session man

昨日は尾崎亜美さんのライヴへ行く前に、この映画を観に池袋に立ち寄った。『セッションマン〜ニッキー・ホプキンス ローリング・ストーンズに愛された男』。60〜70年代の英国ロック・シーンで活躍したセッション・ピアニストで、ストーンズを始め、ビートルズ、ザ・フー、キンクスという60年代の4大ビート・グループから重用された人物だ。当ブログの読者でも、「知らない」「名前だけなら…」という程度の知名度だが、この曲あの曲、60〜70年代の洋楽好きなら、必ずやそのピアノ・プレイを耳にしている、そういう人物である。

自分史で言えば、ビートルズの赤盤・青盤あたりで洋楽に目覚めて間もない頃、初めて意識したニッキー・ホプキンスのプレイが、ローリング・ストーンズ<Angie>で。あのリリカルなピアノに惹かれたワケだが、ストーンズのメンバーではない人が弾いていると知り、ニッキーのようなセッションマンの存在を知った。そうしたら、ビートルズ<Revolution>のピアノも同じ人だと分かり、ジョン・レインやジョージ・ハリスン、リンゴ・スターのソロ作でも大活躍していると…。ストーンズでは<悪魔を憐れむ歌>や<She's A Rainbow>、ジョー・コッカー<You Are So Beautiful>なども、すぐに思い浮かぶニッキーの名演だ。

他にも、加入した初期ジェフ・ベック・グループと一緒にウッドストックに出る予定が、ジェフの変節で急遽解散。しかしニッキーはサンフランシスコに残ってジェファーソン・エアプレイのサポートでステージに立ったりとか、あるいはジョン・マークとスウィート・サーズデイを組んだりとか。スティーヴ・ミラー・バンドやクイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス、ニルソン、アート・ガーファンクルなどとも共演している。

それだけ幅広く活躍したのは、ロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックでピアノと音楽理論を学んだクラシック・ピアノの使い手でありながら、ロックン・ロールが大好きだったから。卒業後は当時のロンドンで隆盛を誇ったR&Bバンドで活動。ミック・ジャガーやキース・リチャーズは、その頃からニッキーの演奏に注目していた。ところがニッキーは63年に腸疾患の難病クローン病を発症。闘病しながらの活動を強いられ、過酷なツアーに出ることができなかった。でもそれが彼のセッションマンとしての名声に繋がるのだから、皮肉なモノである。

この映画は、そのニッキーの30年に及ぶロック人生を追い(94年没)、彼が如何に最高のセッション・マンだったかを仲間たちが語り継いでいくドキュメンタリー。映像資料が極めて少ないのだろう、映画はほとんど友人たちのインタビュー・ショットで占められ、半ば淡々と進んでいく。でもそこに知られれざる素顔が浮かびあがったり、新たな発見があったりと、音楽知識を深める価値は大きい。それこそニッキーに興味がある人なら必見。必ずや、心が疼く瞬間があるに違いない。個人的には、イアン・スチュアートやビリー・プレストンが張り付いていたストーンズで、ニッキーの占める存在、存在感や立ち位置が手に取るように分かった。

故に今日は、ニッキーの73年ソロ代表作『夢見る人(THE TIN MAN WAS A DREAMER)』。そういえば75年の3rd ソロ『NO MORE CHANGES』は、大手マーキュリー(現ユニバーサル)から出ているのに、未だCD化されず。自分のかつて再発企画のリクエストを出したことがあるけど、果たしてどうなっているんだか…。

映画『セッションマン 〜』オフィシャルサイトはこちらから。

Tin Man Was a Dreamer
Nicky Hopkins
Sbme Import
2011-09-20