5月に亡くなったデヴィッド・サンボーンの追悼特集にちなんで、代表作レビューを某音専誌に寄稿。そこでいろいろサンボーンの旧作を聴き直した。以前から書いてきたように、自分は84年のジャパン・ツアー(with マーカス・ミラー、ハイラム・ブロック、ドン・クロルニック、バディ・ウィリアムス)の衝撃が強すぎて、サンボーンを聴こうとすると、半ば反射的に80年代のアルバムに手が伸びてしまう。でも今回、ちょっと見直したのがこの92年作『UPFRONT』だった。
プロデュースは80年代を共に歩き、絶好調のコンビネーションを築いていたマーカス・ミラー。それでも前々作『A CHANGE OF HEART』あたりが、ひとつの区切りというか、それまでの集大成のようなポジションだったのだろう。マーカスとのコンはそのままに、それまでのスタイリッシュな都市型フュージョン・サウンドから一転、シンプルでR&Bに寄った、ゴリゴリのファンキー・スタイルを追求したアルバムだ。
収録曲も9曲中6曲がマーカス絡みの作・共作。うち3曲がサンボーンとの共作で、単独作が2曲。残る1曲はサンボーン、マーカス、リッキー・ピーターソン、スティーヴ・ジョーダン、そしてギターのウィリアム・パターソンという、このアルバムの中核メンバーたちの共作になる。<Bang Bang>はラテン・ブーガルの巨匠ジョー・キューバの代表曲で、ディジー・ガレスピーやカル・ジェイダー、レス・マッキャンなども演っているパーティー・チューン。<Soul Serenade>は多くのカヴァーがあるキング・カーティスのソウル・ジャズ名曲。そしてラストの<Rumblin'>はオーネット・コールマン作。
こうしたセレクトからも分かるように、80年代サンボーンに比べて相当にドロ臭い。それこそマーカスはスラップを半ば封印し、指弾きでブイブイとベースを鳴らす。リッキー・ピーターソンもハモンド・オルガン全開。スティーヴ・ジョーダンももう昔のフュージョン・ドラマー ではなく、最近ローリング・ストーンズのツアーで叩いているような、スッコンスッコンのヒップなグルーヴを提供する。このあたりが『UPFRONT』最大の特徴だ。
他にもドン・アライアス/ナナ・ヴァスコンセロス (perc) とか、<Soul Serenade>にはコーネル・デュプリーとリチャード・ティー、アップタウン・ホーンズが入る。<Bang Bang>もレニー・ピケットらの6管入り。<Full House>でエリック・クラプトンがギター・ソロを弾いているのが話題になった。
でも新作として聴いた当時は、そのR&B臭さに、今ひとつ納得が行かなかった。カッコイイんだけど、あんなにバリバリの都会派フュージョンを演っていたサンボーンが、今更こんなルーラルなファンクを演らなくても…、そう思っていた。でも改めて彼のキャリアを俯瞰してみると、このアルバムはサンボーンにとって言わばルーツ回帰。そう、サンボーンってポール・バターフィールド・ブルース・バンド出身だったじゃん、と思い出すのだ。それを頭に止めて改めて聴くと、このアルバムでのサンボーンのプレイが、従来より熱気を帯びてエモーショナルに迫ってくる。きっと彼は、こういうシンプルながらも本気でエモいプレイから離れていた自分に気づき、取り戻そうとしたのだ。そして何故にサンボーンが歌モノの曲で泣きの本領を発揮するのか、その辺りが肌感覚で理解できると思う。
自分のように、80年代サウンドにまみれたサンボーンに目眩しを喰らってしまっていた方、是非再チェックを。
収録曲も9曲中6曲がマーカス絡みの作・共作。うち3曲がサンボーンとの共作で、単独作が2曲。残る1曲はサンボーン、マーカス、リッキー・ピーターソン、スティーヴ・ジョーダン、そしてギターのウィリアム・パターソンという、このアルバムの中核メンバーたちの共作になる。<Bang Bang>はラテン・ブーガルの巨匠ジョー・キューバの代表曲で、ディジー・ガレスピーやカル・ジェイダー、レス・マッキャンなども演っているパーティー・チューン。<Soul Serenade>は多くのカヴァーがあるキング・カーティスのソウル・ジャズ名曲。そしてラストの<Rumblin'>はオーネット・コールマン作。
こうしたセレクトからも分かるように、80年代サンボーンに比べて相当にドロ臭い。それこそマーカスはスラップを半ば封印し、指弾きでブイブイとベースを鳴らす。リッキー・ピーターソンもハモンド・オルガン全開。スティーヴ・ジョーダンももう昔のフュージョン・ドラマー ではなく、最近ローリング・ストーンズのツアーで叩いているような、スッコンスッコンのヒップなグルーヴを提供する。このあたりが『UPFRONT』最大の特徴だ。
他にもドン・アライアス/ナナ・ヴァスコンセロス (perc) とか、<Soul Serenade>にはコーネル・デュプリーとリチャード・ティー、アップタウン・ホーンズが入る。<Bang Bang>もレニー・ピケットらの6管入り。<Full House>でエリック・クラプトンがギター・ソロを弾いているのが話題になった。
でも新作として聴いた当時は、そのR&B臭さに、今ひとつ納得が行かなかった。カッコイイんだけど、あんなにバリバリの都会派フュージョンを演っていたサンボーンが、今更こんなルーラルなファンクを演らなくても…、そう思っていた。でも改めて彼のキャリアを俯瞰してみると、このアルバムはサンボーンにとって言わばルーツ回帰。そう、サンボーンってポール・バターフィールド・ブルース・バンド出身だったじゃん、と思い出すのだ。それを頭に止めて改めて聴くと、このアルバムでのサンボーンのプレイが、従来より熱気を帯びてエモーショナルに迫ってくる。きっと彼は、こういうシンプルながらも本気でエモいプレイから離れていた自分に気づき、取り戻そうとしたのだ。そして何故にサンボーンが歌モノの曲で泣きの本領を発揮するのか、その辺りが肌感覚で理解できると思う。
自分のように、80年代サウンドにまみれたサンボーンに目眩しを喰らってしまっていた方、是非再チェックを。