david gilmour 024

ピンク・フロイドのギタリスト、デヴィッド・ギルモアの、9年ぶり5枚めのソロ・アルバム。出る度にメディアの盛り上げ方がスゴイので、いつもどうも期待ばかりが膨らみすぎてしまうが、今回はギルモア自身が “『狂気』以来50年ぶりの傑作” と言い放ったとか。イヤイヤ、ココは冷静に参りましょう。誇大表現を鵜呑みにして聴いてガッカリするより、適格な位置付けの中で魅力を説いた方が、チャンと聴いてもらえる、と自分は思うんだけどな。

そういう意味で、自分にとってのギルモア・ソロは、1作目『DAVID GILMOUR』(78年)を越えるモノは今までになく…。そりゃあフロイドに代わってアルバム毎にドンドン壮大に、スケールが大きくなっていく感はある。一方でドラスティックな進化はなく、“フロイドのギルモア” を覆す斬新さはない。ここぞという場面で、あのクリアーなギター・ソロが登場し、美味しいトコロを持っていく、そのカタチは変わらないのだ。ならばむしろフロイド・サウンドからギルモアだけ抜き出したネイキッドな1作目に、えも言われぬ愛着を覚えてしまうのだな。

この『LUCK AND STRANGE(邂逅)』も、78歳にしてこの出来栄えなら大したモノだ。でもやっぱりフロイドの延長で、これはもう “一人フロイド” と言ってしまってイイんじゃないかな。実際のところは、タイトル曲に07年に録音された音源が使われ、故リチャード・ライトのキーボードも聴ける。ギター・ソロの展開は、『ANIMALS』っぽいかな。でもそれ以上にフロイドを感じさせるのは、アルバム一番の長尺曲<Scattered>(7分半)。かの<Echoes>風のエレキ・ピアノが登場したり、後半のジワジワ盛り上げるオーケストレーションが<Comfortably Numb>っぽかったり。

参加メンバーを見ても、前作『RATTLE THAT LOCK(飛翔)』に参加していたロジャー・イーノ(kyd / ブライアン・イーノの弟)や、フロイド・ファミリーのガイ・プラット(b)など。スティーヴ・ガッドが半分以上の曲に参加しているのが意外だが、エリック・クラプトンの時と同じで、いぶし銀の枯れたドラムで。フロイド『THE DIVISION BELL(対)』以降30年に渡って曲作りのパートナーになっている奥方ポリー・サムソンが作詞で全面参加するのは当然ながら、今作では娘ロマニーがヴォーカルとやハープ、息子ガブリエルがバック・ヴォーカル、もう一人の息子チャーリーも作詞で、父デヴィッドに寄り添う。こうしたテンションの高い音楽に、このファミリー・ビジネス感はそぐわない気がするが、コロナ禍があり、死生観をコンセプトにした作品でもあり、そこはピンク・フロイドという看板に縛られず、新しい空気を取り込もうとしたかのよう。そういえば、 ロマニーが無垢な声でリード・ヴォーカルを取<Between Two Points>は、 インディ・バンドのザ・モンゴルフィエ・ブラザーズが99年にリリースした曲だそうだ。

ボーナス・トラックが2曲、日本盤のみ更にもう1曲が追加されているのも、かなり異例だ。フロイドのファン以外にはオススメしないけど、このあたりにには無条件に血がたぎってしまう自分です。そうそう、ジョン・アンダーソンのソロも期待できそうだな…







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