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2週間で9本という個人的ライヴ・ウィークのハイライト、Blue Note Jazz Festival in Japan @有明アリーナ Day2 に足を運んだ。前回のBlue Note Jazz Festival は第2回に当たる2016年、横浜赤レンガ倉庫の野外特設ステージでアース・ウインド&ファイアー、ジョージ・ベンソンらが出演した。その後ドナルド・フェイゲンをメイン・ゲストに開催が発表されたが、ラインアップも大して公表されないうちに敢えなく中止。原因は相方ウォルター・ベッカーの急死でフェイゲンが出演をキャンセルしたことと言われるが、正確なところは発表されていない。今回の開催はそれ以来で、2daysでの開催は今回が初めてなのかな? 自分的には3度目ながら、今回はオフィシャル・サイトにシカゴの紹介原稿を書いた関係で、ラッキーにも2日目にインヴィテーションを頂いた。用意されたシートは3階後方で、ステージからの距離は遠いものの、新しいアリーナだけに意外と見やすい。ザッと見たところ、2階席までイッパイ。3階は正面のみ8割がた埋まっていたな。

【Candy Dulfer】
13:00定刻通りにライト・ダウンすると、まずはキャンディ・ダルファーのステージから。ホーン・セクションと男性シンガー各2人を含む総勢9人の華やかなパフォーマンスで、オープニングに相応しいノリ。MCでは「コンバンワ!じゃない、今日はコンニチワね、それともオハヨウかしら?」と言い直す場面もあったが、美形はサックス片手にステップ踏んでいるだけで、充分すぎるほどサマになる。ギタリストがロック色濃いめの良いギター・ソロを弾いていたのも印象的で。最後に出世曲であるアヴェレージ・ホワイト・バンドのカヴァー<Pick Up The Pieces>をカマして、ド派手に幕。

【Snarky Puppy】
ちょうど2015年の第1回Blue Note Jazz fes以来のスナーキー・パピー。でもご存知のように、彼らは20人超のメンバーがいて、その時どきで中核マイケル・リーグ(b)以外のミュージシャンを入れ替えながら、変幻自在なサウンドを聴かせてきた。今回のポイントは、ビヨンセのアマゾネス・バンドにいたニッキ・グラスピー(ds)の初参加。またヴァイオリン奏者ザック・ブロックの参加もユニークで、何処かマハヴィシュヌ・オーケストラを髣髴させる展開が面白かった。

【Nile Rodgers & Chic】
登場するなり、ナイルがコロガシ(足元のモニター・スピーカー)か何かに蹴つまずいたようで、派手に転倒し、ギターにトラブル。音が出ない。すぐに復活したものの、ずーっとギターの音が小さくて、他の楽器に埋もれてしまう。ギター・カッティング命のシック楽曲で、これは致命的。ヒット曲満載、例によってダイアナ・ロス、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ダフト・パンクなどのプロデュース曲・参加曲などもサーヴィスしてくれたので、オーディエンスには大ウケだった。けれど自分的には、井戸の底で鳴っているようなギターが気になって、まったく楽しめない。みんなギターなんて聴いていないのかな? ジェリー・バーンズ (b)、ラルフ・ロール (ds) のリズム隊は安定していて危なげナシ。キンバリー・デイヴィスのヴォーカルも強力だった。そして最後にビッグ・サプライズ。<Good Times>でマーカス・ミラーが飛び入りし、ジェリー・バーンズと並んでスラップ弾き倒し。ナイルとマーカス、世代は少し違うが、拠点は同じニューヨーク。同じセッションで一緒になる機会はなくても、ルーサー・ヴァンドロスやフォンジ・ソーントンを通じてかなり近いところにいたワケで、きっとスタジオではチョクチョク顔を合わせていたのだろう。こういうフェスならではのハプニングがあって、終わり良ければすべてヨシ、のエンディング。

【Marcus Miller】
ドラム、キーボード、サックスにトランペットという4人編成のバンドを率いてのステージ。近年のマーカスのライヴ・パフォーマンスは、マイルス・デイヴィス『TUTU』の影を踏んでいるような印象があるけれど、それは今回も同様。でもビリー・コブハムのカヴァー<Red Baron>に加え、ジャコに捧げた<Mr.Pastrious>、5月に亡くなったデヴィッド・サンボーンを偲ぶ<Maputo>に<Run For Cover>と、まるでトリビュート・ライヴのような趣きで。ちょっと耽美的なトコロもあったけれど、何とも深い世界観が繰り広げられて感銘を受けた。プレイヤーとしてのマーカスには、どうしてもしなやかなスラップを求めがちだけれど、ココにいたマーカスは、もやはプロデューサー/ミュージシャンとしての彼だと思う。

【Chicago】
スクリーンにアルバム・ジャケットが新しい順に映し出され、それがそのままオープニングへのカウントダウンになっている粋な演出からスタート。これで掴みはOKだ。前回の来日(2016年)を見ていないため、自分にとっては実に約12年ぶりの生シカゴ。…とはいえ、往年のヒット曲をバランスよく聴かせるショウなので、半ばメンバーの生存確認と、ちょっと変わった曲を演ってくれるかな?というのが主目的。特に間もなく80歳になるロバート・ラムが、体調不良で直前のUSツアーで一部穴を空けたらしいので、一抹の不安があった。歴代最多の10人編成といえども、オリジナル・メンバーはたった3人。ラムかジェイムス・パンコウが欠けたら、おそらくシカゴも活動停止せざるを得ないだろう。実際ラムはステージに立って歌ったものの、キーボードを弾く場面はいつもの半分ほど。ショルダー・キーボードやギターを持ってマイクの前に立つことはなく、マイク・スタンドの前で歌だけ歌って、トラのキーボードに演奏を任せていた。よって今回のシカゴは実質11人編成。今後のラムの動向はちょっと心配だ。

でもそれ以外は現状維持。フェス仕様のショート・セットなのに長尺のドラム&パーカッション・ソロ・パートが用意されていたのが新しかったが、これはバンド内にラテン/ヒスパニック系人口が増えたせいだろう。少し前にライヴ音源が出たように、最近は『CHICAGO II』を重点的にセットに組み入れていて、AOR期の楽曲は<Hard Habit To Break><You're The Inspiration><Hard To Say I'm Sorry / Get Away>程度。そこで活躍したのが、新シンガーのニール・ドネルだ。見た目オッサンでスター性はないし、歌声のセンも細いが、キレイなハイトーンが出るのが強み。ジェイソン・シェフやビル・チャンプリン不在で小振りになった感は否めないが、何せ結成57年。新メンバーのギターも、ちょっとテリー・キャスを意識した感じだったし、伝統はシッカリ守られているな、と感じた。個人的には<Old Days>を演ってくれたのが嬉しかった。唯一アンコールが許されたのもヘッドライナーのシカゴだけで、歌うは当然<長い夜(25 Or 6 To 4)>。

終わってみれば、8時間の長丁場。皆さんどうもご苦労様でした! 首都圏近郊でのフェスなら、まだなんとか頑張れます。


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※写真はオフィシャルより転載