少し前に輸入盤国内仕様で初CD化(紙ジャケ仕様)されていた、デヴィッド・ポメランツの2nd『TIME TO FLY』をご紹介。オリジナルは米Deccaで71年リリース。日本では『明日への翔き(はばたき)』の邦題で、翌年初頭に発売された模様。手元にあるアナログは帯ナシの国内盤と輸入盤だけれど、当時は結構期待されていたのか、ゲートフォールドの見開きジャケでちょっと豪華。しかも日本盤には艶消しのマットコーティングが為されていて、珍しいA4サイズくらいの解説が、歌詞を掲載してある見開き部分にペラッと貼り付けてある。それこそAOR全盛期にはあり得ないような豪華な作りで、プリAOR感が満載だ。もっともCDはそこまで再現されているワケじゃないが…。
そして作品的にも、多くのAORファンがデヴィッド・ポメランツに抱くであろうイメージとは、ちょっと毛色が違う。多くの人は、田中康夫原作の映画『なんとなく、クリスタル』にも使われた<The Old Song>に代表されるピアノ系バラーディアー、というのが彼の印象だろう。この曲は元々バリー・マニロウに提供されて全米15位。バリーにはそれ以前にも<Tryin' To Get The Feeling Again>を書き、全米トップ10ヒットになっている。他にもデヴィッドは、ベット・ミドラーやカーペンターズ、ケニー・ロジャース、クリフ・リチャード、ホリーズ、ゲイリー・ライト、フィービ・スノウ、グレン・キャンベル、ジョン・デンヴァーらに楽曲提供。自らのソロ活動と並行して、ソングライターとして成功することを目指していた。
元々はニューヨーク生まれ、ロング・アイランド育ち。60年代終盤はオハイオ州シンシナテティで、のちにピュア・プレイリー・リーグを結成する面々とロック・バンドを組んだりしている。その後19歳でソロ契約。ニューヨークのジャズ系ミュージシャンのサポートを受け、71年に初アルバム『NEW BLUES』を発表した。その時のデヴィッドは、ピアノよりもむしろギターを多く弾いている感じで、フォークやジャズの影響が強いシンガー・ソングライターという印象。当時このアルバムは、ポール・サイモンが1曲ギターを弾いていることで注目されたという。
その流れを汲んでいるのが、この2作目『TIME TO FLY』だ。ただし前作の経験から大きな自信をつけたのか、随分とスケールが大きくなり…。プロデュースに、かのチャーリー・カレロ。アレンジもデヴィッドとカレロが共同で当たっている。そして参加ミュージシャンにも、チック・コリア、ヤン・ハマー、ビリー・コブハム、アイアート・モレイラ、ジョー・ファレル、ランディ・ブレッカーといったリターン・トゥ・フォーエヴァーやマハヴィシュヌ・オーケストラ人脈が参加。ギターにはジョン・トロペイとデヴィッド・スピノザ。ベースにエディ・ゴメス等など。オーリアンズ結成前のジョン・ホールの参加が、ちょっと異色に見えるほどジャズ寄りの並びだ。
それでも音を聴くと、それほどジャズ・テイストが濃いワケでもなく…。ピアノのフィーチャー度も前作より高くなり、なるほど、ビリー・ジョエルと比較されるのも納得が行く。しかし商業的成功には至らず、サンフランシスコに拠点を移すことに。すると、ベル・レコードを買い取って、それを母体にアリスタを発足させたクライヴ・デイヴィスに声を掛けられ、これが75年の次作『IT'S IN EVERONE OF US』に繋がっていく。クライヴは当時、バリー・マニロウを筆頭にメリサ・マンチェスターやエリック・カルメンを売り出していたから、デヴィッドを獲得に行ったのも大いに頷けるところ。そしてそこからバリー・マニロウがヒットさせた前述<Tryin' To Get The Feeling>を始め、そこから<It's In Every One Of Us><If You Walked Away>といった名曲が放たれていく。ピアノ・バラーディアー的なイメージが醸し出されてくるのも、その3作目から。だからその辺りを既に押さえている方なら、更にこの2ndアルバムでデヴィッドの足跡を遡ってみる価値はあるだろう。
