naomi chiaki

この6月、デビュー55周年を迎えたちょうどその日に、昭和歌謡の名歌手:ちあきなおみの ほぼ全楽曲300曲以上が、レコード会社3社の連携で一挙にサブスク解禁された。92年から完全引退状態にいるものの、復帰待望説は止まず、最近もまた再評価機運が高まっているようで、名前を聞く機会がずいぶん増えていた。それを受けてのサブスク解禁だ。昨年末に急死した八代亜紀、アレザ・フランクリンを歌い始めた島津亜矢など、最近は演歌のフィールドを飛び出す女性歌手が目立つが、ちあきなおみはその先駆けの一人。若い音楽ファンはコロッケの物真似と、♪いつものように幕が開き〜♪ の<喝采>ぐらいしか知らないと思うけれど…。

でもココに登場するのは、当然それなりの理由がある。それが78年初頭にリリースされたアルバム『あまぐも』。ジャズ好きは、ビル・エヴァンス?と思うだろうが、これはオマージュ。でもベテラン歌手や歌う女優がよくやるスタンダード集ではなく、歴としたオリジナル・アルバムだ。

…とココまで書いて、むかし同じようなコトをキーボードで叩いた記憶が蘇り、アーカイヴを見てみたら、17年前にココで書いてました。そういえば、『Light Mellow 和モノ669』(04年刊)を『Light Mellow 和モノ Special』(13年刊)にヴァージョンアップする時、追加掲載した一枚がコレだった。

当時のポストとダブるのを承知で書くが、アルバムとしてはフォーク・シンガー:河島英五と友川かずきがA / B面を分け合う作品集的体裁で。しかも今じゃ考えられない攻撃的な歌詞がポンポン飛び出してきて、ビックリ。それを彼女の際立った表現力で、ディープかつドラマチックに歌われていく。<普通じゃない>なんて曲は、いきなり “あたしに こどもを うませた人” なんて詞で始まるのだから、それこそ普通じゃない

でもこのアルバムを レア・グルーヴとして聴くと、めっぽう面白いんだな。当時のシングル曲で、紅白歌合戦で歌って鬼気迫るパフォーマンスを披露したという<夜へ急ぐ人>も、シングル・ヴァージョンじゃなく、このアルバム・ヴァージョンを聴かないと、メロウ・グルーヴ的には意味がない。

そのココロは、アルバムではバックを丸ごとゴダイゴが務めていて、アレンジをミッキー吉野と、ゴダイゴ・ホーンズを仕切っていた岸本博が担当しているから。とりわけ<想影><普通じゃない><男と女の狂騒曲>、そして<夜へ急ぐ人>と、岸本アレンジ楽曲のノリが凄まじい。なおみサンのヴォーカルの情念の深さは、喩えれば、和製ローラ・ニーロとでも言うべきか。

ま、ひとまずコレのヴァージョン違いっぷりを体験してみて。





《amazon》
あまぐも
ちあきなおみ
日本コロムビア
2000-10-21

《Tower Records はココから》