パリ五輪開幕。最近はスポーツ観戦なんてほとんどせず、新聞やニュースで結果を知る程度なので、オリンピックにも大して興味はないのだが、開会式はエンターテメントとしてチョッと観たいと、TVのダイジェストで。雨に祟られたとはいえ、船上パレードとか気球を使った聖火台など、アイディアが斬新。それでいて新しいハコモノは作らず、既存の競技場や施設を再利用しているのが素晴らしい。そこが東京五輪との大きな違い。結局ハコモノを作らないと、利権が大きく回せないというコトなんだろう。国際色の豊かさは五輪の理念から言って当たり前のコトだけれど、聖火ランナーに昔の著名オリンピアンを国籍問わず並べたところなど、フランス人の文化的水準の高さ、寛容力の大きさを感じる。
そして開会式のハイライト、聖火点灯の直後にエッフェル塔のステージに現れたのが、歌姫セリーヌ・ディオン。神経系の難病スティッフパーソン症候群と診断され、度々襲ってくる激痛と筋痙攣と闘うため、2022年暮れから活動を休止していた彼女が、この大舞台で復活を遂げたのだ。そしてエディット・ピアフの名曲<愛の讃歌>をシッカリ熱唱し、大きな感動を呼び起こして開会式を締めくくった。
彼女は今年のグラミー受賞式にプレゼンターとしてサプライズ出演してシーンを湧かせ、現在は『I AM(アイ・アム セリーヌ・ディオン) 〜病との闘いの中で〜』というドキュメンタリーをamazon Primeで配信スタートしたところ。このパリ五輪開会式への出演も事前の公式情報はなく、パリに現れたセリーヌに遭遇した一般市民が、「もしかしたら開会式で歌うのでは?」とSNSに投稿し、急速に噂が広まった。同じようにレディ・ガガの出演も噂され、これも実現しているが、その扱いの差は格の大きさを見せつけた感がある。まぁ、セリーヌは元々フランス系カナダ人で、カナダ国内の仏語圏でデビュー。デヴィッド・フォスターに見出されてワールドワイド・デビューした時には、まだ英語を満足に話せなかった、という経緯があるが。
圧倒的な歌唱力で瞬く間にスーパー・スターに駆け上がったセリーヌ。でも自分は未だに初々しかった頃の彼女、90年の世界デビュー盤『UNISON』こそが一番のデキだと思っている。一般的な彼女の一番の売りは、その表現力を生かした壮大なバラード。でもそれが自分にはあまりに完璧すぎて、予定調和の最たるものに思えてしまう。バラードはある意味ブルースと同じで、感情表現のカタマリだ。だったら、気持ちが高ぶって声が少しシャープしてしまってしまったり、逆にカスレてしまっても、全然OKだと思うし、その方が返って心情が伝わりやすかったりする。ポップスやロックには、しわがれ声の美学だってあるし。でも彼女のパーフェクトな歌唱、歌声のゆらぎの無さは、まるで造形物のように感じられてしまうのだ、自分には。ファンの皆さま、どうもスミマセン…
だけどこの『UNISON』には、いい意味でまだ手探りの感がある。バラードとポップ・チューンが良い按配で混在していて、セリーヌの可能性を広く模索しているのだ。だからプロデューサーも、デヴィッド・フォスターだけでなく、シーナ・イーストンやマイク+ザ・メカニクスを成功させた英国のポップ職人クリストファー・ニールとアルバムを分け合う形。しかもそのうち2曲はポール・ブリスの提供、1曲はブロック・ウォルシュとフィル・ゴールドストン(元ファー・クライ)の共作と、AORファンにはお馴染みの陣容だ。そしてもう1曲にはポール・マッカートニー・バンドの重鎮ウィックスが中心にいる。
一方 フォスター制作曲は、トム・キーン(共同プロデュース2曲)、クリフ・マグネス、ランディ・カーバー、ロビー・ブキャナンらとの仕事が多く、若手のセンスを導入している感じ。うち2曲は後年のセリーヌからは考えられないようなポップ・ロック・チューンとダンス・ポップで、共にマイケル・ランドウのシャープなギター・ソロが炸裂する。他にも故ジェフ・ポーカロやポール・ジャクソンJr.、ポインター・シスターズのルース・ポインターらが参加。1曲だけセリーヌと同じカナダ・ケベック州出身のロッカー:アルド・ノヴァが作編曲で参加しているのも、母国を大事するフォスターらしい差配だ。
なおタイトル曲<Unison>はアンディ・ゴールドマーク制作で、彼とブルース・ロバーツという職人ソングライター同士がチームを組んで書いている。早くもヴォイス・パーカッションを使い、バック・ヴォーカルにはフォンジ・ソーントンという意外な布陣にも驚くが、当時はそうしたダンス・ポップが隆盛の時代でもあった。
何れにせよ、こういう多彩さ、ヴァラエティ感が、自分にとっての初期セリーヌの魅力。でもそこから急速にバラード色を強め、スター街道を駆け上っていった。そしてこの世界デビュー盤で、むしろクリストファー・ニール制作のポップ・チューンに愛着があった自分は、すっかり置いてけぼりになった。まぁ、それはそれでイイけれど…
とにかく、セリーヌが紆余曲折や苦しい時期を経て、こうして五輪開会式で世界を感動させる歌が歌えるようになったのはメデタイ。これを機にラスヴェガス長期公演やワールド・ツアーが組まれるのか、それとも、もうしばらくは単発的なコンサートやゲスト出演に止まるのか、そこは現時点では分からない。でもドキュメンタリー公開に合わせてベスト盤も出るようだから、素直にその復活劇を見守っていきたい。
