daryl hall

トッド・ラングレンとのダブル・ビルでやって来た昨年11月の来日公演の記憶も新しいダリル・ホールのニュー・アルバムが到着。一昨年に『BEFORE AFTER』というデキの良い編集盤があったが、純粋な新録作としては、『LAUGHING DOWN CRYING』以来13年ぶり。唐突にリリースされたと思ったら、アートワークもタイトルも まったくもって愛想ナシ。それでも今のUSの音楽市場を考えたら、CDを出してくれるだけイイのか…と。

プロデュースは、以前もコンビを組んでいたユーリズミックスのデイヴ・スチュワート。曲作りも演奏もほとんどダリルとデイヴ・スチュワートが2人で賄っていて、1曲だけホール&オーツ・ファンにはお馴染みの名物サックス奏者チャーリー・デシャントが参加している。でも、より興味深いのは、ダーレル・フリーマンという男が弾くシンセ・ベースで。まるで70年代のような、ウネウネと蠢くような音色で、往年のスティーヴィー・ワンダー、もしくはスティーヴ・ウィンウッドあたりを髣髴させる。当時だったらきっとミニ・モーグを使ってただろうけど、今だったら何なのかな? もしかしてショーン・リー(ヤング・ガン・シルヴァー・フォックス)みたいに、ヴィンテージ・シンセだったりして。

しかも、それがほぼすべての曲のベース・ラインを担っている。…というコトは、ダリルはそういうバック・トゥ・ベーシック的なコトがやりたかったのだな、きっと。考えてみれば、Live At Daryl's Houseなんてアタリ企画も、そういう彼の指向性の現れではなかったか。シーンのトップランナーたちが同期に頼ってエンターテインメントに走るのとは裏腹に、オレたちゃ地味に生演奏にこだわるよ、というスタンスだ。

現にこの新作も、2020年代半ばに生まれた新作なのに、まるで50年前の作品のよう。自ずとアレンジもシンプルで、80年代に大ヒットを連発したホール&オーツとはまるで別物だ。でもダリルのヴォーカルはむしろ若々しく、それでいて味わい深さも兼ね備えている。初期プリンスみたいな曲もあるな。一聴しただけでは地味で取っつきにくいが、聴き込んでいくとジワジワ馴染んでくるタイプのアルバムだ。全9曲で35分足らず、というのも、完全にアナログ対応。時代がひと回りふた回りして、それが今の旬なのだと、ダリルはよ〜く分かっている。だとすれば、 ホントはCDではなくLPをゲットすべきかも? レーベルは再興されたヴァージンだけど、現時点でユニバーサル・ジャパンは国内盤を出す予定はなさそうだ

ジョン・オーツとの確執も最近の話題だけれど、ジョンも同じようなタイミングで新作を出す。彼の最近の指向もルーツ回帰で、アメリカーナだったり、アシッド・フォークだったり、オルタナ・カントリーだったり。何だかんだ言っても、やっぱり彼らは似た者同士なのだ、と改めて。

《amazon》
D
Daryl Hall
VMG
2024-06-21

《Tower Records はココから》

《amazon》
D [12 inch Analog]
Daryl Hall
VMG
2024-06-21

《Tower Records はココから》