david dissg_streetshadowdavid diggs_realworlddavid diggs_westcoastal

筆者監修【Light Mellow Searches】シリーズの次回発売は、久々のリイシュー物でデヴィッド・ディッグスの代表作3枚。かつてはクインシー・ジョーンズにバンド・アレンジを任され、ブラザーズ・ジョンソンやヒート、リッチー・フューレイ、和モノでは大村憲司『KENJI SHCOK』に参加したこともあった。でも実際はキーボードだけでなく、ギターもドラムもプレイできるマルチ・プレイヤー。 CCM (Contemporary Christia Music) 系のプロデュース及びアレンジでの活躍が多く、ブライアン・ダンカンが在籍したスウィート・コンフォート・バンド、ヴォーカル・グループのウイングス・オブ・ライト、それにボブ・ベイリー、ドン・トーマスといった都会派ゴスペル・シンガーなをど手掛けている。

初リーダー作も73年からと早く、現在までに十数作。特に AORやフュージョン人気が高かった80年代は日本リリースもあって、デヴィッド・フォスターの後継者の一人と目されたりした。今回復刻される『REALWORLD』(83年) 『STREETSHADOWS』(85年)はまさにその頃の作品だし、99年発売の編集盤『WESTCOASTAL』も、80年代前半〜中盤頃の未発表音源集である。

83年発表『REALWORLD』は、ディッグス通算5枚目のソロ作にして本邦デビュー作。当時のジャケは見目鮮やかな夕陽のフォトに差し替えられ、邦題もアルバム1曲目にちなんで『ジェントル・ソウツ』。もちろんそれはリー・リトナーがバンド名に掲げたハービー・ハンコックの76年作『SECRETS』からのアレである。他にも70年代から親交が深いシーウインドの<Window Of A Child>、リッチー・フューレイのバンドで共演したことがあるレオン・ラッセル<Bluebird>、そのフューレイとの共作曲<Come On>の再録版など、興味深いカヴァーが目白押し。<The Red Baloon>も、74年のビッグ・バンド・アルバム『SUPERCOOK!』からの再演だ。

<Come On>で強力なリード・ヴォーカルを聴かせるのは、97年に<Butterfly Kiss>の全米No.1ヒットを放ったボブ・カーライル。彼は70年代からディッグスが主導するCCMグループ:グッド・ニュースのメンバーだった逸材で、当時はまだ10代半ばだった。彼のヴォーカルはもう1曲、アース・ウインド&ファイアーへのオマージュという<Welcome To The Real World>でも聴くことができる。ディッグスの70年代のリーダー作は弱小ローカル・レーベルからの発売だったが、今度は新興ながら全米規模の流通が期待できるフュージョン・レーベルから。そうした意味で、それまでの自分のキャリアを集大成した上で再出発、という意味が込められていたのかもしれない。

85年作『STREETSHADOWS』は、日本ではジャケ差し替えどころか、アーティスト名まで消されてしまい、L.A.ザ・セッション VOL.2『ミント・サマー』なる雰囲気モノの企画シリーズ的の体(てい)でリリース(VOL.1はポウリーニョ・ダ・コスタ『SUNRISE』)。グレーゾーンに訴求する当時の狙いの是非はともかく、作品的には『REALWORLD』の延長と言える。ボブ・カーライルのヴォーカルも4曲にフィーチャー。ラストの<Dancing With His Shadow>では、レーベルメイトになった若き日のダイアン・リーヴスが歌っている。またリチャード・ペイジ=スティーヴ・ジョージ=ジョン・ラング、リック・リソーらが楽曲提供しているのも注目。スターター<Last Night>は、ブラザーズ・ジョンソンの兄ジョージとのコラボレイトだ。アルバムの特徴としては、ホーン・セクションやストリングスが入らず、一部にプログラミングが使われたのが新しいところ。でも元々がマルチ・ミュージシャンのディッグスだから、そちらへ向かって行くのは必然的だろう。

参加メンバーは、『REALWORLD』がポール・ジャクソンJr.(g), ラリー・ウィリアムス (kyd), エド・グリーン/ アート・ロドリゲス(ds), ケン・ワイルド / レオン・ガイア (b), ジェリー・ヘイ (tr), デヴィッド・ボラフ(sax) など。『STREETSHADOWS』ではポール・ジャクソンJr.が連続参加した他、リー・リトナー (g) , ハーヴィー・メイスン (ds), ルイス・ジョンソン/ エディ・ワトキンスJr. (b), アーニー・ワッツ / ジョージ・ハワード (sax)。

そこから99年の『WESTCOASTAL』までに中4作。うち2作は元AORシンガーの故ロジャー・ヴードリスが興したニューエイジ系レーベル:Artful Balance発だったりするが、当然のこと、ジャズ・チャートでも好評だった『REALWORLD』『STREETSHADOWS』には遠く及ばず。結果、今回が初復刻の『WESTCOASTAL』に至る。コチラの注目は、イエロージャケッツがボビー・コールドウェルをゲストに発表した<Lonely Weekend>のカヴァー、『STREETSHADOWS』でボブ・カーライルが歌った<Framed>のリメイクでボブ・ベイリーが歌っている<Framed By Love>、ディッグスと恩人パット・ブーン共作でカーライルとリック・リソーという人気CCMシンガーのダブル・キャストに拠る<Backbone>、やはりカーライルが歌うシーウインドの人気曲<Light The Light>あたりか。スーザン・アントンが81年に歌っていた<Love Won't Always Pass You By>も、ゼロ年代以降再評価が進むミネアポリスのシンガー・ソングライター:ジェフ・ハリントン作で、改めて注目したい。

ちなみに、このボーナス曲のラストに追加された<When February Turned Blue>は、これが初出となる新曲。こういうトコロにこだわるスタンスが、やっぱり職人なんだよなぁ。発売は来週 7/10。いずれも紙ジャケット仕様、ボーナス・トラック追加です。

《amazon》
リアルワールド [監修・解説:金澤寿和(Light Mellow)] [紙ジャケット仕様]
デヴィッド・ディグス
Pヴァイン・レコード
2024-07-10

《Tower Records はココから》

《amazon》

《Tower Records はココから》

《amazon》

《Tower Records はココから》