高 (I'M IN LOVE)>は、彼女が好きなシェリル・リンの大ヒット<Got To Be Real>と同じスウェイ・ビートを使ったダンス・ナンバーで、伊藤広規・青山純のグルーヴが効いている。
時節柄、大ヒットしていた『FLASHDANCE』『FOOTLOOSE』路線を狙った曲や、チェッカーズを意識したの?、なんてビ―イングらしい狙いすました楽曲もあるけれど、総じて出来は良く、彼女の持ち味であるソウル・フィーリングが生かされている。ちょっとクセのあるアルト・ヴォイスも、慣れてしまれば病みつきで、いつまでも耳に残る。
86年の2作目『TA TA YA MY LOVE ~ARU 2nd.』発表後は、鳴瀬喜博の5作目『SIMULATION』で歌ったりもしていたけれど、いつしか寿引退。14年に若くして子宮頸癌で逝去している。この復刻を含む最近動きには、きっと彼女も空の上で驚いているんだろうな。
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