ちなみにデヴィッドは80年後半から、主にミュージカル方面で多くの実績を上げている。そしてソロ活動では、90年代末〜ゼロ年代初頭に、突然フィリピンでブレイク。99年作 BORN FOR YOU - His Best & More』は、彼の地で60万枚超の大ヒットを記録したそうだ。その後もフィリピン向けにポツポツとアルバムを出し、いくつかは拙監修で日本でもリリース。しかしフィリピンでは大スターだから、「日本でも10万枚は売れるだろう」と思い込んでいて、交渉は難航した苦い思い出が…(自分は直接ネゴしたワケではないが…)。
昨年『YOU'RE THE INSPIRATION』というAOR系カヴァー集をデジタル・リリースしていて、シカゴ、TOTO、リチャード・マークス、エア・サプライやら、ハート、スターシップ、サヴァイヴァーらのヒット曲を歌っている。そこで久々にコンタクトを取ってみたものの、案の定レスはなかった…。
《amazon》
《Tower Recordはココから》
元々はニューヨーク生まれ、ロング・アイランド育ち。60年代終盤はオハイオ州シンシナテティで、のちにピュア・プレイリー・リーグを結成する面々とロック・バンドを組んだりしている。その後19歳でソロ契約。ニューヨークのジャズ系ミュージシャンのサポートを受け、71年に初アルバム『NEW BLUES』を発表した。その時のデヴィッドは、ピアノよりもむしろギターを多く弾いている感じで、フォークやジャズの影響が強いシンガー・ソングライターという印象。当時このアルバムは、ポール・サイモンが1曲ギターを弾いていることで注目されたという。
その流れを汲んでいるのが、この2作目『TIME TO FLY』だ。ただし前作の経験から大きな自信をつけたのか、随分とスケールが大きくなり…。プロデュースに、かのチャーリー・カレロ。アレンジもデヴィッドとカレロが共同で当たっている。そして参加ミュージシャンにも、チック・コリア、ヤン・ハマー、ビリー・コブハム、アイアート・モレイラ、ジョー・ファレル、ランディ・ブレッカーといったリターン・トゥ・フォーエヴァーやマハヴィシュヌ・オーケストラ人脈が参加。ギターにはジョン・トロペイとデヴィッド・スピノザ。ベースにエディ・ゴメス等など。オーリアンズ結成前のジョン・ホールの参加が、ちょっと異色に見えるほどジャズ寄りの並びだ。
それでも音を聴くと、それほどジャズ・テイストが濃いワケでもなく…。ピアノのフィーチャー度も前作より高くなり、なるほど、ビリー・ジョエルと比較されるのも納得が行く。しかし商業的成功には至らず、サンフランシスコに拠点を移すことに。すると、ベル・レコードを買い取って、それを母体にアリスタを発足させたクライヴ・デイヴィスに声を掛けられ、これが75年の次作『IT'S IN EVERONE OF US』に繋がっていく。クライヴは当時、バリー・マニロウを筆頭にメリサ・マンチェスターやエリック・カルメンを売り出していたから、デヴィッドを獲得に行ったのも大いに頷けるところ。そしてそこからバリー・マニロウがヒットさせた前述<Tryin' To Get The Feeling>を始め、そこから<It's In Every One Of Us><If You Walked Away>といった名曲が放たれていく。ピアノ・バラーディアー的なイメージが醸し出されてくるのも、その3作目から。だからその辺りを既に押さえている方なら、更にこの2ndアルバムでデヴィッドの足跡を遡ってみる価値はあるだろう。
ちなみにデヴィッドは80年後半から、主にミュージカル方面で多くの実績を上げている。そしてソロ活動では、90年代末〜ゼロ年代初頭に、突然フィリピンでブレイク。99年作 BORN FOR YOU - His Best & More』は、彼の地で60万枚超の大ヒットを記録したそうだ。その後もフィリピン向けにポツポツとアルバムを出し、いくつかは拙監修で日本でもリリース。しかしフィリピンでは大スターだから、「日本でも10万枚は売れるだろう」と思い込んでいて、交渉は難航した苦い思い出が…(自分は直接ネゴしたワケではないが…)。
昨年『YOU'RE THE INSPIRATION』というAOR系カヴァー集をデジタル・リリースしていて、シカゴ、TOTO、リチャード・マークス、エア・サプライやら、ハート、スターシップ、サヴァイヴァーらのヒット曲を歌っている。そこで久々にコンタクトを取ってみたものの、案の定レスはなかった…。
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