tommy bolin

トミー・ボーリンの75年ソロ・デビュー作『TEASER』が、ボーナス・トラック2曲+ボーナス・ディスク付きの紙ジャケット仕様・高音質盤で復刻。以前のCDは持っているけど、条件反射的に思わずポチってしまった。発売当時の邦題は『炎のギタリスト』。ディープ・パープル加入で一躍脚光を浴びた直後のソロ作で、パープル・ファンにアピールする狙いだったのは明白だ。けれど実際はメチャクチャ多彩でバラエティに富んだ内容。パープルのハード・ロック・イメージで聴くと、かなり戸惑うコトになる。

トミーのパープルでのワン&オンリー作『COME TASTE THE BAND 』(ライヴ盤除く)は、当時はあまり評判が良くなかった。でもパープルの看板を外してしまえば、これまた凄くクオリティの高いアルバム。パープルの金看板を打ち立てたリッチー・ブラックモアの貢献度の高さを充分認めつつも、ギタリストとしてはトミーの方が上だろ、と思っていた。特にビリー・コブハム『SPECTRUM』(73年)なんか聴いた日にゃ…。だけどこのアルバムは、ジェフ・ベックに影響を与えたほどの剛腕ギタリスト、という印象も薄くて。要は、曲が書けてヴォーカルも取れるギタリスト、すなわちりトータル・ミュージシャンとしてのトミーを打ち出したものだった。そこをシッカリ押さえていないと、このアルバムの魅力は見えてこない。まぁ、シンガーとしての実力はボチボチ、という感じだけれど。

またこのアルバムの美味しさは、サポートの布陣にも。基本フォーマットは、トミー以下、キーボード:デヴィッド・フォスター、ドラム:ジェフ・ポーカロ、ベース:スタンリー・シェルドン(ピーター・フランプトン・バンド〜ローニン)で、曲によってデヴィッド・サンボーン (sax)、ナラダ・マイケル・ウォルデン (ds)、何故かフィル・コリンズ (perc) も。ヤン・ハマーが2曲に参加しているが、1曲は鍵盤だけでなくドラムも叩いていたりして。

ハード・ロック寄りのナンバーもあれば、ファンク・ロック、ハード・フュージョン、レゲエもあり。一番驚くのはボサノヴァ風に始まり、サンタナあたりが演りそうなラテン・グルーヴに展開していく<Savannah Woman>だろうか。トミーの “炎のギター” を期待すると若干はぐらかされた感じだけれど、フォスターもジェフも、サンボーンもヤン・ハマーも、それぞれに聴かせて処が用意されている。フォスターのシンセが唸りを上げるインストの<Homeward Strut>とか珍しいし、トミーにヤン、ナラダ、サンボーンが激しくぶつかる<Marching Powder>なんて、『SPECTRUM』の再来かと思っちゃう。

でも『COME TASTE THE BAND 』を聴き込んでコレを聴くと、アチコチに同じようなギター・フレーズ、いわゆる手癖や鳴らし方、エフェクター使いが溢れまくってて、メチャ楽しい。作品的に見れば、遺作になった2nd 『PRIVATE EYES』の方がベターだと思うが、パープル加入直前にレコーディングしただけあって、共通点が多いのだ。<Wild Dog>はパープルの日本公演でも披露されたし。

ボーナス2曲は、タイトル曲とその<Wild Dog>のインスト。ボーナス・ディスクは『TEASER OUTTAKES』と題されたフュージョン系ジャム・セッションが6トラック。25歳で早世したにも関わらずアーカイヴが充実しているトミーなので、すべて既発音源だけど、よほど熱心なファンでないと手を出していないだろうから、こうした抱き合わせはありがたい。

それにしてもトミーが麻薬に溺れず、第4期パープルがもう少し続いていたなら、きっと彼の評価も変わっていただろうに…。







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