「アイ・アム セリーヌ・ディオン 〜病との闘いの中で〜」予告編
《amazon》
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《Tower Records はココから》
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《Tower Records はココから》
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彼女は今年のグラミー受賞式にプレゼンターとしてサプライズ出演してシーンを湧かせ、現在は『I AM(アイ・アム セリーヌ・ディオン) 〜病との闘いの中で〜』というドキュメンタリーをamazon Primeで配信スタートしたところ。このパリ五輪開会式への出演も事前の公式情報はなく、パリに現れたセリーヌに遭遇した一般市民が、「もしかしたら開会式で歌うのでは?」とSNSに投稿し、急速に噂が広まった。同じようにレディ・ガガの出演も噂され、これも実現しているが、その扱いの差は格の大きさを見せつけた感がある。まぁ、セリーヌは元々フランス系カナダ人で、カナダ国内の仏語圏でデビュー。デヴィッド・フォスターに見出されてワールドワイド・デビューした時には、まだ英語を満足に話せなかった、という経緯があるが。
圧倒的な歌唱力で瞬く間にスーパー・スターに駆け上がったセリーヌ。でも自分は未だに初々しかった頃の彼女、90年の世界デビュー盤『UNISON』こそが一番のデキだと思っている。一般的な彼女の一番の売りは、その表現力を生かした壮大なバラード。でもそれが自分にはあまりに完璧すぎて、予定調和の最たるものに思えてしまう。バラードはある意味ブルースと同じで、感情表現のカタマリだ。だったら、気持ちが高ぶって声が少しシャープしてしまってしまったり、逆にカスレてしまっても、全然OKだと思うし、その方が返って心情が伝わりやすかったりする。ポップスやロックには、しわがれ声の美学だってあるし。でも彼女のパーフェクトな歌唱、歌声のゆらぎの無さは、まるで造形物のように感じられてしまうのだ、自分には。ファンの皆さま、どうもスミマセン…
だけどこの『UNISON』には、いい意味でまだ手探りの感がある。バラードとポップ・チューンが良い按配で混在していて、セリーヌの可能性を広く模索しているのだ。だからプロデューサーも、デヴィッド・フォスターだけでなく、シーナ・イーストンやマイク+ザ・メカニクスを成功させた英国のポップ職人クリストファー・ニールとアルバムを分け合う形。しかもそのうち2曲はポール・ブリスの提供、1曲はブロック・ウォルシュとフィル・ゴールドストン(元ファー・クライ)の共作と、AORファンにはお馴染みの陣容だ。そしてもう1曲にはポール・マッカートニー・バンドの重鎮ウィックスが中心にいる。
一方 フォスター制作曲は、トム・キーン(共同プロデュース2曲)、クリフ・マグネス、ランディ・カーバー、ロビー・ブキャナンらとの仕事が多く、若手のセンスを導入している感じ。うち2曲は後年のセリーヌからは考えられないようなポップ・ロック・チューンとダンス・ポップで、共にマイケル・ランドウのシャープなギター・ソロが炸裂する。他にも故ジェフ・ポーカロやポール・ジャクソンJr.、ポインター・シスターズのルース・ポインターらが参加。1曲だけセリーヌと同じカナダ・ケベック州出身のロッカー:アルド・ノヴァが作編曲で参加しているのも、母国を大事するフォスターらしい差配だ。
なおタイトル曲<Unison>はアンディ・ゴールドマーク制作で、彼とブルース・ロバーツという職人ソングライター同士がチームを組んで書いている。早くもヴォイス・パーカッションを使い、バック・ヴォーカルにはフォンジ・ソーントンという意外な布陣にも驚くが、当時はそうしたダンス・ポップが隆盛の時代でもあった。
何れにせよ、こういう多彩さ、ヴァラエティ感が、自分にとっての初期セリーヌの魅力。でもそこから急速にバラード色を強め、スター街道を駆け上っていった。そしてこの世界デビュー盤で、むしろクリストファー・ニール制作のポップ・チューンに愛着があった自分は、すっかり置いてけぼりになった。まぁ、それはそれでイイけれど…
とにかく、セリーヌが紆余曲折や苦しい時期を経て、こうして五輪開会式で世界を感動させる歌が歌えるようになったのはメデタイ。これを機にラスヴェガス長期公演やワールド・ツアーが組まれるのか、それとも、もうしばらくは単発的なコンサートやゲスト出演に止まるのか、そこは現時点では分からない。でもドキュメンタリー公開に合わせてベスト盤も出るようだから、素直にその復活劇を見守っていきたい。
「アイ・アム セリーヌ・ディオン 〜病との闘いの中で〜」予告編
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《Tower Records はココから》
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Celine Dion
Sony Music Canada
2024-08-09
《Tower Records はココから》