ギタリスト作品に特化したヨーロッパのレーベルと契約していたためか、ここ2作ほどは日本リリースから遠ざかっていたジョージ・ベンソン。聞くところでは、最近になって古巣ワーナーへ復帰。その手始めとして、まずはお蔵入りしていた未発表音源を世に出すことになったらしい。それが89年にレコーディングしていたロバート・ファーノン・オーケストラとの共演アルバム。その実現を祝ってか、アルバムは『DREAMS DO COME TRUE』と名付けられた。
ロバート・ファーノンはカナダ生まれの作編曲家で、1940年代のパーシー・フェイス・オーケストラで首席トランペッターを務めていたそう。その後USへ拠点を移し、映画音楽やTVドラマの音楽などで活躍した。ライト・ミュージック、すなわちイージー・リスニング方面ではそれなりに知られているらしく、ベンソンはクインシー・ジョーンズからファーノンの存在を聞き、当時は英国在住だったファーノンと知己を得たそうだ。
アルバムは名エンジニア:アル・シュミットの手に拠り、89年に録音された。が、この頃のベンソンはスタンダードづいていて。『DREAMS DO COME TRUE』の正確な録音時期が分からないが、同年7〜8月にはトミー・リピューマ制作によるスタンダード・アルバム『TENDERLY』をリリースしていて、これをジャズ・チャート首位に立たせている。それもあって、リリース時期を模索していたのだろう。ところが、ライナーノーツによるところでは、その録音テープが所在不明になってしまったとか。
何だか、普通はあり得ないような話なので、何らかの事情でお蔵入りさせることになり、そのためにでっち上げたストーリーなのではないかと推察する。現に90年に出したカウント・ベイシー・オーケストラとの共演盤『BIG BOSS BAND』には、このファーノン・オーケストラとの録音から1曲、流用されているのだ。要するに、マスターテープは紛失なんかしてない、ということ。勝手に展開を考えると、ファーノン・オーケストラとのレコーディング後にベイシー・オーケストラとの共演話が持ち上がり、そちらの方が話題性が高いと判断。そちらを優先リリースさせたのだと思う。ただ、お気に入りの曲のお蔵入りは忍びなく、『BIG BOSS BAND』に混ぜ込むカタチで世に出したのではないか。そしてファーノン・セッションをアルバム化するタイミングを見失ったまま、ベンソンはGRPへ移籍してしまった。今回ワーナーに復帰して、最初にコレに手をつけたというコトは、ベンソン自身、きっとこのアルバムのことが心残りだったのだろう。
演っているのは、<At Last><My Romance><Autumn Leaves><Can't We Be Friends><My Prayer>などの定番スタンダードに加え、ビートルズ<Yesterday>、レオン・ラッセル<A Song for You>、ポール・モールアやジェフ・ベックでも知られる<Love Is Blue(恋は水色)>といったポップ・スタンダードなど、全11曲。アーカイヴ音源に手を加える際、ベンソンの参謀役となったのはランディ・ウォルドマン。彼のピアノや鍵盤に加え、曲によってティム・メイやマイケル・オニールのギター、ヴィニー・カリウタのドラムなどが追加されている。バック・コーラスには、クリス・ウォーカー、元チャプター8のリン・フィッドモント、日本ではソロ作でも知られるジェイニー・クルーワーなど。もちろんベンソンは要所要所でギターも手にし、十八番のスキャット・ユニゾンも飛び出す。
音楽業界全体が急速にシュリンクしている中、こんなゴージャスなアルバムを新録することなど、あまり現実的ではない。ベンソンだって既に80歳代だから、寄る年波もあろう。だったら寝ている音源を有効に、というのは当然の流れ。仮にカネと労力を注ぎ込んでも、ファーノンもアル・シュミットも、更にトミー・リピューマも逝ってしまった今、これだけの作品を創れるかどうかは分からない。そう考えれば、70,80,90年代に創られた音楽の価値、そして今の音楽シーン及び業界の停滞が明らかになるというものだ。
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アルバムは名エンジニア:アル・シュミットの手に拠り、89年に録音された。が、この頃のベンソンはスタンダードづいていて。『DREAMS DO COME TRUE』の正確な録音時期が分からないが、同年7〜8月にはトミー・リピューマ制作によるスタンダード・アルバム『TENDERLY』をリリースしていて、これをジャズ・チャート首位に立たせている。それもあって、リリース時期を模索していたのだろう。ところが、ライナーノーツによるところでは、その録音テープが所在不明になってしまったとか。
何だか、普通はあり得ないような話なので、何らかの事情でお蔵入りさせることになり、そのためにでっち上げたストーリーなのではないかと推察する。現に90年に出したカウント・ベイシー・オーケストラとの共演盤『BIG BOSS BAND』には、このファーノン・オーケストラとの録音から1曲、流用されているのだ。要するに、マスターテープは紛失なんかしてない、ということ。勝手に展開を考えると、ファーノン・オーケストラとのレコーディング後にベイシー・オーケストラとの共演話が持ち上がり、そちらの方が話題性が高いと判断。そちらを優先リリースさせたのだと思う。ただ、お気に入りの曲のお蔵入りは忍びなく、『BIG BOSS BAND』に混ぜ込むカタチで世に出したのではないか。そしてファーノン・セッションをアルバム化するタイミングを見失ったまま、ベンソンはGRPへ移籍してしまった。今回ワーナーに復帰して、最初にコレに手をつけたというコトは、ベンソン自身、きっとこのアルバムのことが心残りだったのだろう。
演っているのは、<At Last><My Romance><Autumn Leaves><Can't We Be Friends><My Prayer>などの定番スタンダードに加え、ビートルズ<Yesterday>、レオン・ラッセル<A Song for You>、ポール・モールアやジェフ・ベックでも知られる<Love Is Blue(恋は水色)>といったポップ・スタンダードなど、全11曲。アーカイヴ音源に手を加える際、ベンソンの参謀役となったのはランディ・ウォルドマン。彼のピアノや鍵盤に加え、曲によってティム・メイやマイケル・オニールのギター、ヴィニー・カリウタのドラムなどが追加されている。バック・コーラスには、クリス・ウォーカー、元チャプター8のリン・フィッドモント、日本ではソロ作でも知られるジェイニー・クルーワーなど。もちろんベンソンは要所要所でギターも手にし、十八番のスキャット・ユニゾンも飛び出す。
音楽業界全体が急速にシュリンクしている中、こんなゴージャスなアルバムを新録することなど、あまり現実的ではない。ベンソンだって既に80歳代だから、寄る年波もあろう。だったら寝ている音源を有効に、というのは当然の流れ。仮にカネと労力を注ぎ込んでも、ファーノンもアル・シュミットも、更にトミー・リピューマも逝ってしまった今、これだけの作品を創れるかどうかは分からない。そう考えれば、70,80,90年代に創られた音楽の価値、そして今の音楽シーン及び業界の停滞が明らかになるというものだ。
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